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●フルMVNO化で何が変わる?

インターネットイニシアティブ(IIJ)が、「フルMVNO」サービスの開始を発表した。まずは法人向けに提供開始し、2018年初夏には個人向けのサービスも始まるという。

フルMVNOでは、これまで大手キャリアに依存していた加入者管理機能を自社で持つことで、これまでにないSIMカードのビジネス活用が可能になるという。格安スマホで知られている従来のMVNOとは、どのように違うのだろうか。

○「SIMライフサイクル」をコントロール可能に

格安スマホとともに認知度が高まったMVNOは、大手キャリアから通信の帯域を購入することでサービスを提供してきた。だが、システム面では多くの部分をNTTドコモを始めとする大手キャリアに依存しているのが実態だ。

IIJによる「フルMVNO」も、ドコモが全国に張り巡らせた基地局によるLTEや3Gのネットワークを利用する点は変わっていない。だが、加入者に電話番号を発行する機能を自社で持つなど、基地局以外はすべてコントロール可能になるのが最大の違いだという。

フルMVNOで大きく変わるのがSIMカードだ。これまでMVNOはドコモが1枚394円で発行したSIMカードを借り受け、毎月の回線維持費を支払ってきた。IIJによれば、全国のコンビニに10万枚のSIMカードを在庫として持つ場合、毎月1000〜1500万円の費用がかかるという。

しかしフルMVNOではIIJが独自にSIMカードを発行できるため、在庫費用を大きく削減できることになる。以前にSIMカードを雑誌の付録として配布したMVNOが話題になったが、コストが下がればこうした「ばら巻き」も再び可能になるというわけだ。

●フルMVNOには課題も

○「サスペンド」でコスト削減、法人需要を狙う

フルMVNOの特徴として、まずはSIMカードに注目したが、加入者情報管理を活用すれば契約中の課金状態も自由にコントロールできるようになる。こうした「SIMライフサイクル」を自社で握れるできることが、フルMVNOの強みといえる。

これを活用できそうなシナリオが、IoTや保守業務の分野だ。業務用機器の制御にLTE通信を活用する例は広がっているが、除雪車のように通年で利用しないものであっても、毎月の回線費用がかかる問題があった

そこでIIJがフルMVNOで提供するのが「サスペンド」機能だ。回線を解約するのではなく休眠状態にすることで、毎月の維持費はわずか30円になるという。しかも遠隔から操作でき、月内にサスペンドした場合は日割り計算になるため、本当に必要な日数だけ通信機能を利用できるのが特徴だ。

海外展開にも注目だ。6月には海外ローミングを開始予定となっているが、フルMVNOでは海外キャリアとのローミングではない直接接続も可能になるという。これまで海外との通信は割高なイメージがあったが、接続形態によっては海外現地の安い料金で使える可能性も見えてくる。

一方でフルMVNOは、従来型MVNOにはなかった課題も抱えている。まず、音声通話サービスは提供されず、当面はデータ通信のみに限られる。そのためスマホのメイン回線ではなく、IoTやプリペイドなど用途はやや限定的になるだろう。

また、ドコモとは別のキャリアという立て付けになることから、フルMVNOのSIMを使うには、ドコモの端末であってもSIMロックを解除する必要がある。これまでドコモ系のMVNOはSIMロックされた端末でも使えていただけに、注意を要する点だ。

このようにフルMVNOにはメリットとデメリットの両面があるものの、従来型のMVNOとはうまく棲み分けていく存在になりそうだ。従来型MVNOが似たような料金プランやサービスに落ち着きつつある中で、フルMVNOがこれまでにない市場を開拓できるか注目したい。