印象派の中心として活躍した画家、クロード・モネの作品。(AFLO=写真)

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■かつての貴族社会に「サロン」があった理由

世の中の新しい動きや流行は、小さな濃いコミュニティから生まれてくる。

例えば、絵画の「印象派」は、当時の権威ある展覧会の選から漏れた画家たちが集まって開いた自主展覧会に由来している。科学上の重要な発見であった「量子力学」も、「コペンハーゲン学派」という言葉があるように、少数の科学者の高い密度の共同作業を通して形を整えていった。

最近で言えば、世の中を席巻しつつあるビットコインなどの「仮想通貨」がいい例だろう。原理となるブロックチェーンを初めて記述した「サトシ・ナカモト」は偽名であると言われており、誰が本物かわからない。いずれにせよ、「サトシ・ナカモト」を中心とするグループが数理モデルを整え、プログラムすることで仮想通貨への道が開かれた。

時代の新しい風は、かつての貴族社会の「サロン」のような趣味、嗜好が同じ仲間から生まれてくる。そのような「サロン」を持つことは、ビジネス、人生に大いに役立つだろう。

今は、ポスト・マスメディアの時代である。テレビや新聞などの旧来のメディアは、ネット発の流行を追いかけることが多い。新しい潮流を早くつかもうとしたらマスメディアだけでは足らず、ネットに情報源を求めなければならない。

そこで私がお勧めするのは、ツイッターやフェイスブックなどのSNSや、ニュースサイトを活用して自分なりの情報源のリストをつくることである。そのことで、最新の情勢が濃縮された形で把握できるし、一種の「サロン」のような擬似空間もできる。

■マスメディアよりはるかに速く、はるかに詳しい

例えば、私は英語のツイッターのいくつかをリスト化して、その最新の動向を探っている。「脳科学」「人工知能」「数学」「科学全般」「時事」といったテーマに関連したツイートをするアカウントが集められている。

これらのアカウントのツイートを見ていれば、それぞれのテーマで何が話題になっているか、どんなことに関心が持たれているかということがほぼわかる。もちろん、これらのアカウントに引っかからない情報もあるだろうけれども、マスメディアに比較すれば遥かに速く、詳しい。

日本語のツイッターも、関心領域によって、いくつかのリストをつくって眺めている。日本国内のさまざまな動向、課題についてのオピニオンがわかって面白い。

加えて、よく閲覧するニュースサイトやブログを加えると、ほぼ、今の私に関心のあるテーマは網羅される。とりわけ、人工知能や仮想通貨など、急速に発展している分野についての情報は、これらのリストなしでは得ることができない。

これらのリストは、同じ関心を持った者どうしが集まるという意味で、「サロン」としても機能している。世の中のマスの動きとは別に、焦点を絞った情報交換をすることで、次の時代への変化の胎動をつくることができるのである。読者の方々にも、ぜひ、このような自分だけのオンライン・サロンをつくることを推奨したい。

最初は、情報を発信しているアカウントを1つでも見つけてリストに入れればいい。次に、そのアカウントがリツイートしたり引用したりするアカウントを把握する。そのように「芋づる式」に増やしていけば、次第に、価値のあるサロンを自分でつくることができるはずだ。

(脳科学者 茂木 健一郎 写真=AFLO)