ジェネリック医薬品は後発医薬品とも呼ばれます。以前の「お薬診断」で述べた通り、どのジェネリックも安全性においては厚生労働省の承認を経ています。ただし、薬の効き目の幅(先発品に比べてプラスマイナス20%は許容範囲)、添加物の違いなどから、安全性について一概には言えないこともで述べました。

大手メーカーのジェネリックは安心なの?

先発品はジェネリックが販売されるまでの間にたくさん生産され、たくさん飲まれてきた薬です。何か問題点があれば、すでに指摘され、修正されている可能性が高いでしょう。その意味で、先発品のもつ安心感、安全性は実績をともなっているといえます。

では、どのジェネリックを選べばいいか。薬と人にも相性というものがあるので、これも一概には言えません。ジェネリックメーカーの中にも大手があり、大手であれば、それだけたくさん量産しているので品質についてもその分、担保されていると言えるでしょう。

AG=オーソドライズド・ジェネリックとは?

先発品と効き目も添加物もまったく同じジェネリックもあります。オーソドライズド・ジェネリック、略してAGと呼ばれるものです。なぜまったく同じなのかというと、先発品の製薬メーカーの関連会社(子会社)が製造しているからです。

製薬会社が新しい薬を開発するのに数百億円かかると言われています。開発後、特許期間中は独占的に販売できるのですが、特許が切れれば、低価格のジェネリックがドッと発売され、先発品メーカーにとっては売り上げが大きく下がるわけです。

といって、先発品はいわばブランド品。なかなか価格を下げるわけにもいきません。そこでジェネリック用の関連会社というわけです。

ジェネリックだから低価格だけど先発品とまったく同じ薬を使いたい、という場合は薬局で「AG(エージー)はありますか?」と訊ねてみるといいでしょう。ただし、AGは先発品よりは低価格ですが他のジェネリックよりも少し高めです。

安い薬だからずっと飲める?

さて、いろいろジェネリックについてお話してきましたが、基本的にジェネリックは長期間にわたる服用が必要な薬において、その威力を発揮します。

かぜ薬であれば3〜4日飲めば治りますよね。そういう短期間の薬にジェネリックを使ったところで、薬代は先発品とそれほど大きくは変わりません。

薬代に大きな差が出るのは血圧を下げる薬、コレステロール値を下げる薬など、生活習慣病に関わる薬です。これらはいったん飲み出すと長い期間、服用しなければならなくなります。「一生のおつきあい」と言われる薬もあります。家計を考えればジェネリック、という流れになるわけです。

高齢化にともない医薬品代が増え続け、財政を圧迫するとして、国はジェネリック医薬品を推奨しています。ジェネリックの使用量を処方薬の7割まで引き上げることを目標にしています。ジェネリックの使用量を増やして、医療費を引き下げようというわけです。

ただし、いくら安価になっても薬は薬です。「ジェネリックで安くなったから薬を飲もう」は筋違いです。安くても、薬はなるべく飲まないに越したことはありません。ジェネリック=安心ではありません。薬の正しい知識を身につけて、処方箋を見るときの参考にしていただければと思います。

ジェネリックはたしかに安価。でも安いからといって飲みつづけるものではありません。



■賢人のまとめ
先発医薬品のメーカー自身が、関連会社でジェネリックをつくることもあります。これがAG(オーソドライズド・ジェネリック)です。ただ、ジェネリックはいくら安くても薬です。「安いからずっと飲める!」は筋違いです。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)など。