埼玉県所沢市にある埼玉西武ライオンズの本拠地・メットライフドーム。昨年末から改修が始まっている。すべて完了するのは2021年春の予定(写真:マーボ / PIXTA)

プロ野球が来る3月30日金曜日、開幕する。2017年シーズンはパ・リーグで圧倒的な強さを見せた福岡ソフトバンクホークスが日本一となったが、その背中を追うのが昨季パ・リーグ2位の埼玉西武ライオンズだ。

西武は埼玉県所沢市に本拠地を構えてから今年で40年。節目の年に本拠地・メットライフドームエリアの大規模な改修を進めている。

ドーム改修の「2つの狙い」


改修後のメットライフドームのイメージ(画像:埼玉西武ライオンズ提供)

投資額は球団史上最大規模の180億円を予定しており、親会社の西武ホールディングスにとっても肝いりの事業だ。

改修工事は2017年末から始まっており、竣工は2021年3月の予定だ。この大型投資は、「40周年記念事業」の一環で進められているが、目的はそれだけではない。

「集客のテコ入れ」と「選手育成の強化」という、課題に対処するためでもある。

西武の2017年度の入場者数は延べ167万3219人となり、公表開始以降最多を記録した。それでも12球団中10位(パ・リーグで4位)の水準だ。

集客に関して、西武も手をこまぬいてきたわけではない。2007年度に入場者数が12球団で最下位となり、西武HD傘下の別会社が担っていたファンクラブ運営を球団が吸収、施設面では球場の改修やグループシートの新設、子ども向け施設の増強など対策を打ってきた。

そのかいあって最下位は脱したものの、近年入場者数は伸び悩んでいる。さらなる動員増には、「ライオンズは知っているが、西武ドームで観戦したことはない」ようなライトなファン層を呼び込むことが急務といえる。


球場内外の施設をテコ入れ

ライト層の獲得に向けた今回の改修は、球場のあり方から見直す内容になっている。これまでのように球場を「野球観戦の場」とだけとらえるのではなく、周辺の商業施設などを含めた「ボールパーク」として開発を進め、コアな野球ファンだけでなく誰もが楽しめる場所に変えていく考えだ。

たとえば、客席エリアの改修では、バックネット裏に400人以上を収容可能なVIPラウンジを新設。また、選手たちと同じ目線で楽しめる「砂かぶり席」も設置する予定だ。球場外の外周エリアでは、飲食店やグッズショップ増強のほか、子どもが楽しめる屋内施設や広場を設置。球場外でも滞在可能な施設に変えていくという。


VIPラウンジは12球団随一の広さ(画像:埼玉西武ライオンズ提供)

この「ボールパーク化」は10年以上前から温められてきた構想だ。米メジャーリーグは日本よりもこの「ボールパーク」の考えが浸透しているため、球団関係者は現地視察も実施。

メジャーリーグの7球場を回り「どうしたら観客が球場で楽しいと感じるのか」「どうしたら滞在時間が長くなるのか」を探った。

「特に印象に残っているのがフィリーズのシチズンズ・バンク・パークとダイヤモンドバックスのチェイス・フィールド。シチズンズには観客が試合開始時刻の相当早くから球場に来ていた。球場外の飲食店で過ごし、中に入ってからも楽しんでいた。チェイス・フィールドにはライトスタンドにプールがあり、“ボールパーク”とはこのようなところまで考えるのか、と驚いた。本当に野球を観戦するためだけに球場に来るわけじゃないんだ、と感じました」(視察を行った球団関係者)

現在のメットライフドーム内外には、多くの店舗が並び、イベント数も多い。これらは視察したスタッフの気づきが反映されたものだという。


改修後の3塁側コンコースのイメージ(画像:埼玉西武ライオンズ提供)

西武同様、地元密着の流れからボールパーク化を目指す球団は少なくない。観客動員を伸ばし続けている東北楽天イーグルスや横浜DeNAベイスターズ、北海道日本ハムファイターズも球場を中心としたまちづくりに熱心だ。

ホームゲームがあるのはどのチームも年間70日程度となるため、試合がない日もイベントなどで稼働させ、施設効率を上げることが経営課題にもなっている。

選手ファーストで狙う10年ぶりのV

2つ目の狙いは「選手育成の強化」だ。「チームの強さこそが最大のファンサービスであり、魅力ある選手こそが最大のコンテンツ」をテーマに掲げる西武だが、2008年に日本シリーズを制して以来、10年間タイトルから遠ざかっている。

今回の大改修では、球場・練習施設といった選手周りの環境整備も目玉の1つだ。西武第二球場や2軍施設に観客席を設置し、サブグラウンド・ブルペンを増設することで練習環境を拡大する。


改修後の屋内練習場のイメージ(画像:埼玉西武ライオンズ提供)

さらに室内練習場や選手寮(若獅子寮)を建て替え、寮には温浴施設なども設け若手選手が野球に集中できる環境を整える方針だ。こうした施設整備によって、選手強化や有望選手の流出の阻止につなげる算段だ。

2008年に日本一に輝いた後の10年間は、親会社・西武ホールディングスの経営が不安定な時期と重なる。リーマン・ショックや東日本大震災の影響でレジャー事業が低迷し、筆頭株主・サーベラスから敵対的TOBを受け、2014年に再上場を果たすなど、球団経営の優先順位は必ずしも高くはなかったのではないだろうか。

そうした時期を経て、40周年という節目に生まれ変わることを決意した埼玉西武ライオンズ。大改修で地元に愛され選手に愛される球団となれるかが、再成長のカギとなりそうだ。