科学が示すスーパー・エイジャーの特徴 寿命は「習慣」で変わる

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多くの人々の関心を集める「ウェルエイジング」は、科学の世界でも注目度が非常に高い。そうした中でここ数年、世界中の「スーパー・エイジャー」に関する長期研究の結果が発表され、同時に興味深い事実が明らかになってきている。

90歳以上人口のうち、それぞれ約3分の1に当たる人たちには、認知症または認知機能の低下が見られる。そして、研究者たちが特に注目するのは残る3分の1の健康な高齢者たちだ。今年2月に行なわれた米国科学振興協会(AAAS)の年次総会では、年齢を重ねてもなお豊かな人生を歩んでいる人たちに関する2件の研究結果が発表された。調査対象には、90代以上の高齢者も含まれている。

遺伝子以外も影響

研究結果の中で特に私たちの目を引く、あるいは勇気づけてくれると言えるのは、「年の取り方を決定付けるのは遺伝的な性質以上に、私たちの選択に関わっている」ということだ。身体的、社会的な面で私たちがどのような暮らし方をしているかによって、年の取り方が変わるという。言い換えれば、加齢の進行は私たちが考えていた以上に、自分の意思でコントロール可能だと見られるということだ。

結果が発表された研究の一つは、「The 90+ Study」と題して行われたもの。その名のとおり90代の人たちに関する調査で、対象者の生活の可能な限りあらゆる側面について、15年にわたって追跡した。身体測定の結果に加え、社会生活や生活習慣、生前と死後(調査期間中に亡くなった場合)における複数回の脳スキャン検査の結果などを分析している。もう一方は、「スーパー・エイジャー」に関する研究で、認知機能と記憶能力が実年齢を何十歳も下回る80代の男女について調べた。

これらの調査の結果、年の取り方に大きく関わっているとされた第一の要素は、社会との関わり方だった。長生きする人たちには、長年にわたる周囲の人たちとの親密な交友関係があった。

もう一つの重要な、そして興味深い点は、アルコールとカフェインの摂取だ。1日にグラス2杯程度のワインかビールを飲む人は、そうでない人と比べて長生きする傾向が認められた。カフェインもまた、1日当たり200〜400mgの「適量」を摂取していた場合、長生きにつながると見られる(「適量」を摂取していた人は、それ以外の人たちより長生きだった)。

そして、これはさほど意外とは言えない点だが、定期的に体を動かすこともまた、長生きに関わっている。寿命を延ばすという点では、1日わずか15分程度の運動で効果的だ。運動する時間が30分、45分と長くなれば、効果はさらに高まる。ただ、それ以上の長時間では、効果に大きな差がないことが分かっている。

また、私たちの感覚に反し、70代の頃に過体重だった人の寿命が長くなっていたことが確認されている。先行研究でも同じ結果を示すものはあるが、これまで体重や摂取カロリーは少ない方が寿命は長いとされてきており、意外な結果と言える。

寿命に影響を与えるもう一つの要因は、趣味だ。1日に数時間を趣味に費やす人はそうでない人に比べ、長生きの傾向があった。

身体と認知機能の健康度は別

上述の研究結果については、特に注意しておくべき点が一つある。それは、これらが認知機能の高さとはほぼ無関係だということだ。関連性が確認されているのは、体力のみにとどまる。

体力と認知機能の高さの関連性を裏付けるメカニズムは、完全に解明されたわけではない。だが、恐らく運動により血流が改善して酸素摂取量が増えることが、脳の可塑性(シナプスやニューロンを新たに形成する機能)を高めるのだと見られている。

また、脳内で起きていること、つまり脳の状態そのものは、認知機能と必ずしも一致しないことが、過去の研究結果で指摘されている。調査対象者の剖検(病変などを特定するために実施)の結果、脳の広い範囲にアルツハイマー病の特徴(斑点や繊維のもつれ)が確認された人の中にも、認知症状や精神症状が全く、またはほとんど見られない人たちがいた。

遺伝的特徴と生活習慣の関係は、脳内で起きる現象の影響を弱める可能性があると考えられる。生前に認知症の重い症状があったにもかかわらず、脳には上記のような変化がほとんどなかった人の例もある。こうした一連の結果に見られる"意外な点"は、日常の生活習慣の重要性をさらに増すものと言うことができそうだ。