いきなり!ステーキの店舗(「wikipedia」より)

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「いきなり!ステーキ」は2017年2月に米国に進出。急ピッチで店舗数を拡大中で、年内にニューヨーク中心部マンハッタンで計11店舗を開店させる予定だ。

「いきなり!ステーキ」を運営するペッパーフードサービスの業績は絶好調だ。17年12月期の連結売上高は前期比62.2%増の362億円、本業の儲けを示す営業利益は同2.4倍の22.9億円、純利益は同2.3倍の13.3億円と大幅な増収増益だった。17年5月に東証マザーズから東証2部に市場を変更し、同年8月には東証1部にスピード昇格を果たした。

 18年12月期の売上高は前期比73.7%増の629億円、営業利益は同75.5%増の40.3億円、純利益は同88.5%増の25.1億円を見込んでいる。

「いきなり!ステーキ」は13年12月、銀座に1号店を出店した。立ち食い形式のステーキを量り売りで提供することをコンセプトにした業態だ。立ち食いステーキとして評判になり、17年12月期の既存店売上高は前期比23.1%増、客数も23.9%増の高い伸びを記録した。

「いきなり!ステーキ」事業の17年12月期の売り上げは前期比1.9倍の270億円、営業利益は同3倍増の25.1億円。売り上げは全社の74.5%を占め、営業利益は全社のそれを上回るドル箱に育った。「いきなり!ステーキ」の利益でペッパーフードサービスは回っているということだ。

 出店のアクセルを踏み込んでいる。17年12月末の「いきなり!ステーキ」の国内店舗数は186店。18年同期には前期比2.8倍となる200店の出店を計画している。内訳は、直営店が80店、FC(フランチャイズチェーン)120店だ。

 18年12月期の同事業の売上高は前期比1.9倍の536億円、営業利益は同1.8倍の46.2億円を見込む。売上高は全社の85.2%、営業利益は全社の営業利益を上回るパターンが続く。

 ラーメンチェーン大手の幸楽苑ホールディングスは、一部のラーメン店を「いきなり!ステーキ」のFC店に転換する。17年12月、福島市で開いた転換1号店を手始めに、18年3月期は6店、19年3月期は10店をラーメン店からステーキ店に転換する。

 また、北関東が地盤の居酒屋・レストランチェーン、ホリイフードサービスは、不採算店を「いきなり!ステーキ」にシフトしている。17年10月に1号店をオープンした。

 外食大手がFC店形式で参入を希望していることが、「いきなり!ステーキ」FC店急増の裏付けとなっている。

 好業績を背景に、ペッパーフードサービスは従業員に対して手厚い報酬で報いる。18年12月期には正社員430人を対象に基本給のベースアップ(ベア)と定期昇給を含め、平均で6.4%の賃上げを実施する。ベア相当分は2万2000円で、上げ幅は過去最高となる。人手不足が深刻化するなか、優秀な人材を確保する狙いがある。

 立ち食いステーキという新業態に転換して大成功を収めたかたちだが、急成長に人材教育は追いついていけるのか。

●強姦拉致事件のペッパーランチ

 創業者は一瀬邦夫氏で、1970年に東京・赤坂の山王ホテルのコックから独立して、向島にステーキハウス「キッチンくに」を開業したのが始まり。85年に法人化して株式会社ペッパーフードサービスを設立した。

 1994年からステーキを中心としたレストラン「ペッパーランチ」のフランチャイズチェーンの展開を始めた。だが、2000年代後半から事件が相次いだ。

 07年5月、「ペッパーランチ心斎橋店」(大阪市)の店長と店員が、店内に女性客が1人になったところで店のシャッターを閉め、用意していたスタンガンで女性客を脅かし、睡眠薬を飲ませて眠らせて拉致し、大阪府泉佐野市に用意していた車庫へ連れて行って監禁し、性的暴行を加える強姦拉致事件が起こった。店長と店員は逮捕され、心斎橋店は閉鎖した。

 09年9月には、山口県防府市の山陽自動車道のサービスエリアにある「ペッパーランチ」店舗で、角切りステーキを食べた4人が病原性大腸菌O-157による食中毒を起こした。同店は閉鎖。感染者が全国的に広がったことから客足が遠のき、店舗を縮小するなど業績が悪化した。ペッパーフードサービスは監査法人から、倒産のリスクが高い“黄信号”を意味するゴーイングコンサーンが付けられたこともある。

 だが、塊肉をカットして提供するワイルドステーキの導入により、業績は徐々に回復。12年11月から18年1月まで63カ月連続で既存店の対前年売り上げがプラスとなった。これでコンビニエンスストア大手のセブン-イレブンが持つ62カ月連続の記録を抜いた。

 5年前は、1店舗1カ月当たりの平均売上高は450万円だったが、現在は770万円に上昇している。ペッパーランチ事業の17年12月期の売上高は前期比19.4%増の70億円、営業利益は同21.1%増の13.2億円と持ち直した。

 この間にステーキのファストフードのペッパーランチから、「いきなり!ステーキ」に主力を転換した。急成長を遂げるペッパーフードサービスの不安は、マネジメントがついていけるかという点にある。人材の教育が疎かになれば、ペッパーランチの二の舞いとなりかねない。

●株価は冴えず

 急成長しているペッパーフードサービスだが、株価は冴えない。昨年10月30日に8230円の高値をつけたが、3月14日の終値は4740円。

 株価は、半年先の業績を先取りするといわれている。つまり、株式市場(マーケット)は、今年後半には「いきなり!ステーキ」の快進撃は止まると読んでいる可能性がある。そうだとすれば株価4000円割れもあり得る。

 余談だが、中古厨房機器のリサイクル販売のテンポスホールディングス(旧テンポスバスターズ)というジャスダック上場企業が、子会社「あさくま」でステーキ&ハンバーグレストランを展開している。そのあさくまが今年1月、ステーキを量り売りする新業態「やっぱりあさくま」を始めた。「いきなり!ステーキ」の“完全コピー版”といわれており、ペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長が「あまりにも似ている」と電話で抗議したと報じられている。だが、飲食店チェーンの模倣は日常茶飯事だ。一瀬社長は「出店をさらに強化し、他社の追随を許さないレベルにする」と宣言したと伝えられている。
(文=編集部)