東レが「炭素繊維で世界1」のメーカーであることは事実。東レを紹介する際、いの一番に「炭素繊維の東レ」と語られたりもする。

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 だが開示済みの4-12月期決算をみると「炭素繊維複合材料事業」の総売上高に占める割合は、前年同期比8.3%の増ながら「7.7%」にとどまっている。営業利益は「原料価格上昇や競争激化」で26.9%の減となり、総営業利益シェアは12%強という現状がある。炭素繊維の東レと称されながら「開花しきれていない」のが現実と言わざるをえない。

 同社がこの部門で注力しているのは「大手飛行機メーカーなど供給先の拡大」であり、「競合メーカー」のM&A。2014年には、米国炭素繊維大手のゾルテックを580憶円で買収している。だが今回見せた策(M&A)は言葉を選ばずに言えば、炭素繊維の東レを決定づけるための「賭け」ともいえるものだった。その背景には「炭素繊維部材を早く安く作る」という、時代的な要請があった。

 東レはオランダの炭素繊維加工大手のテンカーテ・アドバンス・コンポジット・ホールディングウス(TACHD)を買収すると発表した。具体的にはTACHDの親会社のコーニングライク・テンカーナから今年後半にTACHDの全株式を取得するという。この発表に「本気度」「賭け」を実感したのは、その買収金額だった。約1230億円。炭素繊維絡みだけではなく、東レ全体でも過去最大の買収金額である。

 TACHDはエアバスなどと取引がある。そしてその強みはオランダ・英国の生産拠点で「炭素繊維複合材を熱で柔らかくし、短時間で部品に加工する」技術を有している点にあった。前記した「時代の要請」に合致する。いかな好財務体質の東レとはいえ、1230億円の買い物は決して容易な出来事ではない。水面下で時間をかけた交渉の結果ではあろうが、「今年後半に全株式を取得」というのはかっこうのタイミングでもある。航空機業界に明るいアナリストは「来期は航空機業界の在庫調整が一巡する。炭素繊維の需要が盛り返す時期に入る」としている。

 その当たりも東レは織り込み済みで「本気度を高める好機」と判断したとみる。