ハンズオンの様子(筆者撮影)

アップルは教育市場向けに向けた新製品、新アプリなどを米イリノイ州シカゴ市北部にあるLane Tech College Prep High School(名門大学を目指す進学私立準備校)で発表した。

学校向けには299ドルで提供


プレゼンテーションをするティム・クックCEO(筆者撮影)

新製品はA10 Fusionを搭載しながらも低価格を実現したiPad。9.7インチiPadとしては、初めてApple Pencilに対応。価格が329ドルからだが、学校向けには299ドルのディスカウント価格で提供する。

新プロセッサーを搭載することで、iPhone 8シリーズやiPhone Xと同様に高精度のAR機能に対応し、これを用いた学習向けアプリの開発を可能にするなど、iOS11の機能を活用した教育機関向け機能を披露した。

またiWorkの各種アプリケーションや音楽作成ソフトのGarage Band、アニメーショ制作アプリのClipsを改良し、教材開発を容易にするとともに、カリキュラムの進捗管理アプリの強化、あるいは宿題を電子的に出し管理するとった新アプリを提供する。

さらには写真、動画、アプリ、ドローイングといったクリエイティブな作業を、教師がクラスの生徒たちと一緒に作っていくため、それぞれに対応するiPad用アプリを教育機関向けに設計されたカスタマイズを加え、今年秋にリリースすることも発表している。

アップルは伝統的に教育市場を重視し、教育者や生徒・学生たちが最初に触れるコンピュータとして慣れ親しんでもらうよう様々な活動を行ってきた。よくある教育関係者向けの割引購入プログラムなどだけではなく、プログラミングを通じた論理的な思考・記述を学ぶためのツールやテキストなどの学習素材も提供している。

「教科書の再発明」

ウォルター・アイザックソン著の伝記『スティーブ・ジョブズ』では、アップルのCEOだった故スティーブ・ジョブズ氏が「テレビ、教科書、写真を再発明したい」と語っていたことが明らかになっている。このうち教科書の再発明は、iPadによって成し遂げようと考えていた。


(筆者撮影)

さらに教科書の電子化だけでなく、コンピューティングを通じた論理的思考など、教育に対する新たなアプローチにも積極的だ。

たとえばiPad向けのSwift Playgroundsは、iOS向けアプリを構築するためのSwift言語を基礎に、本格的なプログラミングで必要となる複雑要素を簡略化。タブレット向けの平易なユーザーインターフェイスを用い、論理的な記述のみをプログラムコードで書くアプリだ。

Swift Playgroundsは無料で利用でき、教育関係者だけでなく、論理的思考を子どもに身に着けさせたい親も、自分自身が学び、子供と一緒にプログラミングを試せるよう設計、教材まで用意されている。こうした取り組みの延長線上にあるのが、今回の製品発表だ。

もっとも、”アップルは伝統的に教育市場を重視してきた”と紹介したが、実はアップルが電子端末の分野で唯一、圧倒的な劣勢に立たされている分野でもある。IDCなどのデータを総合すると、おおよそではあるが、グーグルのChromebookが65%、ウィンドウズ搭載機が20%程度で、わずかに残るLinuxなどを除くとアップルのシェアは15%を割り込むとみられている。

グーグルが持つ教育ソリューションの強みは、同社が教育機関向けに提供しているクラウド型のアプリケーションシステムと簡単に統合できる点にある。クラウドベースで動作するため、システムのトータルコストを大幅に下げることができる。

グーグルも直前に「対抗製品」を発表

また、クラムシェル型(キーボードとディスプレイを貝殻のように閉じる構造のこと)のコンピュータから、今回発表したタブレット型まで予算や目的に応じて多様な選択肢を選ぶことが可能だ。グーグルの強みは教育機関をサポートするネットワークサービス側にある。その牙城はかなり強固といえるだろう。


(筆者撮影)

Chromebookはノートパソコンのようなクラムシェル型筐体を採用していたが、グーグルは今回のアップルのイベント直前、3月26日にChrome OSを載せた初めての教育用タブレットを発表。その最初の製品として、台湾のエイサーが開発した「Chromebook Tab 10」を発売。価格は329ドルで、エントリークラスのiPadとまったく同じ価格に設定した。

これに対してアップルは今回、グーグルのようなクラウドを通じた効率化やコストダウンといった視点ではなく、教育の現場でのクリエイティビティや自発的な学習を引き出す部分にフォーカスを当てている。またクラウドを経由せずに(すなわちアップルを経由せずに)進捗管理や関連プリント、教材の配布などを行えるよう設計するなど、プライバシーに対する考え方の違いも明確にした。

発表会の詳細については、後ほどレポートする。