「下半身の柔軟性」を高めるストレッチとは?(撮影:今井康一)

史上最多の計8回の冬季オリンピック出場を果たし、現役のスキージャンプ選手として世界中から注目を集める葛西紀明選手。41歳で自己最高の「個人銀メダル」を獲得し、45歳の今なお一線級の成績をマークする葛西選手は「レジェンド」と称され、国内にとどまらず海外でも尊敬を集めている。
その葛西選手が35年間「企業秘密」にしてきた「疲れない体」と「折れない心」のつくり方を余すことなく1冊にまとめた新刊『40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』には何が書かれているのか。新刊の内容を再編集しながら、その極意を紹介していく。

「とにかく筋トレすれば」と思い込んでいた20代


「オリンピックで金メダルをとりたい」「いい結果を出したい」という気持ちから、20代、30代のころは、とにかく「がむしゃらに努力」をしていました。

トレーニングも「筋力」をつけるためのものを優先していましたが、40代が近づくと、20代のころに比べてケガが増えたり疲れがとれにくくなり、「20代と同じやり方を続けてはいけない」と痛感しました。

そのため、「どんなトレーニングがいいのか」いちから見直し、「下半身の筋肉をほぐすストレッチ」を重点的に取り入れたところ、歩行やランニングなど、体を動かすことが、どんどんラクになっていきました。

また、メニューにストレッチを今まで以上に取り入れ「下半身の柔軟性」を強化したことで、飛行中の姿勢制御や着地時の安定感にもつながっていきました。

みなさんも実感しているかもしれませんが、年齢を重ねると、衰えてくるのは「筋力」だけではありません。年齢とともに「柔軟性」も衰え、それがケガや代謝の低下を招いたり、「疲れやすい体」を作る原因にもなっていたりもします。

では、「下半身の柔軟性」を高めるには、どんなストレッチを行えばいいのか。今回は、私が実践している「最強のストレッチ」を紹介します。

私は「下半身の柔軟性」を高めるために、「3つの筋肉」を重点的にほぐすように心がけています。

「3つの筋肉」が柔軟性を高めるポイント

「下半身の柔軟性」を高めるために、私が意識してほぐしている筋肉は「ハムストリング」「大腿四頭筋」「内転筋」の3つです。

・ハムストリング(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の総称)……太ももの後面
・大腿四頭筋……太ももの前面
・内転筋……太ももの内側

「ハムストリング」と「大腿四頭筋」は、主に膝や股関節の曲げ伸ばしをするために必要な筋肉、「内転筋」は股関節を動かすために重要な筋肉です。

この筋肉が固まっていると、自分が思った以上に足が上がらなくなり、足がもつれたり、小さな段差でつまずいたりしてしまいます。

そんな時、つい「筋力の衰え」のみに目がいきがちですが、柔軟性が衰えた状態で筋力トレーニングを行っても、質のいい「しなやかな筋肉」をつけることはできません。それどころか逆に、膝や腰を痛める原因にもなってしまいます。

私もこの筋肉のストレッチをする前は「下半身の柔軟性」が足りなくて、ケガをしやすくなっていましたが、ストレッチを続けたことで、ケガをしにくくなりました。

みなさんもお気づきかもしれませんが、小さな段差でもつまずいてしまったり、足がもつれたりするのは、自分が思っている以上に「足が上がっていない」からです。それはまさに、この「3つの筋肉」が固まっている証拠といえます。

3つの筋肉をほぐし、「しなやかな筋肉」になったことで体への偏った負荷が少なくなり、以前と比べて疲れにくくなったように感じています。

20代のころは「体を鍛えるのは『筋力』が一番」と思っていましたが、40代になってからは、「筋力」よりも「柔軟性」を優先してケアをすることが大切ということを実感しています。

私自身が、自宅でやっている「下半身ストレッチ」は、下記の内容です。基本的にストレッチをする時間はいつでも構いませんが、寝る前など、疲れがたまっているときに実践すると、効果は実感しやすいと思います。

葛西式「最強のストレッチ」

【ストレッチ 曄屮魯爛好肇螢鵐亜廚鬚曚阿好好肇譽奪

【1】座った状態で両足を伸ばす

【2】背中を丸めない状態で、両手で足のつま先をつかみ、60秒キープ(つま先がつかめないときは膝を曲げてもOK)


(イラスト:二階堂ちはる)

【ストレッチ◆曄崑臑椹容筋」をほぐすストレッチ

【1】右足を正座、左足をあぐらの状態にする

【2】上半身を徐々に後ろに倒しながら上体を左にねじる

【3】左腕を床につけたら、60秒キープ(左右交互に行う)


(イラスト:二階堂ちはる)

【ストレッチ】「内転筋」をほぐすストレッチ

【1】両足を開けるところまで開脚したら、徐々に上体を前に倒す(足は伸ばしたまま、背中が丸まらないようにする)

【2】上体を倒せるところまで倒したら、60秒キープ(両足の開脚がきつい人は片足ずつでもOK)


(イラスト:二階堂ちはる)

ストレッチを無理なく続けるためには、たくさんの種類をするよりも、一つひとつのストレッチを丁寧に行ってみてください。慣れるまでは、力で無理に伸ばしたりしようとせず、「リラックスしながらできる最大限はどこか」というところを見ていくといいでしょう。

40歳を超えたら、「無理な筋トレ」よりも「下半身の柔軟性」を高めることに注力するほうが「疲れない体」づくりには重要、というのが私の実感です

そうすれば、40代になっても「疲れない体」をつくることは十分に可能です。ぜひ、「年齢にふさわしいやり方」で「疲れない体」を手に入れてください。応援しています。