都内の桜も満開の時期を迎え、いよいよ春だな〜の今日このごろ。もうひとつの春の風物詩といえば、リクルートスーツ姿の学生の増殖です。ビジネス街ですれ違ったり、駅のホームで彼らを見かけると「ああ、就職活動が解禁されたのかー、みんな頑張れー」と思うとともに、春の訪れを感じるものです。

とにかく、リクルートスーツは目立ちます。それは、秋に街中で豪華なお着物を着た子らを見て、「ああ、七五三の時期かー」と思う時と同じくらい、目につきます。七五三はお着物ですから、当然といえば当然ですが、リクルートスーツは地味なビジネススーツです。なのに、どうしてあんなに目立つのでしょう。

「スーツを着慣れていないフレッシュ感で浮いている」、ということあるのかもしれません。しかしそれよりも、「なにやら、やたらとダサくて、それがいっぱいいるから、つい驚く」という意見も多いのです。しかも、ほぼ黒無地。インナーは揃いも揃ってカリッとした白シャツです。アクセサリーもなし、髪もひっつめ。お葬式の参列者のようでもあります。先日取材したパーソナルスタイリストさんが、「ここ数年のリクルートスーツは、ほぼ9割が黒無地」と言っていました。いつからこんなことになったのでしょうか。

筆者は四半世紀前に、女性誌で就職活動の連載を2年やっていました。主に業種ごと、企業の人事採用の方に取材して「どういう女子を採用したいか」という話を伺ったり、面接でチェックするポイントなどを記事にしていました。春先には、巻頭のファッションページで「就職活動の面接スーツ」の特集も担当しました。そのくらい、リクルートスーツにバリエーションがあったのです。インナーも、白シャツではなく、ボウタイのブラウスが主流でした。

当時、今のように「リクルートスーツ専用」と謳っているスーツがあったのかどうか、記憶が定かではないのですが、20代の通勤ファッションを展開しているブランドの中からファッション企画で「就職活動にも使えるスーツ」を提案していたことを考えると、乱暴に言うと、「それっぽければ、なんでもいい」という時代だったのかもしれません。

同時に、どこまでがOKで、何がNGなのか、そのせめぎ合いが難しかったともいえます。

就活スーツはコスプレ?

ある時は編集部主催で、業種違いの大手企業の人事採用担当者を招いての就職セミナーのイベントも行ないました。

参加者は100人弱。実際に自分が購入したリクルートスーツで出席してもらったのですが、ひとりダークグリーンでダブルジャケットのスーツの子がいました。その彼女が「自分にはこの色がいちばん似合うと思うので」と言っていたのを、今でも覚えています。

そして、「私のスーツはアリかナシか」を人事採用担当者にコメントをもらうというコーナーがあったのですが、そのダークグリーンのスーツの子に対して、ほとんどの企業の方が「本人に意図があるなら、それは個性だからアピールしていい」「僕はこういう人こそ、採用したいと思います」と言う中、1社「今、本人から話を聞けたから僕はいいと思えるけど、第一印象では、どうしてその色?という違和感はあります。服装の話が面接で出なければ、意図はわからないままですよね。となると、ネガティブな印象をもつ面接官もいるかも」と言う方がいて、会場が軽くざわつきました。でも、これが面接官の本音なんだろうと思いましたし、発言してくださってありがとうございます!という気持ちにもなりました。

「それっぽければ、なんでもいい」という時代ですら、こんな感じだったのです。それならば、何着たらいいか、考えるのがめんどうだし、無難なほうがいいーーという潮流が生まれるのは当然です。それが、最終的に「黒無地」に行きつかせたのだと言えましょう。

にしても、リクルートスーツは、ダサいのです。そのダサさの原因は、「ダブル襟」にある気がしてなりません。襟の詰まった白シャツに、ジャケットの襟が重なると、一気に昭和初期感がアップします。

今回、駅で見かけたリクルートスーツを着ている女子たち10人ほどに声をかけてみたのですが、全員が全員「ダサいと思ってます」という苦笑いしていました。ダサいとわかっているのに、そのリクルートスーツを選んだ理由を聞いてみると、「異業種を受けるが、1日で数社回ることもあるから、いちばん堅い業種に寄せた」だったり、「見た目で判断されたくないから、みんなと同じにして、ビジュアル低に埋もれるほうが得だと思った」だったり。

そして、さらに話を聞いていると、彼女たちは、どうやら「就職活動というコスプレ」を楽しんでいるようでした。「これは、本当の自分ではなく、一時的なものーー」。普段、コンサバファッションの子がテーマパークに行ったら、キャラクターのマスクをかぶったりするのと同様、「就職活動」も「就職活動のルール」に寄せて満喫する、そういうことができる子が、増えているのかもしれません。実際、現在働いているアラサー女子たちに聞いてみると、「黒のリクルートスーツもあったけど、着たくなかったから着なかった」という女子が多いのです。人間がまぁるくなったということでしょうか。

「着るもので個性を出さない」というのが社会人の第一歩なのか。

「暗い子はさらに暗く見えるから、黒より紺のほうがいい」「黒スーツだと可愛いか、可愛くないかが如実にバレる」……。その2では働くアラサー&アラフォーに自分の就活スーツと「面接官の立場として、黒スーツの子、どう思う?」を聞いて見ました。〜その2〜に続きます。