鳥貴族の店舗(「wikipedia」より)

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 鳥貴族は、値上げによって客離れが起きている。

 1989年に全品均一価格を250円(税別、以下同)から280円に引き上げて以降、長い間価格を据え置いてきた鳥貴族だが、昨年10月に6%超の値上がり率となる298円へ値上げを実施した。実に28年ぶりの値上げで、世間を大いに驚かせた。

 値上げで利益率は高まった。値上げの影響が色濃く反映されている2017年8月〜18年1月期の売上総利益率は69.1%で、値上げの影響が少なかった17年8〜10月期と比べて0.5ポイント上昇した。前年同期との比較では1.2ポイントも高まっている。利益率の面では値上げが功を奏しているといえるだろう。

 しかし、値上げで客離れが起きた。値上げを始めた17年10月の既存店客数は前年同月と比べて7.0%減少。11月こそ0.5%増えたものの、12月は2.1%減、18年1月は6.2%減となっている。さらに2月は8.0%も減った。

 17年10月は週末に2度台風が直撃し、18年1月と2月は大雪や寒波に見舞われるなど悪天候が続いたため、ある程度の減少は致し方ないが、他の外食企業の状況に鑑みると、鳥貴族は悪天候という要因だけでは説明がつかないレベルで落ち込んでいる。やはり、値上げで相当程度の客離れが起きたとみるべきだろう。

 既存店売上高の減少も見逃せない。17年8月〜18年2月は値上げで客単価が1.6%増加したものの客数の減少を補いきれず、売上高は0.1%の減少となった。17年7月期の売上高は0.4%増、16年7月期が7.6%増、15年7月期が7.9%増だったことを考えると、1店1店の収益力が明らかに落ちている。

 鳥貴族は消費者の食の安心・安全に対する意識の高まりに対応するため、14年から食材の国産比率の向上に取り組んできた。16年10月からはフードメニューで使用する食材のすべてを国産に切り替えている。

 これにより商品の品質は高まった。しかしその一方で、仕入れコストの上昇を招くことになった。そうしたなか、天候不順により国産食材の仕入れ価格が高騰したため、より一層のコスト上昇を招いたと鳥貴族は説明している。

 さらに、17年6月から施行された改正酒税法により、酒類の仕入れコストの上昇圧力にさらされることになった。同業他社でも値上げに踏み切ったところも少なくなく、たとえば日高屋は生ビールを20円引き上げて330円にするなど酒類を中心に値上げを実施している。

 また、人件費の上昇も続いている。17年10月に最低賃金が引き上げられたこともありアルバイトの時給が上昇し、人件費を押し上げている。

●利益率は改善したが客離れが続き株価は停滞

 こういった状況から、内部努力だけではコスト上昇分を吸収できないとし、鳥貴族はついに値上げに踏み切ることとなった。値上げは、株式市場では当初、好感された。利益率が高まることを期待して、値上げの発表があった17年8月28日の終値は前週比末8.2%高の2815円まで上昇した。

 その後は上昇基調が続き、19.7%の増収だった17年7月期決算が発表された翌9月14日は前日比14.9%高の3075円まで上昇し、3000円を超えた。

 しかし、値上げを実施した最初の月である10月の既存店客数が前年同月比7%減、既存店売上高が3.8%減となったことが発表された翌11月8日は前日比7.4%安の2911円となり、3000円を割ることになった。

 その後は3000円近辺をさまよう状況が続いたが、11月の月次報告書が報告されて流れが変わった。客数が0.5%増、売上高が5.3%増という結果が示され、値上げによる客離れが起きなかったことを市場は好感。発表の翌12月7日は前日比6.2%高の3255円に上昇した。

 さらに、16.2%の増収だった17年8〜10月期決算が発表された週明け12月11日は前週末比10.1%高の3540円にまで急騰。その後も上昇が続き、12月25日には年初来高値となる3965円を付けた。

 ところが、客数が2.1%減だった12月の結果が報告された翌18年1月10日は前日比6.3%安の3650円にまで下げた。その後の株価は下落が続き、2月と3月は再び3000円近辺で膠着状態が続いている。

 前述した通り、1月と2月は客数が大きく落ち込んでいる。売上高も前年割れだ。そのため、積極的な買いに走れない状況のようだ。

 こうした株価の動きから、投資家は値上げによる収益改善と新規出店による成長を期待する一方、値上げによる客離れを懸念しているように見える。値上げの判断が正しかったかどうかを見極めようとしているのだろう。

 値上げの是非が気になるところだが、競合との競争の行方も気になる。鳥貴族の成功を見て、鳥料理居酒屋が増えているためだ。

 ワタミは不振が続いていた総合居酒屋「和民」を、焼き鳥が主力の「三代目鳥メロ」や、から揚げが主力の「ミライザカ」に転換したところ、売り上げが上がっている。

「白木屋」を運営するモンテローザは16年7月に「豊後高田どり酒場」の1号店をオープンし、全国に約50店を展開している。「塚田農場」を運営するエー・ピーカンパニーは同年10月に「やきとりスタンダード」をオープンし、すでに全国に8店を展開している。同社は今年3月22日に新業態「焼鳥つかだ」もオープンする計画だ。

 昔からある焼き鳥居酒屋との競争も激化するだろう。「やきとり大吉」は全国に400店以上、「秋吉」は100店以上、「とり鉄」は50店以上を展開している。鳥貴族は600店以上を展開しているが、ゆったりと構えてはいられないだろう。

 鳥貴族が値上げしたことで、こういったライバル店に客が流れた側面も否定できない。今後の勢力図が大きく変わることも考えられる。いずれにしても、鳥貴族はより一層の企業努力で客離れを食い止める必要があるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)