ヤフーは6月の株主総会で社長交代を予定している(撮影:尾形文繁)

財務面での企業の真の力を探る「新・企業力ランキング」。成長性、収益性、安全性、規模の4つの観点から、それぞれの財務指標(3年平均)を用い相対評価(多変量解析の主成分分析による)。各得点を合計して作成した。

12回目となる今回も、ランキング対象は2017年9月1日時点で上場している一般事業会社(銀行、証券・先物、保険、その他金融は除く)の財務データが取得可能な3431社とした。

首位は昨年2位のヤフー

ランキング1位は昨年2位のヤフー。総合得点は3766点。成長性931点、収益性835点、安全性1000点、規模1000点という内訳だ。2015年8月にアスクルを完全子会社化し、売上高営業利益率、ROAなどの利益率指標は低下。収益性(835点)は2015年928点、2016年879点と2年間で100点近くダウンした。


しかし、2017年3月期の売上高は8537億円と2015年4284億円から倍増。情報・通信業で、日本を代表する会社の一つとなり規模得点も1000点となった。自己資本比率も低下気味だが、依然2017年3月期で60.7%と安全性は高い。

『会社四季報』2018年2集春号によると、2018年3月期の売上高は9220億円で1兆円企業も目前となった。ただし、利益率などはかつての圧倒的な高さではなく安定成長の時期に入ってきたと言えそう。IT技術を活用した社会課題解決にも積極的で幅広いステークホルダーから信頼される大手企業として風格が増してきている。

2位は昨年5位から上がったキーエンス(3718点)。FAセンサーなど検出・計測制御機器大手の同社は、生産は国内の他社工場などに任せる「ファブレス企業」の代表格。成長性861点、収益性857点、安全性1000点、規模1000点と安全性、規模に加えて成長性、収益性の高さで2位まで浮上した。

同社は無借金経営で安全性の高さが際立つ。さらに、ここ数年、変則決算で若干わかりにくいものの売り上げも大きく増加。2018年3月期は5000億円を見込む。利益水準も高く営業利益率も50%を超えている。

このように業績は申し分なく、株価は最近5年間ほぼ右肩上がりに推移。成長性の期待からか、ESG(環境・社会・ガバナンス)の情報開示はほとんどないにもかかわらず、開示情報から評価するというESGインデックス銘柄に選ばれたりもしている。インデックス作成会社も批判覚悟で組み込みたくなる銘柄のようだ。

3位は昨年4位から1つ順位を上げた日本ペイントホールディングス(3717点)。アジア合弁会社の連結化で売上高は2015年3月期2605億円から2016年3月期は5357億円まで増加。その後、決算期変更を経て2017年12月期は6052億円とさらに成長している。

売り上げの急増などで、成長性は1000点の満点。収益性784点、安全性944点、規模989点とバランスよく得点した。化学業界では、18位花王(3525点)、19位信越化学工業(3521点)などを抑え、2年連続の業界トップとなった。

ただ、シンガポールの筆頭株主からの株主提案で急遽、3月28日開催の株主総会で社外取締役を5人受け入れる意向を示すなど、ドタバタ感も漂う。ESG面の開示は十分ではなく、サステナビリティ(持続可能性)の面では課題が多そうだ。

SUBARUは3連覇ならず

4位は昨年まで2年連続トップだったSUBARU。総合得点は3694点。成長性864点、収益性840点、安全性990点、規模1000点という内訳だ。

2017年3月期の売上高は3兆3259億円。昨年3兆2322億円から2.9%増。ただ、営業利益は前年(5655億円)から27.4%減の4108億円。減益などが響き、成長性は864点と昨年993点から大きくダウン。収益性も悪化し、首位陥落となった。

5位は昨年3位の村田製作所(3640点)。世界トップのセラミックコンデンサーが柱の同社は成長性819点、収益性821点、安全性1000点、規模1000点と成長性・収益性が低下し、順位も若干下げた。2017年3月期は売上高1兆1355億円、当期利益は1560億円で前年の最高益更新(2037億円)から23.4%減。自己資本比率も82.9%と高く財務基盤は厚い。ただ、2018年3月期は増収増益予想で復活の可能性も高い。

6位は昨年75位から急上昇したミクシィ(3629点)。成長性1000点、収益性1000点、安全性881点、規模748点と成長性、収益性が高得点。2013年10月に提供開始の「モンスターストライク」が収益の柱で2017年3月期は売上高営業利益率43.0%、ROE39.8%と収益力は高水準。ただ、今後は売上増加も踊り場を迎える見込み。次の一手が求められる。

7位はリクルートホールディングスの3623点。自己資本比率の高さなどで安全性は1000点、成長性も841点と高く10位入りとなった。8位は半導体製造装置世界4位の東京エレクトロンで3615点。売上高は2013年3月期の4972億円から2017年3月期は7997億円に増加するなど成長性は831点。2018年3月期は1000億円を超える見込みでさらに順位アップも期待できそうだ。

各業種のトップ企業もいくつか見ていこう。建設業は21位積水ハウス(3520点)がトップ。食料品は35位味の素(3475点)、医薬品は15位アステラス製薬(3567点)だった。その他製品は67位凸版印刷(3415点)が98位大日本印刷(3353点)を抑えた。小売業は10位ファーストリテイリング(3608点)が83位ユニー・ファミリーマートホールディングス(3378点)、84位スタートトゥデイ(3376点)、86位セブン&アイ・ホールディングス(3375点)を大きく離している。

過去12回のランキングトップを見るとその時代で強い企業は大きく変わっていることがよくわかる。


第1、2回トップの武田薬品工業は今回153位(3267点)。第3回から5回まで3年連続トップだった任天堂は昨年307位から134位(3293点)に上昇。「スイッチ」の世界的大ヒットで2018年3月期の業績は急回復。来年は上位復帰が期待できそうだ。任天堂を上回る4年連続トップ(第6〜9回)だった国際石油開発帝石は68位(3404点)となっている。

第4回からほぼ5位以内だったヤフーは今回初のトップとなった。ただ、過去のケースを見ていると上位を維持するのはかなり難しい。どこに次の成長ビジネスを定め業績をあげていくのか。同社の動きに注目したい。

■第12回新・企業力ランキング(東洋経済・上場企業財務評価)について
東洋経済新報社「財務・企業評価チーム」が作成。アドバイザーは明治大学大学院商学研究科の山本昌弘教授。東洋経済が保有する財務データを使い、多変量解析の主成分分析手法で成長性、収益性、安全性、規模の4つの分野で評価した。
対象会社は原則として2017年9月1日時点に上場している一般事業会社で、銀行、証券・先物、保険、その他金融を除き、各新興市場を含む。決算期は2017年3月期までが対象。財務データは上場後の決算で直近3期平均(最低1期は必要)を使用。指標データなどで分母がマイナスになり計算ができない場合、その期は「計算不能」となる。
決算ベースについては、各期とも連結優先。ただし、連結開始や廃止などで連結と単独が混在する場合もある。また、変則決算がある場合は6カ月以上の決算期のみ使用。売上高、営業利益、経常利益、当期利益などのフロー項目は12カ月に調整した。
分析手法として使ったのは多変量解析の主成分分析。この手法は多数の変数を要約し、少数の情報で全体の特性を代表させることができる。財務データのような多数存在する項目を少ない情報に集約でき、総合評価が可能になる。
主成分分析で求められた第1主成分得点を偏差値化し、異常値をならすために最大70、最小30に変換。さらに最高1000、最低500に調整して各分野の得点とした。4つの評価分野の各得点を合計したものが総合得点となっている(総合得点の最高は4000点)。
■ランキング算出に使用した財務指標
【成長性】売上高増減率、営業利益増減率、営業キャッシュフロー増減率、総資産増減率、利益剰余金増減率
【収益性】ROE(当期利益÷自己資本)、ROA(営業利益÷総資産) 、売上高営業利益率(営業利益÷売上高)、売上高当期利益率(当期利益÷売上高)、営業キャッシュフロー
【安全性】流動比率(流動資産÷流動負債)、D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)、固定比率(固定資産÷自己資本)、総資産利益剰余金比率(利益剰余金÷総資産)、利益剰余金
【規模】売上高 、EBITDA(税引き前利益+支払利息+減価償却費)、当期利益、総資産、有利子負債
注)EBITDAの支払利息と減価償却費はキャッシュフロー計算書掲載の数字を使用