号外だ! 号外だ! ロボットがやって来る!

ロイター(Reuters)ではいま、20名以上のジャーナリストが、「リンクス・インサイト(Lynx Insight)」という名のツールをテストしている。このツールを使えば、企業の収益報告に関する記事の3分の2を自動で執筆できる。とはいえ、少なくとも現時点では、ジャーナリストに完全に取って代わるロボットは登場していない。

リンクスは、データに何らかの傾向や異常を見つけると、メール、メッセンジャーサービス、あるいは記者のデータ端末を介して、記者にそのことを通知する。また、記者がこのツールに企業名や検索語を入力すると、さらに詳しい知見を提供する。いまのところ、このツールの主な対象はマーケットデータだが、ゆくゆくはほかの分野にも展開する予定だという。

「リンクス」活用の狙い



「重要なことは、深く掘り下げた記事をマシンに書かせることではなく、機械の強みと人間の強みを組み合わせることだというのが我々の考えだ」と、ロイターで編集業務、データ、およびイノベーション担当エグゼクティブエディターを務めるレグ・チュア氏はいう。「マシンは、休むことなくデータを調査して、パターンを検出する。判断を下し、コンテキストを提供し、データを抜粋するのは人間だ」。

チュア氏によると、ロイターでは、このプラットフォームの調整、データの分析、言語認識能力の強化にかかわる技術スタッフとして、さらに十数名を配置しているという。

ロイターは2500名の記者を抱えている。その全員にリンクス・インサイトの利用を義務付ける予定はないが、いまの導入規模でも、記事を書く時間を節約することの効果が現れるだろう。このツールの目的は、通常なら見つけ出すのに時間がかかる知見を得られるようにし、同時に正確性と効率性を高めることにある。

編集作業自動化の現状



AP通信(Associated Press)も、自動化によって記者が企業収益の報道に費やしていた時間を20%削減したと述べている。ロイターが200人近いパブリッシャー幹部を含むデジタル分野のリーダーを対象に行っている年次調査によれば、回答者の91%が2018年のもっとも重要かつ緊急の課題として、生産効率の向上を挙げた。一方、ワシントン・ポスト(The Washington Post)にように、自前の人工知能(AI)テクノロジーを活用することによって、新しいオーディエンスを発見できたというニュースパブリッシャーもある。

だが、編集作業の自動化の影響を測定することは困難だ。そのため、ロイターは将来、フィードバックループを構築することで、記者がどのような知見を活用したのかを把握し、ツールの価値を高められるようにする計画だという。

「当社では、記事の量を成功の指標にはしていない」と、チュア氏はいう。「見逃した可能性がある情報をすぐに教えてくれる機能は、すでに役立っている。我々はスピード競争のさなかにあり、企業の決算結果や経済指標を確実にモニターできるようにしているのだ」。

新たなビジネスモデル



リンクス・インサイトを使って、ほかのニュースパブリッシャーに販売できるような製品を開発すれば、金銭的メリットももたらされる。たとえば、英国のマンチェスターでサッカーニュースを毎週配信している平均的なニュースパブリッシャーが、マンチェスター・ユナイテッドに関する記事を常に他社より早く報じられるようになるとチュア氏はいう。

「ロイターは、報道が早いことで知られている」と、AIプラットフォームを手がけるストーリーストリーム(StoryStream)で最高科学責任者を務めるジャネット・バスティマン博士はいう。「一番に報じることを目指した競争が起こっているなかでは、記事をより早く見つけることがますます重要になるだろう。お金を払ってくれるクライアントのためにその機能をカスタマイズできるようにすることが、今後は間違いなく重要になる」。

「マシンはトレーニングした分だけ賢くなる。フィードバックループを導入すれば、機能が向上するだろう」と彼女は付け加えた。「ただし、慎重なテストを何度も行って、バイアスを確実になくす必要がある」。

さらに先を目指すロイター



ロイターには、「ロイター・ニュース・トラッカー(Reuters News Tracer)」というツールもある。これを使えば、Twitter上でコンテンツを探し、そのコンテンツが真実である可能性を数値で把握できるため、速報ニュースを他社より早く報じられるようになる。このツールのおかげで、すでに50を超える重要なニュースをほかの企業に先んじて報じることに成功しており、記者たちは記事を8分〜60分速く完成できるようになったとロイターは述べている。

リンクス・インサイトの利用を多忙な記者に促すには、できるだけ簡単に使えるようにする必要がある。「電話で使い方を説明しなければならないようにはしたくない」とチュア氏はいう。「長期的にツールとの対立が起こらないようにするには、記者がマイクロソフト(Microsoft)の企業記事を書いているといったことを、ツールが認識できるようにする必要がある」とチュア氏は語った。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)