生き残るために必要なスキルとは?(写真:viafilms / iStock)

人工知能(AI)やオートメーションの出現により、継続的に学習し、高度なスキルを持った労働力の需要が高まっています。こうしたハイテクツールには広範な能力があるとはいえ、これを効果的に使いこなすにはそれなりのスキルが求められます。しかし、ほとんどの社員はそれに必要な知識がありません。

デロイト・インサイツの最新レポートによれば、現在、全米で600万件を超える求人数に対して、大卒者の数が足りなくなる可能性があり、企業の52%は経常的に欠員が生じている状況にあると言われています。このようにスキル不足はすでに現実問題となっており、そのギャップは広がる一方です。

生涯を通じて学ぶ努力が求められている

組織においては、飲み込みが早く、新たなテクノロジーを受け入れられる人材の必要性がますます高まります。今日、個人それぞれが自身のスキルをシェアすることによって企業や経済の成長を図る「スキルエコノミー」においては、社員はすでに持っている知識に加え、新たなスキルを習得する能力が重要になります。実際には、生涯を通じて技術、社会、経営に関する新たなスキルを学ぶ努力を続けることが求められています。

テクノロジーの発展によって急速なペースで仕事環境が変わる中、米国の未来研究所はコーナーストーンオンデマンドと協力し、現代の労働者が成功を手にするのに必要な能力にスポットを当てた「未来スキルマップ(Future Skills Map)」をまとめました。このマップに挙げられた15のスキルのうち、ここでは今すぐにでも取り組める5つのスキルを取り上げ、こうしたスキルを社員に習得させる上でのヒントを加えてみました。

1. スキルアップに取り組む社員を生かす

社員がキャリアを確実に伸ばしていくためには、すでに習得しているスキルだけに頼っていてはいけません。生涯学び続ける人は成長の歩みを止めることなく、新しいスキルを得るたびに “単位”を取り、それを使ってキャリアパスを進めていきます。

上司は、自らの業務に関連した分野のコースを学び続けて資格を取得したり、さまざまな形で学習に取り組んできた社員を見つけ、彼らを生かすことができます。社内に欠員が生じた際、外部に目を向ける前に、新しいスキルの習得に積極的に取り組んできた社員を候補者として検討することも可能です。同僚が成長する姿を目にすることは、それまで現状に甘んじてきたほかの社員のモチベーションアップにつながります。

2. デジタル能力を向上させる

しばらくは、ロボットが人に置き換わることはなさそうですが、オートメーションが社員の職務を変えようとしていることは否定できません。米国企業は2020年までに人工知能に1500億ドル、ロボット関連分野に830億ドル、AI対応システムに700億ドルを費やそうとしていますが、人間は生涯学び続ける限り、これを恐れることはありません。生涯学習に取り組む人にとっては、こうした発展は自分のスキルを磨くチャンスとなるのです。

上司は、AIがどれほど自分たちの助けになるのかを示すことで、部下にオートメーションに注意を向けさせ、テクノロジーがいかに自分たちの仕事の手間を省いてくれるのかに目を向けさせるべきです。たとえばヘルスケア業界では、保険の契約内容をデジタルで照合するなど、AIの果たす役割は次第に広がっています。AIによって電話での問い合わせ対応の時間が減り、社員はオフィスに導入する新たなテクノロジーの価格交渉など、より重要なプロジェクトに時間を割けるようになっているのです。

会社の「全体像」を見えるようにする

3. 点と点を結んで全体像を把握させる

モビリティやコネクティビティの向上により、現代の社員は場所を選ばずに働けるようになりました。一方これによって、すべての社員の仕事やプロジェクトの実態をしっかりと把握することは難しくなりました。

しかし、生涯にわたって学習を続ける人はつねに、同僚が何に取り組んでいるのかを理解しようとします。それが組織における目標の全体像を把握し、不足していると考えられる部分を補っていく、唯一の方法だからです。

社員、特にリーダーたちには、自分のチーム、さらには他部門・部署など会社全体の中で、自分やチームがどのような役割を果たしているのかを、把握できるようにしなければなりません。そのためには新たなテクノロジーの導入が必要になるかもしれません。

住宅の水回り製品のメーカー、コーラーでは、点と点をつないで社員が全体像をつかめるように、全ビジネスユニットを通じて新たな人材管理システムを導入しました。これにより、リーダーは社員それぞれの役割やスキル、チーム構成についてより深い知見を得られるようになったと言います。

4. 多文化への対応力を高める

職場におけるダイバーシティという言葉には、性別や人種、宗教の多様性に留まらず、それぞれが持つユニークな経験や、それによってどのように個性が作られ、仕事上でどのように関わり合いを持つのかといった意味まで含まれるようになってきました。

こうした中、つねにスキルの取得に取り組んでいる人は、それまで経験したことのない状況や、多様な人たちと仕事をすることを恐れず、状況に応じて素早く的確に考え方を切り替え、環境に合ったアプローチを取ることができるという能力を有しています。

こうしたスキルは簡単には身に付きません。多文化にうまく対応できるようにするには、社員に新しい環境を与えてみることです。世界各国にオフィスがある企業なら、社員にいろいろなオフィスに行かせ、日ごろ接したことのない同僚とのコミュニケーションの機会を与えてみましょう。

共感力は継続的に磨くべき

5. 思いやりや配慮の気持ちを大切にする

オートメーションやAIの時代になっても欠かせないのが人間性です。結局のところ、機械のプログラムを組むのも、そこで収集された情報や分析をどのように業務に生かすのかを決めるのも人間だからです。生涯学習を続ける人には、生来、共感力が備わっています。対応力こそ成長のカギだからです。それ以外の人にとっては、共感力は学習によって習得するべきスキルです。

共感力は、あらゆる組織で継続的に磨くべきスキルです。オープンで互いを尊重した会話を通じてさまざまな偏見や意見の違いに対処することから始めるのも1つの方法です。自己発見トレーニングプログラムは自分がどんなパーソナリティを持つのかを見定め、他人を理解しようと努める前に、心理学の助けを借りて自分自身のことをもっと良く知ることに役立つものです。

生涯学習に取り組む人を称え、社員に高い志を持たせるような文化は、組織のトップが最優先に取り組んでこそ機能します。学習戦略を構築するにあたり、消費者がお気に入りのブランドに対して期待感を抱くように、社員もまた自分を雇用する会社に大いに期待していることを肝に銘じておくべきです。今、社員が切望しているのは、必要に応じて統合的な学習体験が個人のニーズに合わせて提供されることであり、組織にはそれを提供する責任があるのです。