ストリートウェアに特化したパブリッシャー、ハイスノバイエティ(Highsnobiety)は、今後5年間で総売上の30%をeコマースで達成するという目標を掲げている。

同社は現在、彼らにとって3作目となる長編ドキュメンタリーの公開に合わせて、ブランドやデザイナーとコラボ製品を製作している。このドキュメンタリーは、マリファナ産業がどのようにしてプレミアムなライフスタイル市場へと進化してきたかを探った作品で、2018年4月に公開予定だ。さらに5月には、日本語版サイトとソーシャルチャンネルを開設し、その記念として9つのブランドとコラボ企画を実施し、Tシャツを制作するという。

ハイスノバイエティは1月、フェリックス・キャピタル(Felix Capital)が主導する資金調達において、850万ドル(約9億円)を受け取った。これを活用し、動画やブランデッドコンテンツ事業をさらにスケールさせ、前述した野望を実現する計画だ。

同社は、eコマース戦略を立てるために今年末までに5人を新たに雇用し、核となるチームを発足。さらに2019年末までにはチームを20人に増やす予定だ。ハイスノバイエティの創設者、デビッド・フィッシャー氏は、今年はeコマースプロジェクトを毎月ひとつ実行し、その後は月3つのペースまで増やしたいと考えている。

「無限の可能性を秘めたモデル」



「我々は物事を報じるだけでなく、ユーザーにアクションを起こさせるように、コンテンツをeコマースによりよく馴染ませ、製品をコンテンツに完全に統合したいと考えている」とフィッシャー氏は語る。「大きな問題は、それをどうやってスケールできるかだ。ドキュメンタリーや製品を毎週出すことはできない」。

この動きには期待が持てる、とデジタルエージェンシーのリターン(Return)の最高経営責任者(CEO)であるガイ・レバイン氏は話す。多彩なブランドから数多くの製品を見せることで、ハイスノバイエティは、独占的な限定コレクションの魅力を維持しつつ、売上を意義あるものにするだけのスケールも確保できる。

「これは、スケールアップに向けての無限の可能性を秘めたビジネスモデルだ。スピンオフもありえる。ハイスノバイエティが独自レーベルになるかもしれない」と、レバイン氏。

コンテンツ主導型のeコマース



フィッシャー氏によると、資金の一部はコンバージョンを誘導するための社内技術の開発に活用される。購入できるサイズや商品の価格、送料などをオーディエンスが把握できる機能を追加するとともに、関連商品の表示の自動化を実施するという。

フィッシャー氏はいう。「これは我々が、我々のやりたい方法で、eコマースのためのコンテンツ主導型の戦略を立案するはじめての機会だ。正しい戦略があってこそ、我々はより良いコンテンツプロダクトを制作できるようになる」。

レバイン氏は、クリエイティブに関する議論が課題になると述べる。「顧客の所有者は誰になるのか? ハイスノバイエティなのか、それともブランドなのか? ファッションハウスと協調するデータ企業か、あるいは製品を知り尽くしたファッションハウスか?」と同氏。

当初の目的はマーケティング



創設13年のハイスノバイエティは、いままでもeコマース事業に取り組んできたが、それは売上のためではなく、マーケティングを目的に実施されたものだった。創立10周年のとき、ハイスノバイエティは10のブランドとコラボして、ア・ベイシング・エイプ(A Bathing Ape)のTシャツや、マイキータ(MYKITA)のサングラス、プーマ(Puma)のスニーカーなどが入ったカプセルコレクション(ほかのデザイナーやアーティストらとコラボして発表する、期間や数量限定の小さなコレクション)を送り出し、それらをハイスノバイエティのWebサイトや世界各地のリテイラーで販売した。

アディダス(Adidas)とのコラボレーションでは、共同デザインの靴を60のリテイラーに配布し、ハイスノバイエティのサイトで400足の販売予約を受け付けた。販売開始からの2時間以内に、サイトでこの靴をチェックしようとした人が1万6000人もいた。

一方で、広告収入の減少を相殺し、売上を増やそうとしてeコマースに取り組むパブリッシャーも存在する。なかには、製品に関する記述内容を彼らの都合良く変更するパブリッシャーがいて、結果ぎこちない表現になってしまっていることもある。

およそ50のパートナーと契約



2017年中頃には、アディダスを中心としたかつてのアフィリエイトマーケティングから、マーチン・カーラ(Martin Kara)を中心としたアフィリエイトパートナーシップによるスケールへと焦点を絞り込んだ。およそ50のパートナーとのアフィリエイト契約による、ハイスノバイエティの今年の売上は7桁に達するだろうと、フィッシャー氏は話す。

しかしこの額は、総売上の5%以下でしかない。こうしたアフィリエイトによる収入は総売上の10%が限界だとフィッシャー氏は考えている。「我々が何千という製品を提供する、eコマースプラットフォームになることはないだろう」とフィッシャー氏はいう。

アフィリエイトビジネスは、ハイスノバイエティがより広範なeコマース戦略を学ぶのに役立っている。たとえば、サイズというハードルが少ないので、洋服よりアクセサリーのほうがコンバージョン率は高い。もっとも人気のある平均的なサイズのバスケットの価格は185ドル(約1万9000円)程度で、2番目に人気のあるサイズの価格が493〜616ドル(約5万2000〜6万5000円)のあいだだ。このことから、適正な製品にはオーディエンスは喜んでお金を払うことがわかった。

まだ答えが見えていない



フィッシャー氏は、パブリッシャーとしてどの程度顧客満足度や物流といったカスタマーサービスに注力すればいいのかなど、まだ答えが見えていない要素があることを認めている。

「我々がやりたいeコマースの在り方は、まだ存在してない。なぜなら世界はいま、新たな小売サービスを望んでいるわけはないからだ。我々が自身を差別化するために直近でやるべきことは、高度に工夫を凝らした何かを提供することだ」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)