デジタルトランスフォーメーションを実現するための考え方は。


 デジタルトランスフォーメーションは、デジタルテクノロジーを駆使したビジネスの変革です。しかし、テクノロジーの力だけで変革が実現できるわけではありません。

 デジタルトランスフォーメーションを実現するためには、次の3つの原則をしっかりと守ることです。

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第1原則:課題の実感

・誰かがそんなことを言っていた。
・世間で話題になっている。
・偉い先生がそんな話をしていた。

といったことは、既に誰かが手を付けています。そんな「誰か」のことではなく、仕事や生活の中に課題を実感することが最初です。自分が実感していることもあるでしょう。あるいは、「工場の現場が困っているらしい」や「お客様が何とかしたいと言っていた」のであれば、それを現場で確かめて、自分の実感として受けとめることです。

「三現主義」という言葉があります。

現場に出向いて現物に触れ現実を見なければ、ものごとの本質を見極めることができない」

 これは、そのことを仕事の現場に息づかせる言葉で、「ものづくり」の現場で大切にされてきました。例えば、工場の生産現場で不良品が見つかったとき、現場の状況だけを聞いて机上で判断しても、的確な判断はできません。不良品が作られる工程(現場)に出向き、不良品(現物)に触れ、不良が起きている状況(現実)を見るという三現主義を実践すれば、より正しい判断に近づくことできるというわけです。

「三現主義」で生々しい現場の課題やニーズを実感として捉えることができてこそ、それを何とかしたいという本物の意欲や動機が与えられるのだと思います。

 また、「実感」する課題が解決できれば、そこには必ず需要が生まれます。それは、そこに必要としている具体的な「誰か」が見えているからです。「誰かが言っていた」類のことは、この「誰か」がはっきりしません。それではビジネスの見通しは得られず、机上の空論になってしまいます。そうならないためにも、課題を実感しなければならないのです。

第2原則:トレンドの風を読む

 ITの進化は世の中の常識を大きく、そして急速に変えていきます。

・かつてできなかったことが、容易にできるようになった。
・かつて高額でとても手を出せなかったものが、とても安価に手に入るようになった。
・ITを身近なものとして受け入れ使いこなすことに抵抗のない世代が増えた。

 かつての常識は、すぐに置き換えられてしまいます。その事実に目を背けないことです。「かつてはこのやり方が最善の手段だった」は、今も通用するとは限りません。「最善の手段」はいつの時代も新しいのです。

 過去の経験や成功体験を「今」に押しつけるのではなく、時代に応じた「最善の手段」を見逃さないことです。

第3原則:試行錯誤

 ITがもたらす変化のスピードは、数年先を予測することさえ難しい状況です。それに加えて、ビジネス環境も世界がITで緊密につながったことで、遠い国や地域の出来事が、瞬く間に世界を大きく動かします。絶対の正解はなく、何が最適かを判断することは容易なことではありません。ですから、最後まで見通した完璧な計画など作れません。

 ですので、第1の原則で現場を感じたなら、第2の原則でその時の最適な手立てを駆使して、さっと成果を上げ、変化に応じて試行錯誤を積み重ねてゆくことが大切です。

 そのときに大切にすべきは、「当事者」としての責任です。

 例えば、新しく家を建てるとき、「何でもいいから、格安で住み心地のいい家を作ってくれ」と建築会社に頼み、出来上がった家を見て「こんな家を頼んだつもりはない」と文句を言っても後の祭りです。どんな家を建てたいかは施主が考えるべきことです。自分のライフスタイルや家族構成、予算などを考え、建築会社に相談するはずです。

 建築関係の書籍や雑誌などを読んで、最新のデザインや工法、設備についての知識を得て、こんな家にしたい、こんな家具を置きたいとこちらの思いを伝えるでしょう。建築会社は、そんなあなたの意向を受けて、専門家として提案してくれるはずです。そして、ああしよう、こうしようとやり取りを繰り返しながら、待望の家が完成します。

 どうしたいのかは施主の責任です。ITをビジネスに生かそうとする場合も同じ話です。ビジネスの「当事者」としての責任を自覚し、ITの専門家である情報システム部門やITベンダーに相談する必要があります。そのとき、ITについては何も知らないでは、「何でもいいから、儲かるシステムを作ってくれ」というしかありません。

 いつの時代にも変化はありましたが、変化のスピードがこれほど速い時代は、まれなことのように思います。将来にわたって安心確実なビジネスモデルや手段を見出すことは、大変難しい時代となったのです。

 クラウドやインターネット、さらにはテクノロジーの進化のおかげで失敗のコストは大きく下がりました。そんな時代の後押しをフルに生かし、当事者としての責任を自覚し、「試行錯誤」を繰り返すことが、ビジネスを成功させる要件として大切になるのです。

デジタルトランスフォーメーションを味方にするための3つの原則と3つのステップ


 では、この3つの原則を踏まえ、どのように取り組んでいくべきでしょうか。次回はデジタルトランスフォーメーションを進める「3つのステップ」を紹介します。

筆者:斎藤 昌義