パークランドの高校の銃乱射事件で殺された17人を偲び、彼らの似顔絵を掲げる子どもたち(筆者撮影)

2月、フロリダのパークランドにある高校の校内で17人の学生や職員が、未成年の侵入者に銃で無差別に射殺された。その後、スクールシューティングの標的となった学生たちが「もう我慢できない」と銃規制を求める声を上げた結果、この週末、全米各地で学生や市民を中心に大規模デモが行われた。その現場を取材した。
(文中敬称略)

3月24日土曜日、ロサンゼルス市庁舎の前に、銃規制を求めて声を上げる10万人以上の市民が集まった。


公立の美術高校に通うフランキー・バンデラス君。銃の値段と命の値段を比較(筆者撮影)

その中には、ユニークな手作りポスターを手に持ち、無言で立っている15歳の少年がいた。ロサンゼルス市内の公立芸術専門高校(LACHSA)に通う15歳のフランキー・バンデラスだ。

ポスターには、ピストルに「18ドル」、機関銃に「266ドル」、そしてライフルに「215ドル」の値札がついている絵が描かれている。バンデラスは、「どんな種類の銃が、実際にいくらで買えるのか、自分でちょっと価格を調べてみたんだ」と言う。

「たとえば、このタイプのピストルなら18ドルで買えてしまう。一方、僕らが授業で使う絵の具や画材をそろえると、18ドルじゃとても足りない。つまり、僕たち高校生が勉強するために必要な教材より、学生を射殺するのに使われる道具のほうが、値段が安いんだ、この国では」

そのポスターの真ん中には、血を流している腕が拳を握っている絵がある。その横に「僕たちの命の値段はいったいいくらなんだ?」という文字が描かれている。

自分の教室もいつ襲撃されるかわからない

高校1年生のバンデラスは「うちの学校の教室にも、入ろうと思えば、誰でも銃を隠し持って入れてしまう。正直、毎日学校に通うのはとても怖い」とつぶやく。

フロリダのパークランドの高校で17人の学生や職員らが殺された無差別乱射事件が、米国で今年に入って17番目のスクール・シューティングである以上、自分の教室もいつ襲撃されるかわからない、と感じるという。

「本当は今日、このデモに参加するのも危険だとわかってるんだけど」と彼は小声で言う。

LAのような大都市の市庁舎前の芝生の広場に立てば、格好の「動く標的」になりかねないからだ。高いビルの屋上から狙われたら逃げ切れない可能性が高い。それでもデモに参加したのは、銃規制の強化を法で定めなければ、また必ず死者が出ると思ったからだ、と語る。

「スクールシューティングの後に皆で祈ってキャンドル灯して、数カ月したら、またスクールシューティング。もうそんな悠長なことはやってられない」とバンデラスは言う。

パークランドの事件後に、トランプ大統領が提案した「教師が銃を携帯して校内の学生を守ればいいのでは」という案をどう思うかと聞くと、こう言った。

「あまりにもバカげた案で驚愕した。大統領本人が身を投げ出して僕たちを守るわけでもないのに、現場の教師にそんな危険な役を押し付けるなんて、いったい何を考えているんだという感じ」

殺人犯に見つからないようにみんなで隠れるの

今回のデモには、高校生よりずっと若い小学生も、手描きのサインを持って参加していた。

「NO MORE GUNS」と書かれた紙を持っていたのは、小学校1年生のリカルドJR・フェルナンデス(7)だ。パークランドの事件が起こってから、彼の通うLA市内の小学校では「ロックダウン」と呼ばれる銃撃を想定した避難訓練が行われるようになった。

「図書館にみんなで隠れるの。殺人犯に見つからないように、体を縮めて1時間動かないようにって先生に言われる。怖いと泣く子もいるし、勇気を出して戦うと言う子もいる。ねえ、どうして犯人は、子どもや罪もない人を銃で殺すのかな?」

隣にいた彼の父リカルド(38)は「本当は、息子には殺される心配など一切せずに、校庭で遊んだり、思う存分勉強したりしてほしい」と言う。息子が学校から無事に帰ってくるかどうか心配する生活はこの先もう耐えられないと、次男で1歳のセバスチャンも連れて、親子3人でこのデモに参加した。


リカルド・フェルナンデスさんと小学1年生の息子、リカルド・ジュニア君、そして次男で1歳のセバスチャン君(筆者撮影)

カリフォルニア州では銃を携帯していた教師が誤って天井を撃ち、その破片で生徒を負傷させてしまう事件が、すでに発生しているだけに、教師が学内に銃を持ち込むのは「親として反対だ」と彼は言う。

「米議会が銃規制法案を通さなければ、次の中間選挙で銃規制する政治家を選び直すまでだ。トランプ政権は、子を持つ親の怒りをなめないほうがいい」とリカルドは主張する。

ラスベガスの銃乱射事件で生き残った女性の主張

銃規制を訴える人々の中には、昨年10月にラスベガスの野外コンサートで58人が無差別射殺された事件で、生き残った女性もいた。


右がラスベガスの銃撃事件に遭遇したメリッサ・ホルムズさん。左は従姉妹をアローラ襲撃事件で失ったアニタ・ブッシュさん(筆者撮影)

カリフォルニア州チノ在住のメリッサ・ホルムズは、その日のことを思い出すと体が震えると言う。

「最初は銃声とはわからず、音響設備の故障かなと思ったけど、上から撃たれていると気づいて『神様助けて』と叫びながら走った」

生き残った彼女が米議会に求めるのは「狙撃用ライフルとバンプストックの販売禁止」だ。

バンプストックとは、セミ・オートマティックのライフルに装着して、オートマティックのように続けて発射できるようにするデバイスのことだ。

これを装着すると、1分間に数百の弾丸を続けて発射できるという。
「ラスベガスの狙撃犯が私たちを標的に使ったのがこのバンプストックだったから」とホルムズは言う。

彼女は、自分が銃の標的になった経験があっても、米国憲法の修正第2条で定められている「市民が銃で武装する権利」はあくまで支持すると語る。

「たとえば、私の伯父は狩猟用の銃を持っているけど、伯父を怖いと思ったことはない。できれば銃の免許も、運転免許のように実技や知識などをテストする試験制にしてほしいけど」

彼女の横には、コロラド州アローラの映画館の乱射事件で、23歳の従姉妹を亡くしたという女性、アニタ・ブッシュが立っていた。手には殺された従姉妹、マケイラ・メディックが微笑んでいる写真を持っている。

「私はAR15ライフルの販売を禁止してほしい」と彼女は言う。

このタイプの銃で従姉妹の命を奪われたからだ。


全米ライフル協会(NRA)を批判するサインが目立つ(筆者撮影)

ブッシュいわく、無差別射殺に頻繁に使われ、殺傷力の高いAR15をマーケットからなくすには、銃市場を死守したい全米ライフル協会(NRA)と市民の全面対決になるだろうという。

「政治家たちへのNRAの献金の額はものすごいから、簡単ではないけど、闘うしかない」と語る。

確かに、今回のデモの現場では、トランプ大統領を批判するポスターの数よりも、NRAを名指しで批判するポスターの数のほうが圧倒的に多かった。

すぐに出口を確認する習慣がついた

従姉妹が殺されてから、ブッシュは映画やコンサート、教会などへ行く際に躊躇するようになったという。出掛けた先では出口をすぐ確認し、出口のすぐ横に座るなど「もし撃たれたらどうするか」をつねに想定して行動するようになり、いつも不安な気持ちを抱えているという。


「銃による暴力は公衆衛生上、疫病のようなもの」だと主張する小児科医のリサ・ルーさん(1番右・筆者撮影)

そんなストレスが、深刻な心身の症状を引き起こすことも多いと語るのは、デモに白衣姿で参加していた小児科医のリサ・ルーだ。フレズノの大学病院に勤務している。

「特に、銃犯罪に家族が巻き込まれた経験のある子どもは、不安からひきつけを起こしたり、心身に深刻な変調が出ることがとても多い」とルーは語る。

米小児科学会は、今回の銃規制を求めるデモを支持すると公式発表し、彼女や仲間の医師たちがこのデモに参加した。フレズノ地区では銃犯罪が多く、その犠牲になる子どもたちも見てきたルーは「銃犯罪は疫病と同じで公衆衛生上の大問題だ」と言う。

米国では、メンタルヘルスに問題がある人間に銃にアクセスさせるなという議論もつねに起こるが、ルーは医師の立場から「他国でもメンタルヘルスの問題を抱える人は多数いるのに、なぜ米国だけこれだけ突出して銃犯罪の数が多いのか。そもそも銃へのアクセスが簡単すぎる。そこを規制しないと解決にならない」と語る。


「銃を持つ権利を守る」デモでは巨大なトランプの旗が(筆者撮影)

10万人以上の人々が朝からLAのダウンタウンに集まったこのデモが集結しかけた午後4時、今度はLAの連邦政府ビルの前で、「銃を持つ権利を守る」ためのデモが行われた。

星条旗が複数はためく政府ビルの前に「TRUMP」の文字が描かれた畳ほどの大きさの旗などを手に立っている男女は約20人ほど。

その横には、参加者よりも数多くの警官が待機し、やや緊迫した雰囲気だ。

「銃を持つ市民の権利を守れ」と声を上げる中高年の参加者の中に、高校2年生のブリットニー・ブランチ(16)がいた。

彼女が銃を持つ権利をあえて人前で主張する理由 

多くの高校生たちが銃規制を強く望む今、銃を持つ権利をあえて人前で主張する理由を彼女に聞いてみた。


高校2年生のブリットニー・ブランチさん。銃を持つ権利を擁護。彼女の父は知事選に立候補している(筆者撮影)

「銃が人を殺すのではなく、引き金を引くのはあくまで人間。誤解しないでほしいけど、撃たれて犠牲になった高校生たちのことは本当にかわいそうだと思う。でも、メンタルヘルスの問題がある人に手厚いケアをしない社会が問題なのであり、銃が悪なのではない」とブランチは言う。

ちなみに、彼女が通っていた中学校では、ある男子学生が銃を教室に持ち込み、大騒ぎになったことがあったという。

「女の子に振られて、頭に来て銃で殺そうと思ったらしい。そんな事件があった後も、彼のメンタル面のケアを学校側は一切せず、彼を放置したままだった」と彼女は言う。

未成年が銃を簡単に買えないように法規制すれば、学校生活は今より安全になるのでは、と聞くと「そういう考えは尊重するけど、私はそうは思わない」と語る。

ブランチの父は海軍経験があり、家にはつねにピストルが保管されているのだそうだ。彼女が幼い頃、一家が治安の悪い地域に住んでいた時は、銃と父の存在が「もし誰かが侵入してきても大丈夫だ」という安心感を彼女に与えていたという。

「銃の使い方、保管の仕方をきちんと学んで、自分の身を守ることは大事だと思う。私が将来、老人になった時も、銃があれば自分の身は自分できちんと守れるし」

銃規制を求める市民たちが、全米ライフル協会を敵対視する点をどう思うか聞くと、こう答えた。

「NRAのメンバーが学校を襲撃して子どもを殺すわけではないし、むしろ彼らは子どもを守る側なのでは」

彼女が立っているすぐ横にウィルショア大通りがあり、ひっきりなしに車が行き交う中、10台に1台ぐらいの割合でクラクションが鳴る。

音を鳴らすのは彼らの主張に共感しているというジェスチャーだ。


NRAのキャップを被り「銃を持つ権利を守れ」と手製のポスターで呼びかける男性(筆者撮影)

やがて、NRAのロゴの入ったキャプをかぶった男性が彼女の横に加わり「その権利を守れ」という文字と、ピストルの絵が描かれたポスターを掲げた。

さらに、その横に、若いヒスパニック系の男女3人組が巨大な星条旗を持って参列した。

「プロテストしているの?」と通行人が彼らに聞くと「プロテストなんてしてない。アメリカ市民であることを表明しているだけ」と旗を持つ20代の女性が笑顔で答えた。

数万人の規模にはとても及ばないごく小さなデモだったが、大通りを走る車の列からは、彼らを支援するクラクションの音が鳴り、その音が途絶えることはなかった。