新しい部署の先輩に「伊藤が困ってるぞ!」とかわりに訴える?

 どれも不正解です。

 正解は、ひたすら伊藤さんの話を聞く。たったこれだけです。

 これまで2000人以上の顧客やカウンセリングをしてきた私の経験上、”悩み相談”において、ポジティブ思考のリフレーミングや、何らかのアクションを求めている人は1%もいません。

 実は、99%の悩み相談は「ただ、聞いてほしいだけ」。「うんうん」「どんなことがあったの?」とうなずき、時折相手が使う単語を繰り返すだけでよいのです。

「ひたすら聞く?そんなの営業テクニックのビジネス書でも読んだことあるし、俺は聞き役に徹することを意識しているよ!」と思った方も多いかもしれません。

 しかし「聞き役」を本当に実践できているでしょうか? それが本当にできる人はそう多くないのです。

◆奥さんの話は最低30分は黙って聞け

 もう一つ例を出します。

 あなたは36歳のサラリーマン。結婚10年目の同い年の奥さんがいます。結婚当時はスレンダーな26歳だった彼女も、2人の子どもを出産し、家事が多忙を極めています。

 日曜日の夜。子どもが寝たあと、夫婦2人で缶ビールで晩酌をしています。

「今週末、運動会だから、パパ早起きして席取りよろしくね」
「おう」
「あー、お弁当もちゃんと作らないとな。何にしようかしら」
「なんでもいいよ」
「幼稚園に入るとほんとに大変ね。最近、1ヶ月で3キロも太っちゃったの」
「そうなんだ。別にジムに行くならお金は出すよ」
「ジムって自分から通わないとダメでしょ? 続かないわよ。忙しいし。朝はお弁当だし、昼は掃除と洗濯があるし、夜はもう子どもを迎えにいって夕飯でしょ?」
「じゃあ、少し高いけどライザップみたいなパーソナルトレーニングは? それなら食事も管理してもらえるし。ちょうど臨時ボーナスが入ったからそれはプレゼントってことで!」
「う〜ん…」
「いいの? ジムいかないの?」
「あのさ、私のこと全然わかってないわよね?」
「え?」
「もういい。私も寝る」

 そう言って、奥さんは飲みかけのビールを流しに捨て、ベッドに向かってしまったのです。

◆「聞くだけ」は最低20分は時間をとれ

 これ、みなさんも同じ状況ならば似た行動を取ってしまうのではないでしょうか。

 この場合も、ひたすら「奥さんの話を聞く」が正解だったのです。

「最近太った」と奥さんに言われたときは「そんなことないよ。キレイだよ」と答えるべきでもなく、また奥さんは「痩せるためにはどうしたらよいのか知りたい」と思っているわけでもない。

 相手の意図は「私の話を聞いて」。

 ただ、これだけです。

 つまり、悩み相談のほとんどの状況では、相手はそもそもポジティブシンキングを求めていないのです。

 かつて、私の同僚が、友人からリストラされたことを相談されて「むしろいいチャンスだと思いなよ! 独立するきっかけだと思えば?」とポジティブ思考でアドバイスしてしまい、相手に逆ギレされて絶交されたことがあります。

 とにかく、人との会話においてポジティブ思考はとても危険なのです。

 というわけで、相手の話を聞くときは私の経験則的に最低20分、できれば30分は聞く側に徹することをおすすめします。その結果、単に聞いてほしいだけなのか、解決策を求めているのかを判断してください。

 相手から「話がある」と相談されたら、このどちらかを言えばOKです。

1「何があったの?」
2「何か、辛いことがあったの?」

 あとはひたすら「それで?」「うんうん」とうなずくだけです。

 20分ほど経ったところで、相手の話が一通り終わったとします。そのタイミングでこちらが口にすべきなのは「どうしたいの?」ではなく、「どうだった?」です。