ベンチャーにも食指 将来見据え技術投資
 「(ベンチャー出資の増加は)デンソーなりの危機感の表れ。(18年度は)17年度を上回っていくだろう」(有馬浩二社長)。デンソーはベンチャー企業への出資案件も17年度から急速に増やしている。ベンチャーへの出資は同社の提携戦略のうち、長期的な「将来技術・新たなビジネスモデルの獲得」にあたる。

 同社はベンチャー企業に対し、14―16年度までの3年間は累計27億円、単年度ではせいぜい10億円規模の出資しかしていない。

 17年度は10月時点ですでに50億―60億円規模の出資を実施・検討しており、単年度で3年間の実績を大きく上回る金額を投じるとみられる。“クルマ”の概念が大きく変わろうとしている現在、将来性のある技術への投資は死活問題だからだ。

 ここ1年間で「MaaS(マース)」と呼ばれるクルマを使った移動サービス分野ではフィンランドのマース・グローバル、同分野の米アクティブスケーラーに出資。セキュリティー関連では米デルファーに出資してサイバー攻撃を防御する最新技術の車載応用を進め、スマートフォンをクルマの鍵に用いるスマートキーなどの特許技術を保有する米インフィニットキーを買収した。

 国内でも京都大学発ベンチャーのFLOSFIA(フロスフィア、京都市西京区)に出資し、酸化ガリウム(Ga2O3)製パワー半導体の車載への応用を目指す。

 クリエーションライン(東京都千代田区)はクラウド技術やオープンソースなどの次世代ソフトウエアの開発技術に強い。

 すでにトヨタ自動車は15年に三井住友銀行、スパークス・グループと投資ファンド「未来創生ファンド」を設立。トヨタの米国の人工知能(AI)研究・開発子会社も投資ファンドを17年に設立し、アイシン精機も18年2月に米国で投資ファンドを立ち上げるなど、グループを挙げてベンチャー出資を活発化している。

 トヨタ自動車の豊田章男社長が発言する「生きるか死ぬか」という危機意識は、グループに浸透している。

(文=名古屋・今村博之)