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 楽天は12年ほど前に「楽天エコシステム(経済圏)」と呼ぶ「経済圏」の構築を強く意識していた。当時ネット企業の中で決済サービスまで提供する企業は少数で、楽天は疑いなく先陣を切っていた。しかし、近年類似サービスを標榜する企業が多く現れ、今までの立ち位置を見直すことになったのは自然な成り行きである。

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 さらにそうした危機感を高めたのは、国内の楽天サービスの中心が従来のパソコンからスマホへ移行していることが挙げられる。楽天が携帯電話事業への参入を決めたのは、国内における楽天のEC(電子商取引)売上高の65%をスマホが占めるようになったことだ。2/3ものシェアを占めるデバイスがある以上、それを何とかしたいと考えるのは、事業家として当然である。

 14年に「楽天モバイル」がMVNO(仮想移動体通信事業者)事業を本格展開してから、わずか3年ほどで150万契約を達成し、コンシューマー向けのMVNOで最大シェアを獲得した成功体験が、携帯電話事業への心理的なハードルを下げたことは否めない。MVNOとキャリアの違いは、ネットワークを借りて済ませるか、インフラを自ら敷設するかにある。

 17年12月に、3大キャリアに割って入るべく名乗りを上げた楽天は、「楽天モバイルネットワーク」の名義で4G向けの新しい周波数帯の割り当てを申請している。首尾よく電波免許が獲得できた場合には、最大6000億円を投資して基地局などの設置を行う。

 6日には東京電力グループと、基地局設置に関する設備活用に合意したことが発表された。楽天が計画している6000億円の投資では足りないとの見方をする向きはあるが、今ある設備を有効活用して経費の支出を抑えるという発想は妥当であろう。東京電力グループが抱える送電鉄塔や配電柱等を、楽天の携帯電話のインフラとして活用できるのであれば、資金的な配分にも弾力性が出て来る可能性がある。もちろん今のところ、東京電力グループ管内の設備に限られた動きではあるが、今までとは一味違った発想力が、国内ネットワーク第4局の土台を形成する可能性はある。

 楽天は1月26日、米ウォルマート・ストアーズとの提携を発表し、同月29日には朝日火災海上保険を買収して、損害保険事業に参入することも明らかにした。既に13年には生命保険への参入を済ませており、携帯事業と合わせて会員との接点を増加させ、いよいよ「楽天経済圏」への囲い込みを進める戦略と見える。稀代の事業家である三木谷浩史会長兼社長が打つ布石が、各業界にどんな風雲を巻き起こすのか、興味は尽きない。