異動した部署でいきなり部下を管理しようとすると、反感を買うだけだ(写真はイメージ)


 中間管理職のダークサイド化現象が近年目立つ。決定権もないのに情報を抱え込み滞留させる、といった日常的なものから、組織の変革を拒み抵抗勢力化する、はては部下の成果の横取りやパワハラまで、様々な害毒をもたらす中間管理職はなぜ生まれるのだろうか。
 ダークサイド化する管理職の意識の底に、権力についての誤った捉え方がある可能性がある。そのことへの気づきが、古いタイプの管理職から新しいタイプのマネージャーへ脱皮するヒントになるはずだ。

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害悪を垂れ流す中間管理職

 勤怠管理や経営情報の共有など、管理職の伝統的な業務の多くはすでにITやイントラネットに置き換わり、タスクとしては消滅していますが、今後、AI等を用いたHRTechによりますます今の管理業務は消滅していくでしょう。

 ある大手流通系企業は、若手の仕事を奪い、変革に抵抗する中間管理職をやめさせるために、1人当たり5000万円もの割増退職金を支払うことにしたそうです。

 そうした一部の企業だけでなく、どこの企業でも、本人には意思決定する権利がないにもかかわらず、情報を滞留させる、意思決定できないので不安になり、無駄に会社内の総意をつくろうとして他部門を関係させる、そのことで、関係者が多くなり、意思決定のスピードがますます遅延、というより、意思決定自体が難しくなる、などの弊害が目立つようになってきました。

 なぜ中間管理職はこういう間違いを起こし、害悪を垂れ流すダークサイドの存在になってしまったのでしょうか?

ダークサイド化する人の「権力」に対する認識

 問題の根っこにあると考えられるのは、彼らの心の底にある「権力」に関する誤った捉え方です。

 前回の記事(「『社畜予備軍』と『未来の社長』を分けるもの」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52505)でご紹介したマキャベリ脳診断テストで左下に位置する「社畜予備軍」の人たちは、あるべきコンセプトの実現に邁進する、という権力のポジティブな役割を認めず、権力を否定的に捉え、権力からできるだけ距離を置こうとします。

 勘違いしてしまう管理職も、権力を否定的に捉えているという点では、社畜予備軍の人たちと同じです。

 社畜予備軍との違いは、権力から距離を置くのではなく、権力の一部となり勝ち組に回りたい、と考えているところです。つまり、「ゼロサムゲームの中で、勝つ方に属したい」「おいしい権力を、自分にも分けてほしい」いう感じです。権力を否定的にとらえつつ、しかも権力を得ようとアクティブに行動するので、非常にたちが悪くなります。

 彼らが自分自身のゴールを追い求めていく中で、組織の利益は損なわれます。部下の成果を盗む、部下に理不尽な圧力をかけて権力を誇示し、チーム全体のモティベーションをダウンさせる、競争相手の同僚のプロジェクトを失敗するように工作する、などなど、組織の利益を損なってでも自分自身の権力を強くしたい、ということになります。

 しかし本来、企業で本当に権力を持つのは社長だけです。誰もそれ以外の中途半端な権力者を必要としていません。決定権もないのに「自分が意思決定する!」とできないことをやろうとする結果、情報を滞留させ意思決定を遅らせるのです。

 経営者の方も、時代遅れの「ワンマン社長」と批判されることを恐れるあまり、中間管理職に仕事を丸投げし、依存してきたこれまでの怠慢が、ここまで問題をこじらせてきたと思います。本来、会社には本当の権力者が1人いるだけで、中間管理職には何の権力もない、というのが正しい認識です。

マネージャーは上に立つのではなく「土台」に

 それでは自分がダークサイドに堕ちないためには、どうずればいいでしょうか?

 まず、中間管理職には何の権力もない、という苦い真実を正しく認識することが第一歩です。

 そして、マネージャーのあるべき姿を正しく知る必要があります。

 マネージャーはチームの上に乗っかっている存在ではなく、チームの活動を下から底支えする土台にあたるものです。

 もし自分が管理職で、部下より偉く、ある種の権力を握っていると勘違いしている場合は、既に管理職としては失敗していることになります。部下を育てることや、モティベートすることも無理でしょう。場合によっては皆がやる気を失い、一部は既に反旗をひるがえしているかもしれません。部下を「管理」しようとすると、ヒエラルキーの中で自分を上に位置づけることになってしまいます。しかし、誰しも自分を「下」に思わないのが人間です。

 昇進し、長という名のつくポストをもらい、給料も上がるのは、うれしいことです。それによって人より上に行ったと勘違いする人もいます。しかし、長のつくポストについたからといって自分が他の人より偉いことにはなりません。

 マネージャーは権力を行使したり部下を管理するのではなく、周りの人々が最高のポテンシャルを発揮するように支えるのが仕事です。部下はあなたのために働いているのではなく、あなたが部下のために働いているのです。

 つまり、マネージャーは権力者ではなく、チーム全員の可能性を最大限に引き出すコーチ役に徹する必要があります。部下にスターがいれば、そのスターがその貢献にふさわしい正当な扱いがなされるようにしないといけない。できない問題児がいれば、なんとか本来持っている可能性を最大限発揮できるようにしないといけない。部下の成功や、チームの生産性や、自分の部門の価値、そしていくばくかは会社全体の価値に対して責任を持つ。マネージャーになるということは、そういうタフな仕事を引き受けるということです。

 部下の成果を盗んで部下のやる気を下げたり、社内の情報の流れをブロックしたりする、害毒を流す中間管理職の存在に気づいている皆さんが、もしこれから管理職になるのであれば、いままでの間違った中間管理職のやり方をコピーするのではなく、自分のスタイルを築くようにした方がいいでしょう。

 そのためには、身近にロールモデルが無ければセミナーを受講するとか、コーチングについて学ぶとか、いままで知らなかったスキルを学ぶ必要があると思います。それだけの投資の価値はあります。というのは、日本企業はどこでも、付加価値の無い中間管理職があふれている一方で、チームのパフォーマンスを上げるため皆の土台になって働き、皆をレスペクトすることのできるマネージャーを本当に必要としているからです。

4月1日に何をすべきか?

 これから人事異動のシーズンです。もし4月1日の異動でプロジェクトや部門を任されることになり、初日からはりきって皆に指示を与えようと考えているとしたら、見事に失敗するでしょう。

 なぜなら、中間管理職は本当の権力者ではないからです。誰もそんな中途半端な権力者を必要としていません。

 逆に、皆の役に立つつもりで、新しい役割に入りましょう。

 異動した初日には、話すのではなく、関係者の話を聞いてください。新しいボスの話を聞き、関連する部門のキーパーソンの話を聞き、あなたの部下・チームメンバーのそれぞれの話をじっくりと聞きましょう。その上で、「皆の仕事が今までよりうまくいくようにするには、自分は何をするべきか?」を考えるのです。

 中間管理職はプチ権力者ではありません。皆の役に立つことに徹することで、部下の信頼も得られるし、尊敬もされ、結局は成果を上げることができるはずです。

 次回に続きます。

(*)ビジネスパーソンにとっての権力の正しい捉え方をより詳しく知りたい方は、筆者の最新刊『新・君主論 AI時代のビジネスリーダーの条件』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をご一読ください。自分の取るべき道が、はっきり理解できるようになるはずです。

『』(木谷哲夫著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)


筆者:木谷 哲夫