仕事に対しては強気だが、恋愛になると驚くほど弱気に(写真:polkadot / PIXTA)

「私、自己肯定感が低いから婚活をしてもうまくいかないし、今こんなに苦しんでいるんだと思うんです」


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面談に来た清水ありさ(41歳、仮名)は、うつむきながら言った。スラリと痩せていて服装も髪型のセンスも都会的、自立したバリキャリ風の美人だ。

自己肯定感とは、自分の存在意義や価値を認められる感覚のこと。以前このコラムで、婚約破棄をされた男性のことを、“女性から三行半をつきつけられたのは、自分に自信が持てず、不安から彼女の前でマイナスな発言ばかりをするようになったのが原因の1つ”と書いた(40歳「婚活男性」がどん底まで落ちた深刻事情)。彼の自己肯定感の低さがそうさせてしまったのではないかと、私が分析をしたのだ。

その記事を読んだ彼女が、自分の婚活がうまくいかないことと重ね合わせて、私を訪ねてきた。

自己肯定感の低さは、生い立ちが原因

ありさは、留学経験があり、数年前までは米国で働いていたという。帰国した現在も英語を使う仕事をして、生計を立てている。
 
「仕事に対しては強気でガンガンいけるんです。自分でこの道を切り開いてきたという自負もある。ところが、いざ恋愛になると驚くほど弱気になって自信がなくなってしまうんですね。友人に『仕事のときとは別人だよね』って、よく言われます」

彼女は、恋愛に弱気なのは自己肯定感が低いからで、そんな自分になったのは“生い立ち”に起因するのではないかと言った。

「幼い頃、父が海外に単身赴任をしていて、ほとんど母子家庭のような状況の中で育ったんです。2人姉妹なんですが、妹には健康面のトラブルがあって、母が妹にかかりきりだった。私は長女だったし、母に迷惑をかけまいといつもいい子を演じて、心配させないようにしてきました」

子どもの頃から、いつも優等生。優等生は一見自己肯定感が高そうに思えるのだが、優等生ほどつねに人の目や評価を気にしている。また、いつも他人と自分を比較して、自分のほうが優秀でいたいと頑張りすぎてしまう。実は内面では疲れているし、不安がつきまとっている。優等生ほど自己肯定感が低いというのが、専門家の見立てだ。

ただ、優等生は努力家なので、勤勉に勉強し、仕事を頑張り、それに見合った結果を出している人が多い。そこは誇らしいと思っているし、自信がある。ところが恋愛に関しては、そうはいかない。努力するほどに手痛いしっぺ返しを受けることもある。思うとおりにいかないと、それが自信のなさと恐怖心につながっていくのだ。

「20代の頃の私は、41になって独身でいるとは、つゆほども思っていませんでした。真剣な恋愛もしてきましたが、好きになってお付き合いをした相手との先に結婚はなかった」

恋愛することが、とても下手

なぜ、恋愛を結婚へと成就させることができなかったのか。

「自分で恋愛をぶち壊しちゃうんです。相手をすごく好きになると、不安な気持ちが大きくなって、何か起きると、一気に悪いほうに取ってしまう。メールのやりとり1つにしても、“こう書いてあるけど、私の書いたことが気に障ったのかな”とか、モヤモヤよくないことを考えてしまう。LINEを送って、返事がこないと“なんで返事がこないんだろう。もしかして私との関係を終わりにしたいのかな”とか、最悪のシナリオばかり考えてしまうんです」

しかし、人を好きになったときに、相手の言動に一喜一憂してしまうのは、多かれ少なかれ誰もが経験していることではないか。たとえば仕事での失敗は、やり直したりやり方を変えたりすれば、リカバーできる。しかし、こと恋愛に関していえば、どんなに努力をしても、アプローチの仕方を変えても、いったん動いてしまった相手の気持ちを取り戻すことはできない。だから相手を好きになればなるほど、嫌われるのが怖くなる。

「実はつい最近も、すごく落ち込んだ出来事があったんです」

ありさは、思いつめたような顔で続けた。

「日本人だけでなく海外の人ともつながって友達になれるアプリと、趣味が同じ人が集まってオフ会を楽しむアプリに登録しているんです。ネットワーキングを使って、外国の方と知り合うチャンスを作っているんですね」

ありさは、日本人ではなく外国人との結婚を望んでいた。

「私、長いこと日本人とは付き合っていないんですよ。日本の男性とはどうもうまくいかない。たとえば、『数年前まで海外に住んでいて、英語を使う仕事をしている』と言うと、『へぇ、英語がペラペラなんだ。すごいね』って、どこか腰を引いてしまう人が多い。あと、日本の男性は婚活において、できるだけ若い子と結婚したがりますよね。外国人の男性は、年齢ではなくもっと女性の本質を見てくれる。日本人が絶対的にダメというわけではないけれど、恋愛するのはいつも外国人になってしまうんです」

そうして、アプリで外国人と知り合うものの、恋愛が始まると不安に押しつぶされ、自爆してしまうのだという。

「少し前に、すごく好きだった人にフラれたんですね。私が好きになりすぎて、相手は私が重たくなったみたいで。その失恋からやっと立ち直ったときに、またいいなと思う人が現れたんです。ただ前みたいな思いをするのがいやだったから、『つきあうなら真剣に、長く時間をかけたい』とメールしたら、相手から、『あ、それなら、この関係はナシだね』と、簡単に連絡を絶たれてしまった。なんだか恋愛での失敗が続くと、出会うのも怖くなるし、自分がすごく疲れていくのを感じてしまって」

好きになった男性にフラれて傷つく気持ちはわかる。失恋は苦しい。だが、出会う場所を間違ってはいないだろうか。

無料アプリで気軽につながれる相手は、気軽な付き合いを求めているはずだ。その男性に本気の気持ちをぶつけようとすれば、相手は女性のことが重たくなるだろう。気軽に遊べないことがわかったら、そこで関係を絶つだろう。

数千円の登録料を払う有料アプリでさえも、既婚者が独身を装っていたり、男女の遊びが目的で登録していたりする人がいるのだ。

もちろん、アプリの出会いから縁がつながり、結婚に至ったり、ビジネスが広がったりすることもある。しかし、リアルな出会いよりも気軽なぶん、人とかかわる責任感が欠如している人が多く登録していることは否めないのではないだろうか。

女友達からも、キツいことを言われ、人格を否定され

「さらに傷ついてしまった出来事が続いたんです。信頼していた友達からものすごくキツいことを言われて」

婚活がうまくいかない悩みをいつも包み隠さずに話し、相談にのってもらっていた女友達がいた。フラれて傷ついていたときに、彼女と1泊2日の旅行に出かけた。

「いつもは、うんうんっと、愚痴も悩みも聞いていてくれていたんですけど、旅行だったから一緒にいた時間が長すぎたのかな。夜、旅館の部屋で、失恋した話をしてメソメソしていたら、『あなたは、自分がかわいそうだとあわれんで、マスターベーションをしているだけなんじゃないの?』って言われたんです。その言葉がグサッと胸に突き刺さりました」

女友達は、さらに続けた。

「私は離婚して、本当につらい時期があった。弱り目に祟り目で病気にもなった。でもそこからどうしたら自分が抜け出せるのか、もっと強くなれるか、どうやったら立ち直れるか、いろいろ調べて、いろいろ試して、いろんな努力をして、今こうやって明るく強く生きている。それなのにあなたは、メソメソ愚痴ばかり言っていて、なんの解決策も見つけようとしないよね」

優等生の気質ゆえに、彼女と自分を比較され、優位に立たれ、ダメの烙印を押されたことがショックだったのだろう。心を癒すはずの旅行で、さらに落ち込んでしまった。

41歳という年齢が、苦しい

「考えると41歳という今の年齢が、私を苦しくさせているんじゃないかと思うんです。子どもが欲しい男性にしてみたら、わざわざ結婚相手に選ぶ年齢ではない。でも私は、まだ子どもを産むことをあきらめていない。選んでもらえない年齢なのに、選んでもらおうと必死で結婚相手を探している……」

ありさは、ここで大きなため息をついた。

「あと5、6年経ったら、もっとラクになれるのかな、って。子どもを産むことを考えなくなれば、パートナーを探す時間の焦りもなくなる。それこそ、結婚という形態を取っていなくても寄り添える相手が探せればいいと思えるようになる」

私は、ありさに言った。

「巡り会いたいお相手が日本人であれ、外国人であれ、アラフォーの女性たちは、みなさんがありささんと同じ気持ちで、時間との戦いの中、婚活をしているんですよ。だから、どこかで焦りを覚えている。ただ今のありささんがやっているお相手探しは、とても的中率が悪く、さらに傷つくことが多い婚活なのではないかしら」

まず、日本にいながら外国人と結婚することが難しい。日本に滞在する外国人の数がそもそも少ないし、その中で日本人女性と結婚したいと思っている男性はさらに少ないだろう。日本人との結婚を望んでいるアラフォー女性たちですら、相手が見つからずに苦労しているのだ。

また前述のように、結婚相手を無料登録のアプリで探すこと自体に無理があるのではないか。どうしても国際結婚がしたいというのであれば、いっそ米国に渡り、向こうで働きながら婚活をしたほうが、よっぽど効率的だ。

「それはわかっています。日本にいてこんなことをしていても、なかなか相手に巡り会えないというのは。かといって、一気に振り切って、米国に行く決断もできないでいる。時々自分がどうしたいか、何がしたいのか、わからなくなっちゃって。こうやって苦しむのは、自己肯定感が低いから。自己肯定感が上がったら、もっとラクになるんじゃないかと思って、今日はここに来たんです」

私が婚約破棄をされた男性の記事で、落ち込んでいる彼に心理カウンセラーを引き合わせたことを書いたのだが、彼女は、「そのカウンセラーを紹介してほしい」という。

「ご紹介するのは、やぶさかではないですよ。自己肯定感を上げるプログラムに参加するのは、もちろんご自身のためになると思います。ただ自己肯定感が上がったからといって、結婚できるわけではない。それは、イコールではない。もし結婚したいなら、自己肯定感を上げることも大事だけれど、それよりも前に、今の自分が何をしたらいいのか、何が無駄なのかを整理してみるとよいのではないですか?」

本当に結婚したいのなら

婚活には、正解がない。いつ“結婚”というゴールにたどり着くことができるのかは、わからない。だから、婚活疲れを起こしている人たちの誰もが迷路に迷い込むと、そこから抜け出すためにさまざまな方法を模索しだす。

“藁にもすがる”ということわざがあるが、占い師のところに駆け込み、占いにハマってしまったり、パワースポットや婚活神社巡りをしたり、大枚はたいてモテ塾に入塾したり……。何か婚活に関連する行動を起こすことで、安心感を得ようとする。

占いで、「夏までは出会いがないけれど、秋から運命の相手に出会える周期に入る」といわれれば、今うまくいっていない現状にも安堵するだろう。パワースポットに出向き御神木の前で手を合わせたり、婚活神社で縁結びのお守りを買ったりするのも同様だ。また、モテ塾で相手の口説き方を学べば、次に恋愛したときには、きっとうまくやれる自分になれると思い込む。

もちろん、行動を起こさないよりは、何かの行動を起こしたほうがいいに決まっている。不安に苛まれているより、安心感を得たほうがいい。

だが、本当に結婚したいのなら、リアルに出会っていくことが遠いようで、いちばんの近道なのだ。失敗続きでつらい思いをしても、めげずに出会い続ける。それも遊び目的ではなく、“結婚をしたい”と本当に思っている人たちに会っていくことが大切だ。

そして繰り返し言うが、そのためには出会う場所を選別することだ。男女の単なる出会いを主流にしているようなアプリでは、結婚相手を探すことは、広大な砂漠の中に埋まっているダイヤモンドを探し当てるようなものだ。

また、出会ったときにその相手の人間性を見極める目を持つことが、いちばん大切なのではないだろうか。