セブン-イレブンJS美住一番街店

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 少子高齢化が進行する日本。特に、郊外の団地では高齢者の住民が多く、日々の買い物に悩むケースも少なくないという。そんななかで、コンビニエンスストア大手のセブン-イレブンが団地の“救済”に乗り出している。

 都市再生機構(UR)と提携し、東京都東村山市のUR賃貸住宅「グリーンタウン美住一番街」内に試行店「セブン-イレブンJS美住一番街店」を開店したのだ。同店は団地の高齢者などに向けて食事宅配を提供するほか、身の回りの悩みを解決するサービスや、住民を店員として雇用することも行っており、まさに“団地特化型コンビニ”といえる。また、団地管理業務の一部も代行するなど、住民の生活インフラとして機能する。

 URは、セブン-イレブン・ジャパンのほかに、ファミリーマート、ローソン、ミニストップのコンビニ大手4社と団地の利便性向上・活性化推進に向けて連携しており、URウェルフェア総合戦略部企画課の諸隈慎一課長は「今後、団地内にコンビニ100店の展開を目指す」と語る。

 到来する超高齢社会に向けて、団地とコンビニはどのように共存を図るのか。諸隈氏に話を聞いた。

●住民の高齢化で“買い物難民”も

――コンビニ大手4社との提携およびセブンの試行店について、どのような狙いがありますか。

諸隈慎一氏(以下、諸隈) コンビニ各社と提携させていただいたのは、お住まいの方々の利便性の向上や、団地や周辺地域の活性化を目指しているからです。

 実は、提携以前からコンビニ各社には団地内に出店していただいています。団地管理サービス事務所の機能の一部を兼ねることなどにより、「団地の居住者の方々にとって、より便利にしたい」ということをきっかけに、コンビニ各社と意見交換を行い、2016年にセブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソン、2017年にミニストップと、計4社と連携協定を締結しました。

 今後は、URとコンビニ各社との連携・協力内容の具体化を進め、 100カ所程度の団地へのコンビニ出店を進めたいと思います。どうすれば団地や周辺地域の利便性が向上し、地域コミュニティの役に立つか。そういった視点を踏まえて、試行店となる「セブン-イレブンJS美住一番街店」が17年4月に東京都東村山市の「グリーンタウン美住一番街」内に開業しました。今後、こういった展開を広げていきたいです。

――最近、団地では“買い物難民”が問題になっているといいます。この取り組みは、そうした問題の解消にも役立つのではないでしょうか。

諸隈 もともと、大きな団地はお店が展開される施設が建設されています。ただ、居住者が高齢化したりお店の代替わりがうまくいかなかったりして閉店するケースが増えることで、団地内のお店の様子はさびしくなります。その意味では、団地によっては「買い物難民が生まれている」と見られているのかもしれません。

 URとしても出店していただけるように努力をしており、その一環としてコンビニにも出店を要請しています。100店の展開を目指すため、「ここならうまく営業ができる」というマッチングの工夫をしたいと思います。

――かつて、高度経済成長による住宅不足を解消するために、URの前身である日本住宅公団が誕生しました。当時建設された団地に入居した方が、今は高齢化しているのでしょうか。

諸隈 団地によってはそういうこともありますが、お住まいの方の流動性にもよりますので、一様に高齢化が進行しているというわけではありません。しかし、居住者の世代がある程度偏っている場合、団地によっては高齢化が目立ちます。それは、東京23区内も例外ではありません。

●事前調査で高齢者向け商品を充実

――コンビニ4社の反応などはいかがでしょうか。

諸隈 試行店を展開しているセブン-イレブン・ジャパンさんをはじめ、各社と打ち合わせを行っている段階です。試行店では、出店前に居住者にアンケートを行い、その結果を品揃えに反映させたところ、居住者や周辺住民の方々から好評を博しました。

 アンケートなどで要望をうかがったことが売り上げにつながっていることから、当初は「ここでは売り上げ的に難しいな」と考えられていた場所であっても、たとえばアンケートを実施することで「品揃えを充実させればいけるかもしれない」という意識に変わられるかもしれません。

――そのアンケートを行った結果、試行店では高齢者向けの商品を充実させているようですね。

諸隈 さまざまな試行的な取り組みを実施しています。まずは、アンケートに基づいた品揃えの充実。また、団地の自治会の新聞を店舗に掲示したり、店の前にテーブルを置いて懇談の場を提供したりしています。

 こうした取り組みによって、団地内のコミュニティ活性化に寄与することができ、お店も団地の中に溶け込んでいます。利用するのは高齢者の方であったり、時間帯によってはお子さんたちがテーブルで雑談していることもあり、年齢層はさまざまです。いずれにしても、居住者の方々に喜ばれていると思います。

――歩きにくくなった高齢者向けに“御用聞き”のサービスも展開していますね。

諸隈 今、コンビニ各社はさまざまなサービスを展開しており、いろいろと工夫もされています。試行店でも、配達サービスで自宅を訪れた際にご要望などをうかがう施策を積極的に実施しており、喜ばれているようです。

――高齢化は、これからますます進行します。試行店は、未来のコンビニの姿を先取りしたように思えます。

諸隈 そうですね。この取り組みは、お住まいの方々や周辺の方々から喜ばれているという実感があります。今やコンビニにはさまざまな機能が集約しており、今後はよりバラエティ豊かになっていくのではないでしょうか。すでに、コンビニの一部では住民票を取得したり物流の窓口になったりといった機能を備えているようですが、社会インフラとしての機能がさらに進化して便利になっていくのではないでしょうか。

――試行店はセブンでしたが、ほか3社の動きはいかがですか。

諸隈 協力内容の具体化などについて、協議をさせていただいています。URとしては、首都圏だけでなく地方でも出店をお願いしたい一方で、出店希望のエリアはコンビニ各社によって違うと思いますが、いずれにしても展開の準備を進めていきたいです。

――日本住宅公団の時代から、URは膨大な数の団地を保有しています。コンビニ出店は100団地で足りるのでしょうか。

諸隈 URの保有団地は1600団地程度あるので、居住者の方へのサービスという観点から見れば「それでいいのか」という感じもあるかもしれませんが、まずは100団地程度の展開が当面の目標です。

――コンビニ以外の高齢者向けサービスとしては、どのような計画がありますか。

諸隈 ウェルフェア総合戦略部は、団地を含む地域で地域包括ケアシステムを構築できるように、UR賃貸住宅団地の地域医療福祉拠点化の取り組みをスタートしています。

 今、地方自治体、関連事業者、大学、自治会の方々と連携して、地域に必要な住宅・施設・サービスの提供を推進しています。そのなかで、今回のコンビニの取り組みも推進していきたいと考えています。
(構成=長井雄一朗/ライター)