「今は元気に働いているけれど、もし病気になって働けなくなったら……」「社会保険だけでは心もとない。民間の保険に入ろうと思っているけれど、何に入ればいいかわからない」

万が一に備えて保険に加入したいけれど、自分に合った保険がわからない。あるいは、一応勧められるままに保険に入ったけれど、病気やケガをした場合に自分が必要とする保障を受けられるかわからない……という人は少なくないのでは?

ウートピ世代の働く女性が保険を検討するときにチェックするポイントは?

というわけで、今回は「35歳・未婚・年収500万円」の会社員の女性を想定して、「ソニー生命」のライフプランナー・中村俊介(なかむら・しゅんすけ)さんに、ウートピ世代の保険について、3回にわたって話を聞きました。

第1回目のテーマは「保険に入ったほうがいい?」です。

「ソニー生命」のライフプランナー・中村俊介さん

そもそも保険は必要?

--本日はよろしくお願いいたします。この前、そろそろ民間の保険に入ろうかなと考えていた際、友人から「高額療養費制度もあるから保険に入る必要はないよ。病気になっても社会保険で十分まかなえるよ」と言われたんです。そもそも民間の保険は必要なのでしょうか?

中村俊介さん(以下、中村):なるほど、ご友人がおっしゃったことは半分当たって半分間違っている、というのが正しいですね。

--というのは?

中村:病気になったとしても治療費の7割は社会保険(国民健康保険)でまかなってくれるので、自己負担は3割ですね。おっしゃる通り、高額医療費制度もあるので月10万円程度で医療費は済むんです。

--高額療養費制度というのは?

中村:高額療養費制度というのは、医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1ヶ月(1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。

上限額は年齢と収入によって決められているんですが、年収500万円の場合、10万円程度*と考えていただいて結構です。

*参考HP

--じゃあそんなに心配することなかったんですね。よかったー。

中村:ただ、月またぎでリセットされるので注意が必要です。

--月またぎ?

中村:高額療養費制度の適用される「1ヶ月」というのが、1日から30日までということなんです。

そのため、例えば、3月20日から4月10日まで入院したら月をまたぐということで、最高で3月分の10万円と4月分の10万円の両方がかかっちゃうよ、ということなんです。

--えっ、そうなんですね! 知らなかったです。

中村:逆に、1年以内に高額療養費の運用が3回以上あった場合には、4回目からは自己負担額が引き下げになって負担が軽減されるという「多数該当」という制度もあります。

入院した場合の自己負担は?

中村:入院したら差額ベッド代も別途かかってきます。

--「差額ベッド代」。よく聞く言葉ですが、それも含めて、仮にがんで入院した場合、どのくらいの費用が自己負担になるんでしょうか?

中村:先ほど申し上げた医療費の3割と食事代や差額ベッド代、先進医療にかかる治療費や入院中の雑費、例えばタオルやパジャマ代、タクシー代などは自己負担になります。

--そうなんですね……。「食事代」というのは?

中村:入院したときの食事代ですね。1食につき260円ほどが自己負担になります。

--コーヒー1杯分くらいですね。でも入院日数が長引けばばかにならないですね。さっきちらっと出た差額ベッド代*はどのくらいかかるんですか?

中村:よく保険の資料には「1日1万円」と表記してあるのを見かけますが、都内の病院だと1万5000円や2万円とかかってくる場合も珍しくないんです。

*公的医療保険で決められた室料との差額。個室や2〜4人部屋といったより条件のよい病室を希望する場合に全額自己負担となる。

--例えば、乳がんで入院した場合の平均入院日数は12.5日と資料*にはありますが、1日1万5000円としたら12.5日で18万7500円。差額ベッド代だけで20万近くかるんですね。そういえば、婦人科系のがんで手術をした友人も個室にしたと言っていました。

中村:2人部屋もありますが、隣の人が夜中にうめき声を出したり、苦しんでいたりしていたら精神的ストレスも大きいと思うんですよ。それが気になっちゃうという人は個室を選ぶことになるのかな、と。

*出典:厚生労働省「平成28年 社会医療診療行為別統計」を元にセールス手帖社保険FPS研究所試算 厚生労働省「平成26年 患者調査」

--なるほど。

中村:また、6人部屋などの大部屋のほうが、差額ベッド代がかからない分、埋まりやすいという病院側の事情もあるんです。

大部屋の空きがなければ自動的に4人部屋や2人部屋に入ることになったり、自分が治療を受けたい病院に入院しようとしたときに大部屋がなかったら差額ベッド代がかかる部屋を選ばざるをえなかったりというケースもあるんです。

--それは辛いかも……。

4割が収入ダウン、年収も4割減少

--先進医療にかかる治療費というのは?

中村:先進医療費は200〜300万円前後*が費用としてかかってきます。「非常に治療効果が高い」「体に優しい」といった効果としては非常に大きいんですが、その分の自己負担も大きい。そういう意味で、社会保険だけでは治療効果が高いものを選びたいときに治療の選択肢がだいぶ限られてしまうということになってしまう。

*厚生労働省「平成28年度先進医療実績報告」

--選択肢が限られてしまう、というのは辛いですね。お話を聞いていると、預貯金がたくさんないのであれば保険に入ったほうがいいってことになりますね。今回の女性の裏設定として、というか私なんですが、預貯金が100万円くらいを想定しているんですが、その場合は入ったほうがいいということになりますね。

中村:そうですね。あとは保険に入っておいたほうが安心な理由の一つとして、収入の減少も挙げられるんです。

弊社の調査だと、三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)に限って言えば、約4割の方が収入ダウンしている状況なんです。年収の減少率も約4割と言われています。

--年収500万円だったら……。

中村:4割の200万円減ということになりますね。

--うわー、厳しいな。逆に言えば、年収500万円の人なら減少分の最低200万円はカバーできる保険に入っておいたほうがいいってことですよね?

中村:そうですね、一つの目安として考えていただいたもよいのかなと思います。病気にもよるとは思いますが、治療の副作用で今までと同じような働き方で働けるとは限りませんよね。

そういう意味で、よっぽどの預貯金がない限り、少しでも経済的不安をなくすための保険は必要かなと思います。個人的には万が一に備えて500万円は用意しておいてと言いたいですね。

--わかりました。今回の女性の場合だと保険に入ったほうがいいということで、次回は「医療保険の選び方」について詳しく聞きたいです。

※次回は4月4日(水)更新です。

(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)