日本でも動画コマースが本格化してきた。

東洋経済オンラインは3月15日、メディア戦略セミナー「『動画』こそがメディアの未来だ」を開催。そのなかの「『1分間動画』はどこまで伸びるのか?」と題されたセッションでは、エブリーの吉田大成氏、C CHANNEL(シーチャンネル)の森川亮氏、UUUM(ウーム)の鎌田和樹氏が登壇し、それぞれのコマースビジネスについても話が及んだ。

奇しくも吉田氏のエブリーは3月12日、大手通信会社KDDIとの約30億円にのぼる資本提携を発表したばかり。プレスリリースのなかで同社は、KDDIが保有するユーザー基盤を生かし、ライブコマース事業を本格的に展開していくと説明していた。それに対して、吉田氏は東洋経済のセミナーで、「動画でしっかり魅力付けができていれば、購買意欲を掻き立てられることがわかり、可能性を感じた」と語る。ちなみに、同社は昨年から試験的にライブコマース事業をスタートしていたという。

分散型メディア、インフルエンサー、マルチチャンネルネットワーク(MCN)、それぞれのアプローチは異なるが、エブリー同様にUUUMやC CHANNELでもコマースに関するチャレンジが開始されている。いずれも動画メディアで広告が収益の中心であり、コマース単体で事業を成すまでには至っていないようだが、それぞれ芽が出てきている様子が感じられた。

「実際に結構売れている」



「これまで少しずつ動画コマースを進めてきたが、実際に結構売れている」と、エブリーの吉田氏は、東洋経済のセミナーで語る。「ユーザーの心理として、動画を見てその商品がいいと思ったら、やっぱり最後は手に取りたいのだと思う」。

だが、吉田氏は「我々の力だけでは(動画コマース事業の)成長スピードに限界を感じていた」と、KDDIとの資本提携の背景について説明する。エブリーはベンチャーのため、単体で商品調達や物流などのシステムを一から構築していくには、コストと手間がかかりすぎるのだ。そこで今回の提携により、KDDIの持つユーザー基盤を活用するほか、KDDIが運営するECサービス「Wowma!(ワウマ)」や「au WALLET Market」と連携し、商品調達から配送までを一気通貫で取り組んでいくという。

「今年の7月には、ライブコマースのプラットフォームを立ち上げる予定で、これは24時間配信できるようなプラットフォームを目指している」と、吉田氏は続ける。同氏の構想では、自社コンテンツの配信だけでなく、さまざまな企業に配信枠を持ってもらい、販売をサポートするようだ。

「そこにしかない商品を」



C CHANNELの森川氏も企業とのコラボに着目している。「動画コマースはブランド認知の向上だけでなく、最終的な購買に繋げることができるのがポイント」。

同社は3社のなかでもいち早くから動画コマースをスタート。2016年の12月から、アプリやSNSを活用して、集客を行い、商品を販売したほか、企業やインフルエンサーと新規ブランドの立ち上げや、オンラインセレクトショップの立ち上げなども実施してきた。その結果、同社のコマース事業の売上は、当初の10倍まで伸びたという。しかし、動画コマースをスタートしたばかりのころには、課題もあった。

「ユーザーがC CHANNELで動画を閲覧したあとに、自分で検索して一番価格の安いものを購入してしまう、という状況が続いていた。無料で商品の宣伝をして、他社で商品を買われてしまっていた」と、森川氏は振り返る。「そこで、大手ブランドとのコラボ製品を企画し、『C CHANNELにしかない商品』を販売することにした」。

実際、C CHANNELが扱う化粧品やコスメに関しては、国内市場はターゲットの年齢が上がっており、このままでは顧客がいなくなってしまうという状況がある。そのため、「多くのブランド企業から、『若い人向けにどのようにリーチさせたらいいのか?』という相談を受けることが多い」と、森川氏は語った。

2017年10月に開始された、C CHANNELと資生堂との共同企画も、その文脈にあったようだ。そういった声に対して、同社は広告やブランディングのサポートだけでなく、商品の企画や制作をより一層強化していくという。「動画コマースにおいては、見栄えをよくすることはもちろんだが、そこにしかない商品を持つことが何よりも重要だ」。

「まだ試行錯誤の段階」



これに対し、「現状ではもともと他社のプラットフォームを自分たちに置き換えたというだけで、まだ試行錯誤している段階だ」と語るのは、はじめしゃちょーやヒカキンなどユーチューバーのマネジメントを手がけるUUUMの鎌田氏だ。同社は、2017年12月に通販サイトMUUU(ムー・ドットコム)をスタートし、動画コマース事業に参入した。

MUUUでは、所属しているユーチューバーが手がける限定グッズや、独自ブランドの商品を販売。サイト開設直後から商品の完売が続くなど、好評を得ているように見える。だが、鎌田氏の見解は慎重だ。

「そもそも、まだ動画ビジネスがうまくいくかわからないという現状がある。動画コマースもその試行錯誤のひとつでしかなく、(動画ビジネスの)すべてではない」と、鎌田氏は釘を刺す。「国内の動画コマース市場が目指すべきところは、我々も含め、これから各社がどれだけ踏み込めるかで決まってくるだろう」。

市場が目指すべきところ



昨今ではコマースサイドからも、動画へのアプローチが目立つ。2017年7月にはメルカリがライブコマースサービス「メルカリチャンネル」を発表、次いで同年11月には、ヤフーも「Yahoo!ショッピング LIVE」をローンチした。

だが、いずれもまだ、明確な「成功事例」と呼べるものにはなっていない。しかし、2018年には、これらのなかから、次の時代の指標となるような取り組みが生まれてきそうだ。

※DIGIDAY[日本版]は、東洋経済オンラインメディア戦略セミナー「『動画』こそがメディアの未来だ」のメディアパートナーです。

Written by 村上 莞
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