4月に南北首脳会談、5月に米朝首脳会談の予定が進んでいる。米韓朝の3国に加え、中国が陰に陽に関係してくるであろう。そうした中で、日朝首脳会談の可能性が模索されているとの報道もある。

 北朝鮮は核と戦略ミサイルが体制維持に欠かせないとして、昨年まで全力投球してきた。それが平昌五輪における要人接触で一転して、南北、次いで米朝首脳会談まで予定に上がり、遺訓である半島の非核化に応じてもよいと言い出した。

 日本周辺で起きようとしている劇変――これは日本の運命や存立に大いに関わるであろうが、日本の国会は「我関せず」なのか、マスコミはほとんどが森友学園にかかわる文書書き換え問題の報道である。

 北朝鮮情勢ばかりでなく、中国の習近平国家主席やロシアのウラジーミル・プーチン大統領の長期政権が可能になったということは、日本の針路に大きな比重で関わってくるというのにである。

 中露は日本周辺で爆撃機や戦闘機などの軍用機の行動も活発化させている。また、北朝鮮などからのサイバー攻撃も盛んになる一方である。

 英露間では外交官の追放合戦が起きており、米中間でも同様な問題に加え、貿易戦争さえ懸念されている。

 米国が世界の警察官を降りてから、全般的に混沌とした世界に向かいつつある。戦争に至らないテロなどの頻発が懸念される。こうした動きを見るにつけ、「平和は力で守られる」という現実が浮かび上がってくる。

 これまで戦争や紛争、平和などについて真剣に、かつ現実的に考えてこなかった日本人(安保法制国会でさえ真の議論は行われなかった)にとっては、受け入れがたい事実であろう。

 しかし、世界は虚々実々の駆け引きをしながらも、現実には「力」がものをいう。力には物理的にハードなものだけでなく、諜報戦や超限戦、三戦(与論戦・心理戦・法律戦)などのソフトなものを含むことは言うまでもない。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

北朝鮮は協定破りの常習犯

 昨年までの北朝鮮の核実験や弾道ミサイルの発射は何だったのか。また文在寅韓国大統領が1月10日に行った年頭記者会見で、制裁を強化するトランプ大統領を評価し、北朝鮮の非核化に言及したことに対し、「和解局面に冷や水を浴びせる穏当ならぬ妄言」と非難した北朝鮮であった。

 それが平昌五輪の宥和演出を境に一転し、半島の非核化で米朝首脳会談に乗り出したのである。しかも、これまで騙しの常套句として使われてきた「非核化は先代の遺訓」の用語を使ってである。

 ここには謀略が潜んでいるとみるのは穿ち過ぎであろうか。

 一部メディアが伝えるように「にわかには信じがたい」のが実際のところだ。

 金日成主席は1986年、平壌での国際会議で全世界の非核化を求める声明を発表し、「北朝鮮は核兵器の実験・製造・備蓄・導入をしない」と宣言した。

 その結果、1991年に在韓米軍が戦術核兵器を撤去し、南北は「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」に合意した。

 その後も金主席は「我々には核兵器を作る意思も能力もない」と何度も表明した。それを受け継いで、金正日総書記は、2005年に訪朝した韓国の統一相に「朝鮮半島の非核化は先代の遺訓であり、依然有効だ」と述べる(が、翌2006年に初の核実験を強行)。

 そして、今回、金正恩朝鮮労働党委員長が「非核化は先代からの遺訓」として、北朝鮮への軍事的脅威が解消され、体制の安全が保証されれば核を保有する理由がないと発言したのだ。

 ところで、北朝鮮は約束破りの常習犯とされてきた。1994年に米朝枠組み合意ができ、軽水炉2基と重油の供与を受ける見返りに黒鉛減速炉の凍結を約束。しかし、密かにプルトニウム再処理を実施していたことが判明。

 先述のように2005年には6か国協議で「先代の遺訓」として核放棄を共同声明で約束。しかし、2006年そして2009年に核実験を行う。

 金正恩体制(2011年12月)になってからも、2012年2月29日の「閏日合意」では核実験やミサイル発射停止と食糧援助などの合意がなされるが半月後に反古にし、1年後には3回目の核実験を行っている。

 2016年になると2回の核実験とほぼ毎月、中・短距離弾道弾の発射を行ってきた。2017年も1回の核実験といよいよ米国を射程範囲とする長距離弾道弾を日本海に向けてロフテッド軌道で発射し、米国へ圧力をかけ続けた。

 核実験を行うたびに国連は制裁決議を行うが、10年以上にわたって無視し続けてきたのが実情である。このように、核開発の凍結はすべて反古にされ、遂に大陸間弾道弾(ICBM)に搭載可能な小型核弾頭さえ手にしようとする段階に至ったわけである。

 トランプ大統領が「(ビル・)クリントン、(ジョージ・W・)ブッシュ、(バラク・)オバマ大統領は北朝鮮の核兵器や弾道ミサイル開発をストップさせることに失敗した」と批判する通りである。

ニクソン流の指導者とは

 トランプ氏は大統領就任前から、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官(やロックフェラー家)との繋がりが伝えられた。また、トランプ大統領は若い頃、リチャード・ニクソン大統領(当時)とも接触があり、勇気づけられたとの感想も漏らしている。

 ニクソン氏は日本が憲法を改正して共産勢力と戦うことを希望していたし、また核武装容認とも伝えられた。同様に、トランプ氏も大統領選中に日本の防衛費増大の必要性を口走っていたし、核武装容認発言さえ行っていた。

 このようにトランプ大統領はニクソン元大統領やキッシンジャー元国務長官とも通じていた。

 そうしたことからも、敵対していた中国と手を握りニクソン・ショックを仕かけたキッシンジャー氏がトランプ大統領の裏で動くということは、トランプ・ショックもあり得るということかもしれない。それが対中国か対北朝鮮かはともかくとして・・・。

 そのためにも、ニクソン氏がどんな指導者論を抱いていたかは重要である。

 彼の著書『指導者とは』によると、「指導者に必要とされる資質は、必ずしも子供たちが美談として記憶するようなものばかりとは限らない。(中略)陰険、虚栄、権謀術数などは一般的に悪とされるが、指導者にはそれはなくてはならない」と述べる。

 そして「フランクリン・ルーズヴェルトは、絶対に参戦しないと公約しながら、密かに戦争準備を進めた」と語り、また「リンカーンが情熱を注いだ大目的は、北部連邦の維持だった。その目的を達成するため彼は法律を破り、憲法に違反し、独裁に近い権力を行使し、個人の自由を制限した」などと語る。

 また、目的と手段については「目的さえよければどんな手段を使ってもいい、と言うのはバカである。だが同時に、偉大な目標が他の場合なら許せない手段によってしか達せられないとき、それを使うな、というのもバカげている。第2次大戦で枢軸国を打ち負かすために、我々は数千万という人間を殺し、傷つけ、不具にしたが、目的は立派に手段を正当化した」と述べる。

 トランプ大統領は安倍晋三首相と一番意思疎通ができるという人は多い。しかし、どの首脳も外国の首脳と会ったり電話会談などをして、外交辞令上からもあまり貶したり、また意見の食い違いを表に出して強調するようなことはしない。

 トランプ氏は首脳会談後などのツイッターではほとんどの場合、「素晴らしかった。十分話のできる人物だ」など褒め言葉を多用している。しかし、実際の腹の中はなかなか読めない。

 北朝鮮には相当数の日本人が拉致されているが、彼らを取り戻すのも米国頼みの状態できた日本である。トランプ大統領が金正恩委員長と首脳会談を行なえば、3人と伝えられる米国人拉致被害者を取り返すのは確かであろうが、日本人が返って来るとは限らない。

 安倍首相がどこまで拉致被害者救出でトランプに迫れるか、日米の真の絆が問われようとしている。

9.11は仕組まれたパールハーバー?

 以下はニクソン氏が指導者には権謀術数がなくてはならないといういくつかの例である。そもそも、多くの人が戦略の基本書の1つに決まって挙げるのが『孫子(の兵法)』である。

 『孫子』の第1・計篇には「兵とは詭道なり」とあるが、これは戦争とは騙すことであるという意味である。

 そうしなければ第8・九変篇で「廉潔は辱められ・・」と言うように、心が清くて私欲がなく行いが正しいのは敵の術中に填まり辱めに陥るだけとなる。

 より現在に近い2001年9月11日の米国同時多発テロについてみてみよう。ほかでもないが、ジョージ・W・ブッシュ大統領(息子)が就任した年にニューヨークやワシントンで起きたテロである。

 ブッシュ氏と大統領選を戦ったアル・ゴア(クリントン政権の副大統領)氏の著書『理性の奪還』によると、ブッシュ大統領には数か月前からオサマ・ビンラディンの動きなどに関する情報が上げられていたことが分かる。

 大統領からテロ対策責任者に任命されていた司法長官にFBI長官代行は、2001年の夏の間に見つかった多くの危険信号に留意するよう何度も求めていた。

 司法長官が見たくないと言った報告書の中には、ビンラディンが合衆国中の民間航空学校で部下を訓練させている可能性について早急に調査が必要であるとする現地部門からの警告もあった。

 また、CIA長官は(テロの)警戒システム全体が「真っ赤に点滅していた」と書き、2001年の6月と7月に、この警告をコンドリーザ・ライス国家安全保障担当補佐官に必死に伝えようとしたが無視されたという。

 大統領自身が受け取ったCIA報告書の紙面には、8年間の大統領日例指示のうちで最も強い警告の鋭い見出し「ビンラディン、米国内攻撃を決断」というのがあったとも書かれていた。

 9.11テロが起きた時、ブッシュ大統領はフロリダで小学校の授業を参観している。事件を知らされた大統領は即座に反応することもなく、暫くの間授業参観を続けていたと別の資料には書かれている。

 頻繁な事前の情報や事件発生直後の大統領の反応などからは、仕組まれた9.11と言えるかもしれない。

 事件後、大統領は「本日21世紀の真珠湾攻撃が発生した」と語ったとされる。後に、特攻という言葉も行き交うが、真珠湾→日本軍→特攻、の連想からであったのかもしれない。

 筆者は事案の情報を得た直後のブッシュ氏の対応が、ルーズヴェルト元大統領が真珠湾奇襲の情報を得たときの暫時の対応に非常に類似していると感じた。そして「21世紀の真珠湾」で、一層その感を強くしたことを思い出す。

 ニクソン氏が言う権謀術数や多くの人間を殺し、傷つけ、不具にしても、目的が立派に手段を正当化した類ではないだろうか。

国家間の壮絶なる騙し合い

 マイケル・ピルズベリー氏は米国の情報機関に長くいて、中国との接触も多く持った人物である。

 彼は『100年戦争』で、米国は中国を支援すれば、西欧諸国と同じような価値観を持つ国になるだろうと思って長年支援してきたが、そうはならないことが分かり、米国の支援は間違っていたと気づいたと述べている。

 そのピルズベリー氏から聞いた話として島田洋一福井県立大学教授は「アメリカはこの何十年間、日本よりはるかに多くの秘密情報を中国に与えてきた。アフガニスタン・ゲリラに武器と情報を与え、ソ連の発電所を攻撃させるなど国際法違反の工作活動も行った。日本はきれい事しかしないから、きれい事以外の話しはできない(「金正恩 5つの運命 徹底シミュレーション」、『正論』2017年7月号所収)」などを明かしている。

 そのうえで、「北朝鮮のような相手には、体制を不安定化させる工作や核ミサイル無力化を目指したサイバー攻撃などを日常的、波状的に行わねばならない。それは専守防衛に反するなどと間の抜けたことを言っているようでは、国の存続は得られません」と語る。

 これを受けて、対談相手の久保田るり子産経新聞編集委員は「日本は憲法9条を改正して、陸海空軍を持って、きちんとした防衛体制を作らなければ、いかに危険な情勢にあるか。いかに恐ろしく危険な安全保障環境にわれわれは直面しているのか知る必要があります」と語っている。

 正しく正論であるが、陸海空軍どころか、「自衛隊」を憲法に書き込むだけでも、「戦力」(=軍隊)との兼ね合いが絡んで一歩も進まない危機的様相である。

 評論家の江崎道郎氏は「警戒すべき第2のニクソンショック」(同上誌)で、オバマ民主党政権時代、米中結託が進んでいた。そうした中で、尖閣諸島周辺での海保巡視船への中国漁船の追突事案が起き、中国政府の強硬な抗議で釈放した。

 この事件直後、米国の軍関係者が来日して話したことは、日本政府の対応に失望し「自国の領土を守るつもりがないのなら、中国の属国になったらよい」と非難し、「そうした議論が中国とアメリカの国務省の間で話されている」と語ったという。

 「どういうことか」と聞くと、「コンドミニアムを知っているか」と聞かれ、コンドミニアムとは共用宿泊所のことで「日本を米中両国で搾取しよう」という隠語だと説明されたという。

 そして、「それが嫌なら尖閣諸島を含む自分の領土と国益を死に物狂いで守るよう努力すべきだ。中国からちょっと批判されたからと言って領海侵犯した犯罪者を釈放するような国は独立国家とは呼べない」と、突き放した口調で反論されたと述べている。

 また、「『強い日本』派のロナルド・レーガン共和党政権時代に、米中『秘密』軍事同盟へと発展してい」ったとも述べている。

 ソ連の「SS-20」への対処で「レーガン大統領は日米『軍事』同盟強化で対応しようとした」が、鈴木善幸首相は狷米同盟に軍事的側面はない″と「日米同盟強化を否定してしまう」。

 次の中曽根康弘政権は「日米は運命共同体」と発言し、ロン・ヤス関係で親密ぶりを見せたが、「『GDP(国内総生産)比1%枠の撤廃』を叫んだだけで防衛費もほとんど増やさなかった。このため、日本のやる気のなさに落胆したレーガン政権は対外的には日米友好をアピールしつつも、その裏では中国との関係強化に傾斜していった」という。

 前出のピルズベリー氏も「米中の秘密協力はレーガン政権時にピークに達した。ニクソンとフォードはソ連の情報を中国へ提供した。(中略)だが、秘密裏にではあるが、中国を戦略上の対等なパートナーとして遇したのはレーガンだった。米中が協力した3つの主な作戦はアフガニスタン、カンボジア、アンゴラにおける反ソ勢力への秘密支援だった」と述べている。

おわりに

 国際社会では、敵対しているようで机の下では手を結ぶことはよくある。南シナ海でも、米国は公海の自由航行作戦をなぜ頻繁にしないのかと日本は口角泡を飛ばしたいくらいであるが、いわく言い難い事情が関係国にはあるということだ。

 そうしたことからすると、米中や米朝がいつ何時、手を結ばないとも限らない。トランプ大統領は「米国は100%日本と共にある」と言うが、国際政治で油断は禁物である。

 北朝鮮の核搭載ICBMが米国を射程内に収める問題は、米国にとってはゆるがせにできない大きな懸案に違いない。それを話し合いで解決する方向へ持っていくかもしれない文在寅政権は目に入れても痛くない存在になるかもしれない。

 また、北朝鮮の生殺与奪権を持つとされる中国は、米国にとっては何かと頼りになるカードとなるかもしれない。こうしたことから、北朝鮮問題に関しては米中韓の連携がどんどん進み、日本は蚊帳の外に置かれて事態が進むかもしれない。

 「アメリカ・ファースト」のトランプ政権がまずは米国の安全確保ということで、米国領土に到達する核弾頭とICBMの破棄だけで合意されてはたまらない。

 日本へ到達する中・短距離弾道弾や生物・化学兵器が残留しては日本の安全が保障されない。

 米国の核抑止が機能しなくなる分、余計に脅威は増大する。日本には千人未満ともみられる拉致被害者もいる。トランプ大統領の「100%」が、こうしたことまで含んでいるか否かは定かでない。

 新聞やテレビは森友・加計学園にかかわる問題を政局絡みで面白おかしく報道(もちろん重要ではあるが)するだけでなく、日本自体の存続や安全保障に関わる国際問題にこそ重点を置いてほしいと願わずにはおれない。

筆者:森 清勇