林野 宏●1942年、京都府生まれ。埼玉大学文理学部を卒業後、西武百貨店(現そごう・西武)入社。82年、西武クレジット(現クレディセゾン)に転籍し、2000年6月より代表取締役社長に就任。

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仕事や私生活での「モヤモヤ」を、識者が解決する「プレジデントウーマン」の好評連載。今回の回答者はクレディセゾン代表取締役社長の林野宏さんです。

【今回のご相談】
中途採用で40代半ばのAさん(男性)が配属されました。係長以外は全員女性で、主任の私を含め30代以下です。そのせいか、Aさんは仕事がわからなくても聞いてこず、進行に支障がでそうになることも。「プライドがあって聞きにくいんだろう」と課長に言われ、私から声をかけているのですが、「大丈夫です」と言われるだけ。どうすればよいでしょうか?[36歳・医療・サラ]

■ある日、突然「女性職場」に40代男性が配属されて

新しい人を採用したら、共有すべき最低限の情報を文書化しておくのが一般的だと思います。Aさんには、仕事のやり方や手順を書いたマニュアルを渡していないのでしょうか? 「わからないなら、聞いてくれればいいのに」と、あなたは思うかもしれませんが、Aさんがそうしない(あるいはできない)理由を想像してみましょう。

40代半ばで、経験がまったく通用しない職場に来て、親しい同僚は一人もいない。上司は10歳も年下の女性で、同僚も女性ばかり。そんな環境にほうりこまれたら、心を閉ざしても無理はないと思いませんか。

課長が言うように、Aさんにはプライドがあって、年下の女性に「わからない」とは聞けないのでしょう。年功序列、男性優位の会社にいた人なら、なおさらです。

しかし、Aさんが孤立している限り、あなたや同僚が仕事をカバーしなければならない。なんらかの工夫をして、Aさんの心を開いていくのがよいでしょうね。

たとえば、仕事以外の話をして、Aさんの人柄を知る機会をつくることです。趣味や好物の話をするだけでも、人の気持ちはほぐれるものです。飲み会でもランチでも仕事中の雑談でもかまいません。

たった一度で劇的に変わることはないでしょうが、あなたが気をつかっていることは伝わります。Aさんとコミュニケーションが取れるようになれば、会社のためにもなるし、あなた自身の成長にもなる。

■「おじさん攻略」は本当のダイバーシティーへの道

考えようによっては、これは大きなチャンスですよ。実はいま、あなたが困っていることは、近い将来、日本中の企業が向き合わざるをえなくなる「普遍的な問題」です。

日本はこれから少子高齢化が進み、働き手がますます不足します。そうなれば中途採用者が増え、40代どころか、定年退職したシニアが部下になるかもしれない。移民を大量に受け入れることになれば、日本語が通じない人と一緒に働く可能性もある。巷(ちまた)でいわれているような「女性活躍だけ」のダイバーシティーではない、「真のダイバーシティー」に挑戦せざるをえなくなる。

そんな未来はすぐそこまで来ているんです。その未来を迎えたとき、いま苦労されているあなたは、普遍的問題にいち早く取り組んだ「先駆者」になれます。これは天命なんだと考えて、Aさんと向き合ってみてください。うまくいってもいかなくても、その経験はきっとあなたのキャリアに役立つはずですよ。

(クレディセゾン社長 林野 宏 構成=中津川詔子 撮影=遠藤素子)