写真=iStock.com/Steve Debenport

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■就業規則を放置すると、未払い残業代が発生

多様な働き方を促進する動きが広がっている。「週4日勤務」「在宅勤務」「勤務間インターバル制」など、新しい勤務制度を採用する企業も多い。

しかし、就業規則を変更せずに放置している企業もある。特定社会保険労務士の大槻智之氏は次のように語る。

「いま新しい制度を導入する会社は、労務に関して“意識高い系”で、制度導入と同時に就業規則も変更しているでしょう。ただ、法令が整備される前から柔軟な働き方を事実上認めてきた会社の中には、就業規則が手つかずのままのところもある」

就業規則が手つかずのままだと何がいけないのか。佐川急便やファーストリテイリングが導入して注目された「週4日勤務」で考えてみよう。

■毎日2時間分は割増賃金が発生

週4日勤務は、従来の週5日勤務の1日分の労働時間を他の4日に振り分ける場合と、単純に勤務日を1日減らして給与も減らす場合がある。前者の場合で、週40時間=1日8時間×5日を1日10時間×4日に変更したとする。

法定労働時間は1日8時間。それを超える時間を所定労働時間にするなら、「変形労働時間制」の導入を就業規則に明記する必要がある。

「明記しなければ、所定労働時間は1日8時間のまま。1日10時間働けば2時間は残業扱いです。1週間の労働時間が同じで配分を変えただけなのに、毎日2時間分は割増賃金が発生します」

■会社側は就業規則を直す必要がある

在宅勤務も要注意だ。始業や就業、休憩時間の確認が難しく、社員の自己申告どおりに賃金を支払うと、実態とかけ離れるケースもある。それを避けるには「事業場外みなし労働時間制」を採用して、在宅勤務日は一定時間働いたとみなす旨を就業規則に書いておくのも1つの手だ。

週4日勤務にしろ在宅勤務にしろ、リスクが表面化するのは社員の退職時だ。

「自分から制度を選んで利用しているときは、文句を言いません。しかし、退職時には豹変して、会社から搾り取れるものは搾り取ろうと就業規則を読み込んでアラを探す社員も中にはいる。あとでつけこまれないように就業規則を鉄壁にしておいたほうがいい」

■実態が伴わない「改革」は危険

また終業後、一定時間を経ないと次の勤務に入れない「勤務間インターバル制」については、別の角度から就業規則の変更が必要だ。就業規則で明確に出社を禁止しておかないと、自主的に出社する社員が出てきて制度が形骸化してしまうからだ。

ただ、就業規則で禁止すれば万事うまくいくと考えるのも危険だ。現場の仕事量が減らないかぎり、やはりこっそり出社する社員は現れる。

「就業規則と実態に差がある場合、困るのは労基署に突っ込まれる会社側です。勤務間インターバル制など長時間労働を是正する制度を導入するときは、業務を見直したり人員を増やすなどして、掛け声倒れに終わらないように工夫をしてください」

(ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=特定社会保険労務士 大槻智之 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)