逮捕される李明博元韓国大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

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 韓国元大統領の李明博容疑者が逮捕された。

 3月23日、ソウル中央地方検察庁は収賄や横領などの容疑で李容疑者を逮捕した。大統領在任中に情報機関の国家情報院に働きかけて工作資金「特殊活動費」を大統領府に上納させ、さらにその資金を側近に渡した疑いが持たれている。また、李容疑者が実質的にオーナーを務める自動車部品会社の裁判費用をサムスングループに肩代わりさせた収賄の疑いも浮上しており、検察は収賄の総額を約110億ウォン(約11億円)、横領は約350億ウォンとみているという。

 韓国で大統領経験者が逮捕されるのは、史上4人目だ。記憶に新しいところでは、2017年3月に前大統領の朴槿恵被告が「崔順実ゲート事件」で逮捕され、検察から懲役30年の求刑を受けている。ほかにも、韓国の大統領経験者は軒並み悲惨な末路をたどっており、自殺や死刑判決といったケースもあるほどだ。

 また、家族や側近が逮捕されることも多く、李容疑者も在任中に側近と兄が逮捕されているほか、今年1月には国家情報院をめぐる捜査で側近が相次いで逮捕された。加えていえば、現職の文在寅大統領も2度の逮捕歴があり、いわゆる前科持ちだ。

 しかしながら、約1年の間に2人の元大統領が逮捕されるのは異常事態といっていい。

 なぜ、悲惨な歴史が繰り返されるのか。その背景には、大統領に権力が集中する構図がある。国民に直接選ばれる韓国の大統領は国家元首と行政府の首班を兼ねており、国内的にはアメリカの大統領や日本の首相よりも絶大な権力を持つ。そのため、逆にいえば在任中は権力や縁故を使って家族や側近に利益供与を図ることもできてしまうわけだ。一方で、その座から降りたときが悲惨である。絶大な権力を失うことになるため、政敵や反対勢力などからの政治工作に遭いやすいからだ。

 今回の李容疑者の逮捕についても、文政権の意向が見え隠れするのが実情だ。今、韓国の政界で深まっているのが保守と革新の対立である。17年5月に発足した革新系の文政権は、「積弊清算」を掲げて過去の保守政権の責任追及を始めた。その間、朴被告の勾留期限延長が決まり、前述のように李容疑者の側近、ついには本人が逮捕された。「改革」といえば聞こえはいいが、やっていることは「政治報復」に近い。

●米国の利上げで韓国が金融危機に?

 経済に目を向けると、韓国では金融危機の兆候も出始めている。先日、アメリカ連邦準備制度理事会が3カ月ぶりに金利引き上げを決定したが、その数日前に、韓国経済研究院が「アメリカが年内に利上げに踏み切った場合、第3の金融危機が発生する可能性がある。これを防ぐためには、アメリカおよび日本との通貨スワップが必要」とする報告書を発表しており、アメリカの利上げが韓国経済に及ぼす影響について警鐘を鳴らしていた。

 また、すでに中小企業銀行、韓国産業銀行、韓国輸出入銀行の国有3行の信用が悪化しており、日本のみずほ銀行などの保証枠で信用が担保されている状態だ。

 韓国では17年2月に海運大手の韓進海運が経営破綻したが、この3行は韓進海運をはじめ赤字が続く造船会社や海運会社に多額の貸付を行っており、それらの企業が潰れれば共倒れする構造になっている。そのため、信用状が国際的な債券市場で嫌われているのだ。

 メガバンクのなかで唯一の民間資本であるウリィ銀行も、銀行向けの市場で債権の買い手がつかずに金利が高騰しており、投資家向けの市場に売りに出さざるを得ない状況に追い込まれている。

 そんななか、財閥叩きに精を出す文政権は「若者雇用対策」として中小企業に就職する34歳以下を対象に減税や低金利での融資を行い、実質所得を年間1000万ウォン(約100万円)以上引き上げる政策を発表した。これにより、中小企業と大企業との年収格差を是正するとのことだが、金融危機さえささやかれる状況でバラマキともいえる政策を実行する姿勢には、疑問を抱かざるを得ない。

 5月にも文大統領の初来日が実現する見通しだが、その頃韓国はどうなっているのだろうか。
(文=渡邉哲也/経済評論家)