前原氏が代表をつとめていた時代の民進党の経済政策、「All for All」が復活する!?

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 永田町では今、安倍政権の対抗軸として、かつて民進党が掲げた経済政策「All for All」を打ち出す気運が高まっているという。

 この経済政策は、前原誠司・衆院議員が民進党代表の時にブレーンだった井手英策・慶應義塾大学教授が提唱。「All for All」は前原代表時代の民進党標語となり、党のポスターには「幸福分配政策。All for All みんなの税は、みんなのために。」と大書された。

 その内容は「経済成長は限界に来ているから成長を目指さず、消費税を中心に増税して、その分を再分配にあてる」というもの。換言すれば「日本経済はすでに成長が望めなくなった。そのため、増税による再分配で誰もが受益者になる『All for All』の思想こそが、これからの経済政策の基本になるべきだ」という論だった。井手氏はそれを「『税の再分配』革命」と名づけた。

 評論家の宮崎哲弥氏はこの政策を次のように批判する。

「直接税の累進課税を否定し、またアンダークラスへの金銭給付を否定する『All for all』は階級意識に欠け、フランスのマクロン政権の『平等な』徴兵制と同様、『新自由主義の顔をした全体主義』。リベラルの課題は、かかる保守と戦うとともに、かかる似非リベラルを排除することにあります」

◆神津里季生・連合会長「野党結集の旗印に」

 民進党の希望の党への合流・分裂、希望の党の総選挙惨敗で、前原誠司氏の政治的影響力は凋落、この「井手理論」も風前の灯火だったが、ここに来て盛り返しを見せている。神津里季生・連合会長がこの理論に心酔し、絶賛しているのだ。

 神津会長は『週刊金曜日』2月9日号のインタビューでこう語っている。

「前原さんは辞任することになったけれど、(「オール・フォー・オール」を提言した)井手英策慶應義塾大学の考え方に目をつけたのは慧眼だったと思う。だから、これが頓挫してしまわないように、連合がその考え方を引き取ることも含めて、連合としては『オール・フォー・オール』を大事な概念だと思っています」

「民進と希望はどうなるのか分かりませんが、もともと民進党時代に議論をしてきたことですし、3党ともに『オール・フォー・オール』を引き継いでもらいたいと思っています。野党結集の一つの旗印になるくらいの政策だと思っています。小泉進次郎氏も目をつけているようですから、これまで持っていかれたら大変ですよ」

 と、井手氏の「All for All」を野党の結集軸にするとの考えを示した。

 連合は2月16日、野党の国会議員と政策を議論する「連合フォーラム」の設立総会を東都内で開いた。その際、井手氏は野党3党(立憲民主・希望・民進)の国会議員を前に基調講演を行い、「皆さんにお許しいただけるならば、残された学者生命を皆さんと一緒に燃焼し尽くしたい」と訴えかけた。

 この「井手理論」に野党も乗り気だ。大塚耕平・民進党代表や玉木雄一郎・希望の党代表、福山哲郎・立憲民主党幹事長は井手理論を「高く評価する」と賛辞を惜しまない。

◆「消費税を財源」とする経済政策に野党内で批判も

 その中で、枝野幸男・立憲民主党代表は慎重な姿勢をとっている。

「井手先生のお考えのうち、いわゆる普遍主義については私も時代にかなった方向性だというふうに思っています。ただし、財政規律を現下の状況で強調し過ぎであって、それは今、心理的消費不況であるというのと、需要不足による不況であるという前提を考えると、その時代状況には合っていないということなので、全面的に賛同できるというわけではありません」(3月1日・立憲民主党定例会見での枝野氏の発言)

 さらに、野党の中で表立って「All for All」を批判しているのが自由党だ。山本太郎・自由党共同代表は3月6日の定例会見で次のように批判した。

「概念自体は素晴らしいと思うが、消費税が財源ということ自体が非常に危険だ。ほかにも税の取り道というのはいっぱいある。(中略)財源とすべきものは非常に多様にあるなかで、財源は消費税しかないという考え方のもとでの『All for All』ということになると、逆進性が強い中において、収入が少ない人たちにとっては非常にシンドイ話になっていくだろう」

 そして小沢一郎・自由党共同代表も、3月13日の定例会見で次のように語った。

「井手氏の話は、私も1つの考え方としては賛成だ。ただ、(初めは)地方税の5割アップというのを前提にしていた。それが無理とわかれば消費税に財源を求めている。さらに、財政の健全化、財源論を先に来させている。それでは緊縮財政になってしまい、新自由主義と何ら変わりがない」

 しかし、野党内では自由党は少数勢力。「All for All」は次第に野党に浸透し始めている。はたして、今後はどうなっていくのか? 安倍政権への対抗軸として野党が打ち出す、新たな経済政策の行方が問われている。

<文・写真/及川健二(日仏共同テレビ局France10支局長)>