温泉通であれば「源泉かけ流し」という点にこだわるという方は多いのではないでしょうか。しかし、日本全国の温泉を巡ってきたメルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす〜飯塚玲児の“一湯”両断!』の著者で元大手旅行誌編集長の飯塚さんによると、一切加水していない宿や施設の方が少ないとのこと。そこで問題となるのが、新しい温泉の湯をどのくらいの割合で入れているのかということではないでしょうか。飯塚さんは自身のメルマガ内で、大まかな量を簡単に調べる方法を解説しています。

浴槽のおおまかな源泉注入量講座

今号では浴槽にどのくらい源泉が注がれているかの簡易測定法を伝授したい。

前号では、浴槽での源泉率を求める数式をご紹介したわけだが、その一例として、約100度の源泉を28度の真夏の水道水で冷ますと仮定した場合、源泉率は約17%くらいだと解説した。 こう書くと、ふうん、としか思わないかもしれないが、加水率83%と書くと「えらいこっちゃ!」と思うかもしれない。 なにしろ、湯船の中のお湯のうち、8割以上はタダの水、ということであるのだ。

行きつけの温泉はどうか、と計算するのが恐ろしくなりそうだが、加水する水が28度というのはかなり高めなので、沢水や湧き水などを利用していれば、もっと源泉率は上がるし、源泉温度が60度くらいなら同じく源泉率は上がる。

以上は加水している温泉の場合だが、源泉かけ流し温泉の場合で、毎日の換水清掃時の湯張り時だけ加水して温度を調節したのちは、一切加水せずに、高温の源泉注入量を調節して(つまり、注入量を絞って)温度管理をしている宿や施設が少なくないのはご存じの通りだ。

こういう場合、僕が問題にしているのは、新湯注入量が少なく(つまり「かけ流し」ならぬ「チョロ流し」状態)、しかも高温の新湯は浴槽の上部を通ってそのまま排出され、湯船底部の古い湯が入れ替わらない場合があるということである。 これについては拙著『温泉失格』でも詳述しており、また、文庫版のあとがきで、温泉ソムリエの遠間家元が、解決手段として「パスカルの穴」と呼ばれる排湯方法をご紹介しているので、ぜひ読んでみて欲しい。

この「パスカルの穴」方式で、浴槽底部の湯を優先的に排出するシステムでなくとも、いわゆるドバドバ系温泉のように、新湯注入量が圧倒的であれば、浴槽内の湯も効率よく入れ替わるともいえる。 そこで、源泉かけ流しの場合の新湯注入量を、おおまかでもいいから知りたい、ということになってくる。

これ、化学分析的なことを考えると到底面倒で現実的でないことになってしまうのだが、ま、ごくごくおおまかでもわかればいいや、ということであれば、実は、測定そのものはまことに単純で簡単な話になるのだ。

というわけで、実践測定の方法を伝授したい。 まず大きめのバケツや風呂桶を用意する。 一緒にストップウオッチも用意(腕時計のヤツで十分)。 そして源泉湯口で注入されている湯をバケツや桶に汲んで、満タンになる時間を測る。 たとえば、5リットルのバケツが満タンになるのに10秒かかったとする。 そうすると、単純計算で1分間に30リットルの新湯が注入されていることになる。 要するに毎分30リットルということである。 小学生でもわかる計算である。

もう一例。 2リットルの手桶が満タンになるのに1分かかるようなチョロ流しの場合は、単純に毎分2リットルということだ。

温泉ファンが歓喜するドバドバ泉などでは、2リットル程度の桶は1秒くらいで満タンになるから、毎分120リットルくらいということになる。 これを3回くらい繰り返して平均値を取れば、それほどものすごい誤差にはならない。 ただ、なるべく容量の大きいバケツを使った方が精度は上がる。

このやり方でわかるのは、「あくまでおおまかな数値」でしかないのは確かだが、おおまかでも、わかるか、わからないかでは雲泥の差があると思う。 そう思いませんか? このバケツ測定を、ぜひすべての温泉施設で行って、それを掲示して欲しいものだと思う。 曖昧な数値だから掲示しても意味がない、というのは誤った考えである。 前号でも取り上げた「湯雨竹」の発明者・斉藤雅樹東海大教授は、『温泉失格』の取材の時に、「大雑把でもかまわないから、情報を開示することに大きな意味がある」と断言していた。

というわけで、以上、「浴槽への源泉注入量のざっくり計測法」である。

ぜひマイ手桶の容量をあらかじめ測って知っておくことをおすすめしたい。

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