米大手銀行キャピタル・ワン(Capital One)は、3月9日に新しいセキュリティ機能を公開した。クレジットカードの利用につきものの煩わしさを取り除く一方で、小売業者にはオンライン詐欺を見破る、あるいは詐欺か否かの判断をサポートしてくれる優れものである。

キャピタル・ワンのデジタルアシスタントであるエノ(Eno)は、ユーザーとの接続をGoogle Chromeプラグインを介して行い、「バーチャルナンバー」をリアルタイムに生成する。ユーザーは支払い時に実際のクレジットカード情報を入力する必要がない。エノは販売業者の支払いページを検知して、バーチャルカード(実物とは全く異なる16桁のクレジットカード番号、3桁のセキュリティコード、有効期限)を自動的に提示する。ユーザーはそれを使うか、保存するか、あるいは削除するかを決める。キャピタル・ワンの電子決済およびアイデンティティ管理担当シニアバイスプレジデントであるトム・プール氏によると、同行はすべてのブラウザ上で、順次この機能を取り入れていくことを計画しているという。

キャピタル・ワンは、エノのバーチャルナンバーによってユーザーが「自分の支払いがどう扱われるようにしたいか、そのルールを設定できる」ようにしている。「ユーザーから銀行に指示してもらう。たとえば今日、クレジットカード1枚に対して番号をひとりのユーザーに提供する。番号についての決まりごとはなし。番号は何に使っても良く、ユーザーがもし誰かにその番号を渡せば、理屈のうえでは、その人に融資限度額いっぱいまで決済する権限を与えることになる」と、プール氏は語る。

オンライン詐欺対策として



バーチャルカードは、ユーザーと各販売業者とのつながりごとに一意のもので、不正な課金が行われないようブロックしたり、不要になったつながりを削除するオプションとあわせて、ユーザーはさまざまな番号のポートフォリオを保存できる。この機能により、2017年12月時点で小売業者の収益のうちの1.58%、2016年12月では1.47%を占めたオンライン詐欺について、件数の減少に貢献できるはずだと同行は目論む。万一あるオンライン小売業者がデータ漏えいの被害に遭って、ユーザーのバーチャルカードナンバーが流出したとしても、そもそも実際のカード情報は一切渡らないため、データそのものは安全である。

ただし同行の幹部は、トークン化のひとつの形式であるこの機能は、詐欺や不正とのイタチごっごというよりも、どちらかと言えば、煩わしさとのイタチごっごを延々と続けている、まるで「支払革命」という名の同じBGMを永遠に奏でているようなものだと言ってゆずらない。

多くの人々は本物のクレジットカード情報をAmazonや音楽ストリーミングサービスのSpotify(スポティファイ)、携帯電話会社、スポーツジムの会員登録などあらゆるところに保存している。そして新しいカードを取得した場合――その理由はカードを失くした場合や期限切れになったカードの代わりなどいろいろあり得るが――全部のサイトでクレジットカード番号を変更しなければならない。キャピタル・ワンでは、ユーザーに新しいクレジットカードが発行されると、エノがバーチャルナンバーのポートフォリオのなかに保存されたすべてのバーチャルリレーションとの照合を行う。情報は自動的に更新され、ユーザーによる手作業を必要としない。

セキュリティや詐欺を超えてその先を考えてみると、エノのバーチャルナンバーは小さなものだが、クレジットカードに替わる有効な手法と言える。オンライン小売業者の保護に貢献し、また銀行が小売業者にとって敵ではなく、本質的なビジネスパートナーになれるという説を実証するものである。キャピタル・ワンは、たとえば電子商取引最大手であるAmazonとクレジットカードについてのシステム連携をすでに構築済みで、さらにはAmazonユーザー専用当座預金口座についての提携も協議している。

ユーザビリティが普及のカギ



2017年のカート放棄率は69.2%で、過去11年間で16%増えている。デンマークの電子商取引コンサルティング会社であるベイマード・インスティテュート(Baymard Institute)が2017年に実施した調査によると、オンライン買い物客の18%がクレジットカード情報を渡す相手となるサイトを信用できず、支払プロセスに至らなかったことが回答から分かった。しかし別の28%の買い物客は、支払プロセスが長すぎる、あるいは複雑すぎるとしており、37%は手続きを進めるためにアカウントを作成するのをためらったという。

「セキュリティは大切だ。ただし、それによって不便になるなら、ユーザーは歓迎しない」と、プール氏は言う。「このように、エノはポップアップで表示するだけだ。利便性がとても高く、ユーザーはゆったり座ったままでいられる。……オンライン買い物客の多くの人たちから、支払いに使うカードを探すのに毎回立ち上がるのが億劫だから、よく操作途中でやめてしまう、と聞いていた」。

一方で利便性を実現するには、遍在性がカギとなる。プール氏によれば、既存のソリューションにも良いものがたくさんあり、なかにはキャピタル・ワンの小売「パートナー」が提供しているものもある。しかし、それらは一部のWebサイト上にしか存在しない。

1年に及ぶ開発プロセスにおいては「ソリューションの恩恵を受けるために、ユーザーが何もしなくてよいようにすることが重要だった」と、プール氏は語る。「どこにでもあるものでなければ、ユーザーは使わなくなる。我々は経験からそれを学んでいた。特定の支払いボタンがあるサイトだからという理由で、決まった場所で買い物をする人はいない。ここで買い物をしようと決めたあとに、連携して使える便利さが必要だ。我々はこのようなサービスを提供している。覚えておいてほしい、というものでは受け入れてもらえない」。

Tanaya Macheel(原文 / 訳:SI Japan)