佐藤みずほFG社長(左)と次期社長の坂井みずほ証券社長

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 「10年後の金融は全く違う形になっているかもしれない」。みずほフィナンシャルグループ(FG)社長の佐藤康博が2017年秋、構造改革を打ち出したのには強い危機意識があった。佐藤の下、構造改革の方向を定めグループ一体の総合力を引き出す足場を築いた同社。改革力と総合力が今後、成長に結び付くか試される。

 17年4月、佐藤は構造改革特別チームを立ち上げた。きっかけは技術の進化だ。世界各地に人脈がある佐藤は、海外でのフィンテック(金融とITの融合)のうねりを肌で感じていた。激変する環境でみずほの将来図を描こうと企画、財務、人事に指示。「調べるほど新技術が収入とコストの両面に大きく影響するのが分かった」(佐藤)という。

 ベンチャーや異業種といった新興勢力の台頭とフィンテックの普及で、旧来の銀行の店舗や人員は減る。「海外ではすでに現実に起きており、日本もそうなる」(同)。

 技術の進化は人手作業を自動化し、業務も一変する。佐藤は「中期計画のように3年で見るには変化が大きすぎる。10年先を見越した改革が必要」と考えた。8万人と500拠点を擁するみずほFG。試算が示した10年先の陣容は「2割の人員と拠点が不要になる」(同)との数字だった。

 大規模な削減案に、社内には動揺が走った。改革の肝は「新たな環境で新たな仕事に挑戦できる教育システムをしっかり作ること。首を切るわけではない。だが仕事は変わる。攻めの改革だ」(同)。

 役員は従業員との対話に奔走、構造改革の本質を説いて回った。その一人である、みずほ銀行頭取の藤原弘治は「徹底した対話で今は真意を相当数が理解してくれている」と話す。

旧習から脱却する
 「リストラではない。みずほが変わるという挑戦であり社員の変革だ。皆変わらなければならない。雇用の不安については心配ない」。

 2026年度までに全従業員の2割強に当たる1万9000人を削減するなど人員スリム化を柱とする構造改革が公になった昨秋、人事グループ長の小嶋修司は店舗訪問や研修の機会を捉え従業員と対話を重ねた。一時社内で動揺が走ったが、「今は相当前向きに受け止めてくれている」と話す。

 ロボット技術などの自動化で業務プロセスを効率化しながら人員をスリム化、同時に後方事務や本部人員を営業などフロント業務にシフト。「人材の再配置が起きる。教育面の支援は当然のこと。今の教育システムをどうスクラップ・アンド・ビルドするかだ」と小嶋。

 デジタルの活用能力を柱とする教育システムを再構築しており来年度から順次導入する計画だ。

 人員スリム化には採用抑制も定石だが小嶋は「30代中盤から40代中盤の人が少なく、年齢構成をゆがめるような極端な採用抑制するつもりはない」と話す。

 不良債権問題が顕在化した90年代後半から00年代前半に採用を減らしたことでいびつになっている年齢構成の適正化にも腐心する。

 構造改革の傍ら昨年度から人事運営改革も進行中だ。最近ではみずほ銀行で30代の最年少の支店長や50代に初就任となる支店長を配置、年次にこだわらない抜てきもした。

 小嶋は「厳しすぎる年次運営や一度失敗すると昇格が取り戻せないといった旧習から脱却する」という。人事からみずほの変革を支える。

もっと「ワンみずほ」
 13年には銀行・信託・証券を一体運営する「ワンみずほ」を打ち出した。「レガシーを取り払うには一つになるしかなかった。(組織としての)ベースを整えるまでが私の仕事だった」と佐藤は振り返る。

 ワンみずほを掲げた背景には「ニーズに寄り添うには銀行、信託、証券の有機的な連携が必要。でなければ発展は望めない」(佐藤)との問題意識もあった。

 長引く低金利で融資事業が先細る中、手数料事業を主とする信託・証券の重要性が増す。

 今では「銀行の支店長が計画数字に届いていなかったら部下に号令をかけるだけでなく同エリアの信託や証券の支店長と一緒にできることはないかと考えるようになった」(同)と手応えを感じる。

 だが「描いていたレベルにはまだ届いていない。もっとできれば収益も上がるはず」(同)。競合と収益で差は縮まっていない。

 佐藤は4月、会長に退く。次期社長(現みずほ証券社長)の坂井辰史は「構造的な問題に取り組まないといけない。ワンみずほを(競合他社に)追随させないほど強化する」と意気込む。佐藤は改革の実行と総合力の発揮を坂井に託す。

(敬称略)