photo by Shunichi kouroki via flickr(CC BY 2.0)

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 日本市場にも浸透しているスペインのスパークリングワイン「カヴァ」の世界最大メーカー「フレシネ」(スペイン発音だとフレイシュネッ=Freixenet)が、遂にドイツのライバルメーカー「ヘンケル」に50.7%の株を売却することで双方が3月に合意した。

 フレシネ社内の売却反対派は、株売却を防ぐために長年フレシネの代理店をしていた日本のサントリーにも出資の参加を誘ったようであるが、結果として反対派の狙いは成就しなかったようだ。(参照:「Expansion」)

 フレシネの創業は1889年、カヴァの生産を開始したのは1914年である。カヴァという商品名はそれが「洞窟(カタラン語でカヴァ)」で発酵させていたというところから由来している。

 フレシネがカヴァの生産を始めたのはペドロ・フェレール・ボッシュからである。1914年のことであった。彼には3人の娘と男ひとりの4人の子供がいた。フレシネの現在の経営陣は、その二人の娘(嫁いだ先がボネッ家とエルビア家)からそれぞれ子供4人と長男(フェレール家)の子供4人の合計12人が株主で、合議制で経営を行っている。

◆亀裂を広げた独特な経営体制

 実はこの、“12人が経営に関与している“ということが経営をより難しくしいていた。特に、会社が利益を生まなくなると、尚更、各自の経営方針の違いが目立つようになる。それが2年前から生じていたという。

 フレシネの販売の80%は輸出であるが、その輸出が2年前から不振となっていたのだ。その為、株主への配当金も2年間中断した状態が続いている。その足を引っ張ているのが外国の子会社である。例えば、昨年のフランスの子会社は695,000ユーロ(9,040万円)の赤字、英国の子会社は163,000ユーロ(2,100万円)の赤字となり、この2社の赤字が最も顕著で、それ以外に上海などは利益ゼロという状態にあるという。外国の子会社の累積赤字は100万ユーロ(1億3000万円)以上になっているそうだ。

 2017年度の年商5億3500万ユーロ(690億円)で1200万ユーロ(15億6000万円の粗利という業績から判断すれば、外国での赤字額は容易に見逃せない数字なのは言うまでもない。しかも、カヴァは二次発酵までさせるのにボトルを長期間寝かさねばならない。そのストック費用も企業にとって相当な負担になる。(参照:「El Confidencial」、「El Mundo」)

 この経営難に直面してから、12人の株主の間で経営方針について意見の違いが目立つようになっていたのだ。それが表面化したのが、エルビア家の4人とボネッ家の2人が会社を売却することを望むようになってからである。彼ら6人の株を合わせると50.7%になる。そして、彼らが売却先として選んだのがヘンケル社であった。

 ヘンケルは既にカヴァのメーカー1社を買収していたが、カヴァの世界支配を狙っている彼らにとって、フレシネを買収することに以前から強い関心を示していたという。しかし、買収するには過半数の株を手に入れることというのを条件にしていたそうだ。

◆ドイツ企業に渡したくなかった売却反対派の対抗策

 一方、フレシネの株の売却に反対している側は、外国からの資金の導入自体は魅力を感じてはいたが、ドイツ企業が過半数の株を取得して、ドイツ人が経営権を握ってフレシネを支配するということには賛成できなかった。

 そこで、売却を望んでいるエルビア家の動きを牽制する意味で、反対派のCEOのホセ・ルイス・ボネッは、エルビア家の株を購入して51%の株を手中に収めるために、3つの手段で対抗を試みた。

 3つの手段とは、
1)サンタンデール銀行に1億2000万ユーロ(156億円)の融資を依頼
2)サントリー社に資本参加を誘った
3)カタルーニャで誕生したビールメーカーダム(Damm)社の資本参加を希望