米テレビ局ターナー(Turner)のCEO、ジョン・マーティン氏は、レガシーメディアだった同テレビ局を率いて、複数プラットフォームを舞台にしたメディアビジネスを展開している。

米DIGIDAYは、ターナー氏に同社のこのメディアビジネスと、メディアのなかで起きつつある結束、テック大手とのあいだで生じつつあるライバル関係、そしてテレビのストリーミングサービスについて聞いた。

以下がその会話を端的にまとめたものだ。

――現在のターナーにとって、最大の脅威は何か?



当社にとって一番の困難は、消費者にとって時間やエネルギー、そして金を費やす対象が増えつつあるなかで、有力な選択肢のひとつであり続けることだ。ありがたいことに、当社はいまでもブランド価値が高く、企業規模も大きい。だが、当社はもっと俯瞰的な視点でブランドを見なければならない。広告収益で成り立つ、ケーブルテレビとしてだけではなくね。

――CNNは新しいプラットフォームで事業を拡大することに熱心だが、それによる影響は?



従来とは異なるプラットフォームへと踏み出したことで、あらゆる年齢層が見るブランドとなった。アメリカ国内のテレビ視聴者の平均年齢は、たとえばCNNでは低くなってはいるものの、50代となっている。ちなみにこれはFOXニュース(Fox News)より10から15歳若い。そしてCNN.comは、40代前半となっている。CNNのiPhoneアプリでは30代前半から中盤で、CNNがFacebookやSnapchatとパートナーシップを結んだもののなかには20代前半から中盤のケースもある。

こうした展開によって、もはや単なるテレビのチャンネルではなく、あらゆるところに存在するブランド環境と呼ぶべきものへと変化を遂げた。だがCNNのなかですら、いまだに「これはCNNで、これはCNNデジタル(CNN Digital)」という会話が交わされている。(CNNのプレジデントの)ジェフ(・ザッカー氏)といつも話しているのは、こうした区別がなくなる日が待ち遠しいということだ。両者に隔たりなどないのだから。

――まだ、そういった日が訪れていないのは、なぜか?



組織的なものが原因だ。私がはじめてターナーに来たとき、CNNのライブテレビ組織と、エディトリアルやビデオオンデマンドの組織はそれぞれ別のビルに位置していた。いまではジェフのリーダーシップのおかげで、両組織は同じ建物にあるだけではなく、同じ階に移った。自分たちがテレビネットワーク企業ではなくコンテンツ企業であると捉え、当社のブランドを好きでいてくれる人にリーチしようとするには、企業文化の変化が必要で時間がかかる。

――デジタルパブリッシャーの多くは、FacebookやGoogleが自分たちの存在をおびやかす脅威だと考えているが、同じ考えか?



ちょうど今朝、インスタグラム(Instagram)における当社のプレゼンスについて話したところだ。当社のインスタグラム上の活動で、マーケティングと、収益を上げるための本当の事業はそれぞれどれくらいなのか? とね。実際のところ、多くの点から、こうした代替となりうるプラットフォームでの両者の割合はおよそ半々だ。

GoogleやFacebook、Snapchatがパートナーでもありライバルでもあるとしよう。当社はこうしたプラットフォームとパートナーでありたいと思う。だがそれと同時に、やはり収益もあげなければならない。そして当社はブレイクスルーを果たしつつある。こうした代替となりうるプラットフォームと、当社のコンテンツへの支払いについて話し合いをはじめている。

――支払う気のないプラットフォームからは、撤退することを考えている?



影響力とは移り変わっていくものだ。こうしたプラットフォームと、支払いを受けるための話し合いを持つためには、ブランドとしての強さが求められる。ブランドとしての価値が低ければ、暗礁に乗り上げるだろう。

――GoogleやFacebookは、ターナーの将来を脅かす存在ではない?



当社は、GoogleやFacebookを脅威とはみなしていない。だが、両社に注意する必要はある。それはAppleやAmazonについても同じだ。以前は当社の最大のライバルはディズニー(Disney)、FOX、NBC、CBSといったテレビネットワークだったが、またたく間に彼らのような「デジタル企業」が取って代わった。

デジタル企業はいまやデジタル広告収益全体の3分の2をあげているだけではなく、デジタル広告収益の付加成長の85%を占めている。当社は、デジタル企業からパートナーを組みたいと話をもちかけてくるような規模で事業を行っている。

――デジタル企業は、テレビと将来的に競合するのでは?



長期番組や短期番組、プロが製作した番組にデジタル企業が参入して成功するだろうと予測する人は数え切れないほどいるが、簡単ではないと思う。

――まさにいま、Facebookが取り組んでいることだ



Appleも取り組んでいる。両社とも世界トップクラスのメンバーを雇ってテレビ事業を成功させようとしているが、多くの面で、いまでも世間では、両社は利便性を提供する企業だという認識が大半だろう。そして、検索履歴やショッピングカートに感情的なつながりを感じる人はいないように思われる。実際は、私たちが行っているようなストーリテリングを真似するのは非常に難しいんだ。

――AT&T、タイム・ワーナー、ディズニー、FOXのあいだで、超巨大なメディア統合体ができあがりつつある。これはテック大手の拡大に対抗するという意味も含まれていると思うが、なぜ統合なのだろうか?



これは関連性のための統合だ。当社がAT&Tと統合するのは、技術やデータ、消費者との関係性のためだ。モバイルコンテンツの需要は今後さらに高まるだろう。そんななか、AT&Tのモバイルコンテンツにおける数千万というカスタマーとの関係性を活かせば、非常に有利なスタートを切れる。

――ディズニーは消費者に直接届ける形の商品をいま以上に生みだすため、さらに拡大するべきだと主張しているが、拡大の重要性についてどう思う?



直販形式の事業開発についてはかなりの一致を見ている戦略があるが、収支計算が必要となる。現在は広告主や加入者から、年間120億ドル(約1.2兆円)の収益がある。確実にこの収益が続くような、非常に魅力的なものを提供しなければならない。

新事業の開発が必要だ。それも今後ますます求められていくのは、新しいケーブルネットワークではなく、独自に成立する、消費者が料金を支払ってでも見たいと思うような事業だ。従来とは異なる、広告抜きの会員からの収益を増やしていきたい。

――会員サービスがたとえば20種類できたとして、カスタマーは料金を支払うようになるか? それともバンドル形式を目指していくのか?



バンドル形式が現実的な考えだろう。喜ばしいことに、当社のなかにはHBOやワーナー・ブラザース(Warner Bros.)があって、信じられないほど魅力的なコンテンツをいくつも抱えている。たとえば、HBOナウ(HBO Now)とブーメラン(Boomerang)のソフトバンドルというのも突飛なアイデアではない。500万の加入者を抱えているHBOナウが、いきなり驚くような子供向けのプログラムを提供することもありうる。

――テレビのストリーミングバンドルは本物のチャンスなのか? それともケーブルテレビの加入者の減少に対処するための、短期的ですぐにできるバンドエイドのような対策か?



アメリカのvMVPD加入者の総数はおよそ450万人となっている。本物のチャンスと呼べる数字になりつつあると言えるだろう。

――その場合、どういった点に難しさがあるだろうか? ほとんどのサービスが、基盤となるバンドルにどのチャンネルを盛り込むか選り好みをするようになっている。



それは、この国に質の低いネットワークが多すぎるためだ。消費者にとってまったく価値がないのに、巨大バンドルの一部として付属しているネットワークも存在する。こうしたネットワークは、無尽蔵のアフィリエイト報酬が得られて、パイは大きくなり続け、広告を売り続けられると信じられていた時代に生まれた。そんな時代はもはや過去のものだ。

Sahil Patel(原文 / 訳:SI Japan)