長く持ち続けていればあるべき平均値に収束していきます(写真:chombosan/iStock)

数ある投資手法の中で、最近じわじわと人気を集めつつあるのが「インデックス投資」です。インデックス投資は、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、ニューヨークダウ平均、S&P500などの株価指数と同じ値動きを目指す投資手法。「世界中に分散したインデックスファンドを積み立て投資して長期保有する」というロングスパンな投資スタイルで、ひたすら寝かせて増やす「バイ&ホールド」が特徴です。

きわめて手間がかからず、金融の素人でもプロと互角以上に戦える、世界標準のスタンダードな投資法として、日本国内でも10数年かけてようやく広まってきた感があります。

1973年初版のロングセラー『ウォール街のランダム・ウォーカー』では、「個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンドマネージャーが運用する投資信託に投資したりするよりも、ただインデックスファンドを買ってじっと待っている方がはるかによい結果を生む」と、40年以上前からインデックス投資が推奨されています。

しかしながら、実際にやってみるとわかりますが、ただインデックスファンドを買ってじっと待っているのは、じつは意外と大変なのです。

投資家の信念を突き崩しにかかるマーケットの波状攻撃

なんといっても、毎日、自分の大切なおカネが増えたり減ったりしているのです。はじめのうちは、これが気にならないわけがありません。

何年か積み立て続けて、投資金額全体が大きくなってくれば、この日々の騰落の金額も、どんどん大きくなってきます。「今日は30万円儲かったぞ!」「今日は50万円も損した……」という感じです。

新聞やテレビからはニュースが絶え間なく流れてきます。日経平均の下落、為替レートの変動、外国のテロ事件……。こういう外部からの情報を見るたびに「今すぐインデックスファンドを全部売ってしまったほうがいいのではないか?」「今こそ集中的に買い増しするチャンスなのでは?」と心動かされてしまいます。

拙著『お金は寝かせて増やしなさい』では15年間のインデックス投資実践記を初公開しましたが、2008年のリーマン・ショックのときは、米国株式市場が直近のピーク時から大底までに55%もの下落をしました。ざっくり言って1年で資産が半分になる大暴落を体験したわけです。

ところが、翌年の2009年3月9日を底に、相場は奇跡のV字回復を始めます。ポートフォリオも+29.5%に回復しました。しかし、2010年のギリシャ・ショックを経て、2011年には東日本大震災が列島を襲います。

2012年、悲惨だった前年をなんとか乗り切り、安倍政権が誕生し、経済政策「アベノミクス」が打ち出され、ここで長らくマイナス状態に推移していた損益が元本を回復しました。続く、2013年の「黒田バズーカ」炸裂で、市場が株高・円安となり、相場低迷時に安値でコツコツ仕込んでいたインデックスファンドが火を吹き、一気にプラス方向に駆け上がりました。

まさにジェットコースターのような15年でしたが、「100年に一度」と言われたリーマン・ショック、「1000年に一度」と言われた東日本大震災のあと、わずか2〜3年程度で回復する株式市場のしぶとさと、積み立て投資の威力を体感しました。

インデックス投資を15年間実践して、相場の天国と地獄を両方経験してわかったことは、〜蠑譴永遠に下がり続けることはない、▲ぅ鵐妊奪ス投資家の仕事は「売りたくなったときに我慢する」ということです。

リーマン・ショックのときに市場から撤退した人は、その時点でジ・エンド。その後の市場回復の恩恵を受けることはできないわけです。

投資は孤独な道のり――なにを信じればいいの?

「100年に一度」と言われたリーマン・ショックのような大暴落に遭ってしまったとき、目の前で自分の資産がどんどん溶けて目減りしていくのを見ながら、はたして積み立てを続けることはできるでしょうか?

インデックス投資は始めるのはカンタンでも、続けるのは意外と難しいのです。

リーマン・ショックのとき、私がブログで相互リンクして懇意にさせてもらっていた30ほどのブログのおよそ半分は、その後更新が停止したか、もしくは、インデックス投資をやめて怪しい投資法に鞍替えしてしまいました。

インデックス投資は簡単で手間がかからない投資法ですが、今後何十年も継続するためには、なぜこの方法でリターンが得られるのかという本質的な部分を十分に理解して、腹に落とし込んでおくことがとても重要です。
ここで質問です。

米国で1801年に株に投資した1ドルは、200年後に実際にいくらになったと思いますか?

「10倍?」

「100倍?」

いいえ、約700000倍です。70倍ではなく、70万倍です(Jeremy J. Siegel “Stocks for the Long Run” FIFTH EDITIONより)。この200年間には、2度の世界大戦、史上最大規模の世界的大恐慌であるブラックマンデーなどが起こっています。日々、新聞やニュースで取沙汰されている諸問題とは比較にならない大嵐を乗り越えて、この結果です。株式という「仕組み」が持っている力を思い知らされます。

つまり人の未来を信じるということ

それでは、なぜ、世界各国の株式が右肩上がりに上昇してきたのでしょうか。それは、これらの国々を支える資本主義経済が拡大再生産し続ける仕組みだからだと考えられます。

おカネを持っている資本家が企業に投資する⇒労働者は労働力を企業に提供する⇒企業は市場で求められる製品やサービスを提供する⇒企業はそれを売って得た利潤から労働者に賃金を払い、残った利潤を資本家に配当する……という形で還元します。

資本家はさらに儲けるために資本を企業に投じ、労働者もさらに賃金をもらうために働いく。こうしてグルグル回っているうちに、資本が自己増殖していく。その過程で株価も上がっていく。こういう仕組みが資本主義経済です。

これが、人々の「豊かになりたい」という欲望に見事に合致しているものだから、資本主義経済は拡大再生産し続けているというわけです。

世界中の株や債券に国際分散投資するインデックス投資は、そんな資本主義経済の成長に投資することと同じです。バイ&ホールドでも儲かると考えられる理由はここにあるのです。

また、長期投資による「平均回帰性」も無視できません。

「平均回帰性」とは、短期的にはランダムに発生しているように見える事象であっても、長期的には平均値に収束していく性質のことです。統計学では「大数の法則」と呼ばれています。

簡単な例を出します。サイコロを振ると、1から6までの数字がランダムに出ます。ある目が出る発生確率は6分の1ですね。このサイコロを振る回数を10回、100回、1万回、10万回と増やしていくとどうなるでしょうか。10万回サイコロを振ったら、6が出る確率は1万6666回(100000÷6=16666.66666……)に近い回数になります。


回数を増やせば増やすほど、6が出る回数はだんだんと理論的な発生確率である6分1に収束していきます。保険会社などは、この「平均回帰性」「大数の法則」を活用して、会社が損しないような保険料の条件で事業を行っているわけです。

世の中にはさまざまな現象や法則がありますが、世界最大のインデックスファンド運用会社である米国バンガード社は「投資の世界で最も一貫性のある現象が、平均回帰性である」と主張しています。

「資本主義経済の拡大再生産」のパワーというとらえどころのないものであっても、長期で投資し続ければ、平均回帰性の力が働いて、あるべき平均値(期待リターン)に収束していき、投資のプラスリターンとして取り出せるというわけです。

このように、積み立て投資のリターンを得るためには、相場の騰落に惑わされず、短期ではなく長期で、できるだけ長く市場にとどまり続けることがいかに大切さか、わかるかと思います。