テレビ業界で、CMを削減する動きが広がっている。その背景にあるのは、デジタルプラットフォームだ。

FOXネットワークスグループ(Fox Networks Group)は、2020年までに自社ネットワークで放映する広告を1時間あたり2分に減らしたいと述べている。NBCユニバーサル(NBCUniversal)は、CM枠の広告数を20%削減するとともに、プライムタイムに放映している50以上のオリジナル番組で、広告時間を合わせて10%削減する計画を明らかにした。ターナー(Turner)が所有するケーブルネットワークのトゥルーTV(TruTV)は、オリジナル番組のアドロード(広告掲載回数)をすでに減らしており、今後3年間でその取り組みを拡大する計画だ。また、姉妹ネットワークのTNTも、一部のオリジナル番組でアドロードを試験的に減らしているとターナーは述べている。

いまのところ、こうした動きは例外的なものだ。全体的にみれば、テレビコマーシャルの回数はまだ増え続けている。調査会社ピボタルリサーチ(Pivotal Research)のブライアン・ウィーザー氏の分析によると、2018年1月には、米国のアドロードが前年比で3.9%増となる1分間あたり11分に増えたという。

「我々はあまりに長いあいだ、番組に広告を詰め込んできた。そして、その悪影響が業界全体で見られるようになっている」と、トゥルーTVのプレジデント、クリス・リン氏はいう。「あまりにも長いあいだ、誰もが過去にうまいくったやり方に頼ってきた。だが、これでは前に進むことはできない。変化するオーディエンスのニーズに対応できなければ、すぐに底が抜け落ちてしまうだろう」。

アドロードの削減は、視聴者がデジタルやビデオオンデマンドのプラットフォームにシフトしている状況を受けたものだ。また、デュオポリーの2社(GoogleとFacebook)がブランドセーフティの問題で苦戦していることが、テレビネットワークに広告費を奪い返すチャンスをもたらしている。

テレビの視聴体験をデジタルに近づける



テレビ番組がコネクテッドテレビで視聴される割合は増え続けている。NBCユニバーサルでは、デジタル広告インプレッションの75%がコネクテッドテレビ経由だ。だが、アドロードは以前より減っていると、同社でエンターテインメント広告販売担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるマーク・マーシャル氏はいう。

NBCの音楽オーディション番組「ザ・ボイス(The Voice)」を例にとろう。リニアテレビ(従来のテレビ放送)のライブ放送では、視聴時間は平均で35分だ。だが、コネクテッドテレビでは43分、デジタルビデオレコーダーでは48分に跳ね上がる。さらにビデオオンデマンドでは、視聴時間が平均で51分になると、マーシャル氏は述べている。

「同じ番組で、同じ内容なのに、デジタルのほうが視聴時間が長いのはなぜだろうか。その理由のひとつは、デジタルではアドロードが少ないことだ」と、NBCの放送ネットワークや、系列ケーブル局のUSAネットワーク(USA Network)やサイファイ(Syfy)の広告販売を指揮しているマーシャル氏はいう。「全体的な目標は、テレビをもっとデジタルテレビらしくすることだ」とマーシャル氏は語った。

また、Netflix(ネットフリックス)、Amazon、Hulu(フールー)の影響も考えられる。NetflixとAmazonはコマーシャルがないため、人々は番組を続けざまにみるのが苦痛になり、広告のあるケーブルテレビに切り替える可能性があると、コンサルティング企業TVレブ(TVRev)の共同創設者でリードアナリストのアラン・ウォーク氏は指摘する。Huluでは、5400万人いる月間ユニークユーザーの約70%が広告付きオプションの有料会員だ。広告付きオプションでは、限られた量のコマーシャルが放映される。

「Huluはアドロードを少なめにキープしているため、人々はコマーシャルがあることを気にしない」と、ウォーク氏は説明した。

デュオポリーがブランドセーフティ問題に直面している状況がチャンスに



テレビネットワークは、FacebookとGoogleでブランドセーフティの問題が続いている状況に便乗したいと考えている。NBCユニバーサルの広告販売責任者、リンダ・ヤカリノ氏は、アップフロントなどの業界イベントでデュオポリーをたびたび批判。ビュー(Veiw)が自社の製品を買ったり、いいね!が来店することはないと述べている。これに対し、テレビは視聴者を抱えており、その視聴者はかなりの時間を番組とともに過ごしてくれる。

「広告のマーケットプレイスでは、このような広告プラットフォームをもつ企業が、テレビに対抗して動画広告を宣伝し、販売している。その際、彼らの多くが、音声をオフにされた動画広告の平均視聴時間が1.7秒間であることを、優れたインプレッションの例として話すだろう」と、NBCユニバーサルのマーシャル氏はいう。「これに対し、我々の番組は35分〜50分間連続で視聴されているのだ。テレビが広告主にかつてないほど高い価値をもたらしていることは、ほぼ明らかだろう。したがって、広告効果の点ではすでにベストの存在であり、こうした取り組みを積み重ねていくことで、効果をさらに高めたい」。

NBCユニバーサルでは、わずらわしい広告の数や時間を減らすとともに、「プライムポッド(PRIME POD)」という新しい広告製品を展開している。これは60秒間の新しい広告枠で、1社か2社の広告主のみのコマーシャルを、番組の最初と最後に流す仕組みだ。この枠の広告は、番組の内容やオーディエンスに沿ったものとなるため、NBC自身が製作する独自の番組が含まれる可能性もある。

「アドロードを半分に減らした場合に、広告主が最大の効果を得られることが調査で判明している」と、マーシャル氏はいう。「もちろん、すべての番組で広告を半分にすることはできない。だが、消費者と広告主の双方にメリットをもたらす、はじめての広告枠というアイデアは、ここから生まれたのだ。人々が60分のドラマを25分間視聴したときに、広告が1分しか表示されなければ、彼らはその広告のことをよく覚えているだろう」。

当然ながら、テレビネットワークにとっては、広告枠の価格を引き上げるチャンスでもある。マーシャル氏によれば、プライムポッドはかなりの高額になるようだ。また、FOXネットワークスグループも、インベントリー(在庫)を減らし、番組の視聴者数ではなく視聴時間に基づいて広告を販売する計画があることを報道で認めている。

アドロードを減らすことで、広告料の引き上げを実現



テレビネットワークはしばらく前から、アドロードを減らす取り組みを試験的に行ってきた。その結果、広告主がより多くの費用を支払う意思があることがわかってきたという。

2016年には、ターナーのトゥルーTVが、30分間のオリジナル番組のコマーシャルを3分30秒に短縮した。トゥルーTVは番組を自社で制作しているため、プロデューサーが作らなければいけない番組の長さが、22分30秒から約26分に延びたという。

「このような取り組みは、万人向けではない」と、トゥルーTVのリン氏はいう。「全力投球し、長期間にわたってコミットする必要がある。我々がトゥルーTVでめったにないチャンスを得られたのは、すべてのコンテンツを自社で所有しており、買い付けしたコンテンツはないからだ。そのため、スイッチをパッと切り替え、これからはすべてのコンテンツの時間を延ばし、価格を引き上げるのだと宣言することができる」。

この取り組みは、いまのところうまくいっている。トゥルーTVによれば、2017年にはCPMが2桁の増加をみせたという。同社はこの年、「挿入する広告量が限定された」製品を、はじめて年間を通してマーケターに提供した。あるメディアバイヤーによると、ターナーのプライムタイムのCPMは35ドル〜40ドルだという。視聴回数が増えてアドロードが減った結果、トゥルーTVのCPMは上昇しているとこの人物は指摘した。トゥルーTVによると、2017年のアップフロントでこの「広告量が限定された」製品を購入したマーケターは、契約更新率がほぼ100%だったそうだ。

調査会社ニールセン(Nielsen)によると、この製品の導入以来、トゥルーTVの視聴率は、TVマーケターが最も重視する18歳〜49歳の成人のあいだで2%増加したという。上位30社のテレビネットワークのうち、2年連続で視聴率が上昇したのは3社しかなく、そのうちの1社がトゥルーTVだったとニールセンは報告している。

ただし、トゥルーTVの視聴率の上昇は、アドロードの削減がすべての要因ではない。同社は、質の高いオリジナルのコメディ番組も製作している。だが、視聴率の上昇を受け、トゥルーTVは今後3年間ですべての番組のアドロードを減らす計画だ(現時点で、「広告量が限定された」製品は、同社の番組ラインアップのおよそ15%を占めている)。

「トゥルーTVの全体的な目標は、リアリティ番組のテレビネットワークとしての姿を取り戻したうえで、プレミアムなネットワークとして、より若くて裕福なオーディエンスにアピールすることだ」と、リン氏はいう。「NetflixやHuluと視聴者数を競っていることはわかっている。もっともやりがちな失敗は、コマーシャルをますます長くし、メッセージをたくさん盛り込みすぎたために、視聴体験を損なってしまうことだ」。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)