中国・北京の道路(資料写真)


 今や世界最大の自動車市場となった中国ですが、2017年の販売台数は前年比3%増の2877万9000台にとどまりました。伸び幅は2016年と比べて10.6ポイント減少しており、市場の成長は鈍化しています。

 一方、自動車市場全体が伸び悩んだのを尻目に、高級車の販売は前年比17.9%増の245万台を記録し、依然として高い成長率を維持しています。

 中国の高級車市場では、これまで長年にわたって独フォルクスワーゲン傘下のアウディが首位の座を維持し続けてきました。しかしアウディが中国事業を再編したことが影響し、独BMW、独メルセデス・ベンツ(以下、「ベンツ」)を加えた高級車ブランド「トップ3」の首位争いが熾烈さを増してきました。日本車ではトヨタ自動車のレクサスが躍進を続けています。

 今回は、そうした中国の高級車市場の現状について解説しましょう。

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販売台数で上位3ブランドが拮抗

 下の表は2017年度における中国市場のブランド別高級車販売台数をまとめたものです。

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52666)

 2017年は、ベンツが唯一の60万台越えで首位となっています。一方、中国市場において長年圧倒的な人気を誇り首位の座を維持してきたアウディは2位に陥落し、アウディに続く形でBMWが3位となっています。

 ただし、この統計データでは、ベンツには「smart」、BMWには「MINI」といったそれぞれの系列ブランド販売台数も加えられている点に注意する必要があります。もしベンツからsmartの販売台数を除くと、順位は変動します。実際には上位3ブランドの中で一体どこが首位なのか断定しにくく、ひとまず「非常に拮抗している」ということをご理解ください。

 このように激しい鍔迫り合いを見せる上位3ブランドに対し、4位以下のブランドは販売台数が40万台以上も大きく離されており、実質的に中国の高級車市場はほぼ上位3ブランドで構成されていると言っても過言ではありません。

シェアを大きく落としたアウディ

 上位の3ブランドは、販売台数でこそ拮抗していますが、前年比の伸び幅に関しては明確な差が出ています。ベンツとBMWが2桁成長を遂げたのに対し、アウディは1.1%と微増にとどまり、市場シェアも大きく落としているのです。

 下の表をご覧ください。直近に当たる2018年2月単月の販売台数においても、アウディは伸び幅でこそ上回っていますが、販売台数ではBMW、ベンツの後塵を拝する結果となりました。

 前述したように、これまでアウディは中国高級車市場で圧倒的な人気と首位の座を維持してきました。ところが、昨年以降からライバルの2ブランドから猛追を受けており、以前のような絶対的地位はもはや過去のものとなりつつあります。

低下した「憧れの車」のイメージ

 中国の高級車市場は、1位アウディ、2位BMW、3位ベンツという順位がほぼ不動だったことから、それぞれの頭文字を取って「ABB市場」と言われていました。

 特にアウディは早期から中国市場に進出し、まだ国全体が貧しかった頃には政府関係者しか乗ることのできない車であったことから“憧れの車”とされてきました。

 しかし、飛躍的な経済成長を遂げた今、中国人の間で「成功したら、いつかはアウディ」という意識は薄れつつあります。また、中国政府が贅沢禁止令を出したことによって公用車の購入が減少したことも響いています。アウディはこれまで官公庁からの人気が高かったことが仇となり、最も煽りを受けたとも指摘されています。

アウディのディーラーが猛反発した理由

 ただ、アウディが低迷する原因となったのは、こうした外部要因よりも内部要因が大きいという声があります。それは、中国事業の再編計画です。

 アウディの親会社であるフォルクスワーゲンは、これまでアウディブランド車の販売を中国に2社ある合弁先のうち中国第一汽車集団(以下「一汽集団」)と共同で行ってきました。しかし2016年11月、フォルクスワーゲンは突如もう1つの合弁先である上海汽車集団(以下「上海汽車」)ともアウディブランド車の販売を行うという計画を打ち出しました。

 この計画は中国市場でのさらなる販売拡大を目指したものでしたが、一汽集団側、特にその傘下ディーラーから猛反発を受けることとなります。ディーラーのモチベーションは大きく低下し、販売台数にも影響を及ぼしたことから、フォルクスワーゲンは上海汽車とのアウディ販売計画を一旦棚上げせざるを得ませんでした(参考「アウディ、中国で高級車市場の首位陥落 1〜6月」日本経済新聞)。

 2018年3月、フォルクスワーゲンは一汽集団との提携を深めるため、新たな販売会社を共同で設立する覚書を交わしました。一方で、上海汽車との提携拡大も計画進行中であると述べています。そのため、一汽集団との新たな販売会社設立は、一汽集団側の反発を和らげるための対策の1つとみられています。

レクサスの人気が上昇中

 中国高級車市場では上位3ブランドを「第1陣営」と呼び、それ以下の主要ブランドを「第2陣営」と呼んでいます。第2陣営で2017年に躍進を遂げたのは、ゼネラルモーターズのキャデラックです。前年比51%増と大幅な成長を遂げて、第2陣営トップの座を勝ち取りました(2018年2月はなんと前年比86.5%増の販売台数です)。

 キャデラックが躍進した背景としては、個性的なデザインが比較的若い消費者の需要傾向にマッチしたことと、加速性能を前面に打ち出したマーケティングが功を奏したと分析されています。

 また、第2陣営の中で日本車として最も売れているのがトヨタのレクサスです。2017年の販売台数は約13.3万台で、前年比22%増と高い伸びを見せました。トヨタは中国国内ではレクサスを生産しておらず、輸入車のみを販売しています。それにもかかわらず、この台数と成長率を記録したというのは見事というより他ありません。

 レクサスはなぜこれほど中国市場で躍進しているのでしょうか。中国の自動車業界関係者に尋ねたところ、「中国のユーザーがレクサスの品質とコストパフォーマンスの高さに気付いたことが最大の原因だろう」と指摘しました。「これまで中国のユーザーは見栄えやブランドイメージだけで高級車を選ぶ人間が多かったが、近年は自動車についての知識が増え自動車の性能や価格を比較分析するようになった。その結果、レクサスを選ぶ人が増えている」のだそうです。

 日産自動車のインフィニティは、レクサスに対抗するべく2014年より中国で現地生産を開始しましたが、レクサスとの差は広げられる一方です。ドイツのトップ3ブランドに抵抗するのが並大抵ではないことを考慮すると、インフィニティは高級感よりも、もっとスポーティなイメージを前面に出したほうがいいのではないかと個人的には思います。

筆者:花園 祐