「テレビドラマのような楽しい家庭」はテレビの中だけの話、と知るには純粋すぎた娘に、母親がかけるべき言葉とは(写真:bee32/iStock)

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24歳の娘は昨年3月に大学を卒業しました。大学在学時から時々アルバイトに行く以外は部屋に閉じこもるようになっていました。卒業後も相変わらず家では引きこもり状態でしたが、広告代理店に就職したと言っていました。
ところが昨年秋に、娘は自ら望んでAV女優になっていたことが発覚。娘から応援してほしいと言われた際、反対すれば死んでしまうような気がして、そこにしか生きる道がないならと渋々認めました。しかし現実は太ることを恐れて食事をほとんど取らなくなり、美肌のためとたくさん薬を飲み、以前より一層暗くなりました。
遅まきながらやはり辞めてほしいと伝え、今さら遅いと娘は拒んだものの押し問答の末、1月の契約満了で更新しないことを約束しました。結果的には今も撮影に通っています。それ以来一切私とも顔を合わさなくなりました。唯一の会話手段がLINEでしたが超長文のメッセージを寄こしました。
そのメッセージは「5年前、父親が浮気を繰り返し帰らなくなって離婚した原因も母親にある」「父親がかわいそう」「母親はヒステリーの祖母そっくり」「母親の資格がない人間は子どもを産むべきではない」「自分を産んだことを憎む」「母親と同じ血が流れている自分が大嫌い」「一緒にいたくないので家を出て行く」など、私への憎しみにあふれていました。
今ではLINEも通じなくなりましたが、娘の言うとおりだと思いました。私自身、母親から無視されたたかれて育ったため、母親が大嫌いです。私の両親の離婚を反面教師に楽しい家庭を築こうとしましたが、私たちが離婚した時、娘に「テレビドラマのような楽しい家庭がよかった」と言わせてしまいました。
引きこもりなら無理強いせずその気になるまで待とうと思い、何度か置手紙をしましたが、何の効果もありません。母娘断絶することが娘の幸福の入り口なら、私が家を出て行こうかとも考えています。どう思われますか?
娘から嫌われた母

引きこもりというよりは、母親への過度な反感か

お嬢様はとても多感な時に両親の不和を見ながら過ごし、不安な時期が長かったことが想像できます。「テレビドラマのような楽しい家庭」は、テレビの中だけの話と知るには純粋すぎたようで、とてもお気の毒です。あなたが娘にいつも弱腰だったり下手に出るのも、その辺の事情があるのでしょうね。

しかし、お嬢様は撮影には出掛けるのですから引きこもりというよりは、母親への過度な反感と反抗的態度が高じたものと感じます。家を出て行くのは母親ではなく娘のほうだと思います。

あなた様のご相談文を3分の1に要約させていただきました。お嬢様はワーキングホリデーで2年間もカナダで過ごすなど、積極的な面もお持ちの方ですね。それに最後の彼女のLINEの超長文のメッセージに、誤解があるにせよ彼女の利発な面を私は感じます。

母娘間のパイプをつなぐ努力を

そうでなければ無視するか黙って引きこもるだけで、あのような文章は書けません(あの段階での話です)。私なら娘のその利発さに賭け、唯一の伝達手段である置手紙をもっと頻繁に使い、母娘間のパイプをつなぐ努力をします。


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何度か置手紙をされたようですが、一人の世界に閉じこもっている娘の心をこじ開けるような内容でしたか? 私なら娘がそのような撮影に通い、話し合いや監禁で辞めさせられそうにない状況では失う物は何もないと背水の陣を敷き、どんな罪も自分が被って娘の言い分をまず認め、詫びる置手紙をせっせと書きます。

「自分自身が母親から無視されたたかれて育ったこと。楽しい家庭を夢見て結婚し、子どもを産んでとてもうれしかったこと。努力したけれど離婚に至り、子どもにも理想的な育て方ができなかったことはとてもつらいこと。

自分は努力したつもりだが力及ばず、離婚は自分にも落ち度があったかもしれないこと。父親がかわいそうなら会いに行っても構わないし、父親が許してくれるならそこで暮らしても構わないこと。母親(娘の祖母)はヒステリーで自分も大嫌い。知らない間に似てしまって迷惑をかけてしまっていたようで、それも詫びること。

あなた(娘)の人生はこれからで、誰にも隠さずに言える職業につくことが、良い出会いや楽しい人生の第一歩であること。生まれてきてよかったと思える人生を切り開くのも、これからは自分自身であること。家を出て行くのも反対しないこと。どんな形になっても母親として最後まで見守っていること」などです。

元夫の不義の一端まであなたが担うのは不本意でしょうが、ここで弁解や父親の悪口を言うのは得策ではありません。娘の憎しみが少しでも和らぐよう、これからもっと努力していくつもりだと、彼女の心にまず訴えることが大切です。一方通行で何の反応もないかもしれませんが、彼女のあなたへの反感が、この辺の誤解や思いの至らなさからきている以上、一度は伝えなければならない話題で、今のところ唯一のアプローチです。ダメでもともと、しつこく続ける必要もありません。

あなたが家を出て行くということは「娘に母屋を明け渡す」、または「母屋を取られる」ことと同じです。これは不思議なことですが、母娘の力関係まで決定的に逆転する現象をよく起こしますので反対です。

私の知人宅で起こったことです。娘が母親を嫌っているその程度は異常なほどでした。それでも同居している以上、娘が母親をどれだけバカにしようと無視しようと、家庭内は母親としての出番で満ちています。母親の居場所は厳然としたものでした。

ところがある時小さな母娘のトラブルがきっかけで、数日間だけ母親が家を出て、その娘の心を静める話し合いが家族でなされました。そしてその瞬間から、娘は母親の仕事をすべて完璧にこなし、母親に一歩も家の敷居をまたがせなかったのです。電話も取らないのでその母親は娘に、母親としての説教どころか人を介して「家に入れてほしい」と哀願する立場になり、押し売りを追い払うように拒否され続けました。

息子夫婦に気を使って母屋を渡し、狭い部屋に引き下がったばかりに親より偉いと勘違いした嫁に軽んじられる舅・姑と同じです。往々にして住環境は人間の力関係を決めます。

母親から断絶してはいけない

あなたには娘との別居は母娘断絶を意味するようですが、それは違います。娘から家を出て行くと言っているのですから、巣立ちです。あなたはご自分の思いを娘に伝えたあとも彼女の心が開くまで待ち続ける母に変わりなく、あなたから絶対、断絶を考えるべきではありません。

器や立場が人を作ることが多いように、その職業で自立させることに心配は尽きないことでしょう。しかし彼女はあなたへの反感で凝り固まり、外で会うのは撮影現場の人だけです。今のままでは彼女の中で誤解が解けたり、親には親の事情があったと理解できたり、もっと健全な生活に目を向けるきっかけもすき間もありません。

お嬢様は「仕事」に出掛け、歪んでいますが体形維持に積極的です。彼女を「引きこもり」と決めつけるのは彼女の心の闇を見誤り、対策を間違わないか危惧します。各都道府県には「ひきこもり地域支援センター」というのがありますね。あなたの言うお嬢様の「引きこもり」がここに該当するかどうかはわかりませんが、あなただけでもまず専門家の助言を仰ぐのも、母娘にとって何かのきっかけやすき間づくりになると思われます。

そして当面は、先の置手紙作戦です。撮影現場からお払い箱になる年齢など、何が彼女の転機になるかわかりません。その時にあなたが傍にいることがとても重要です。テレビの中のような時間内の感動的な和解を求めず、良い母になるよう学びながら、いつまでも待っていることを伝えておきましょう。

「母親だって間違いだらけ失敗だらけの連続だ、それをいちいち憎しみに変えるな」と教えるのはその後ですね。