プログラマティック広告とその他の広告の境界線は曖昧になりつつある。そんななか、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、プログラマティックとダイレクトセールスの担当チームを統合してしまった。

公にもアナウンスされている広範な組織再編成の一環として、ニューヨーク・タイムズは昨年12月、プログラマティック広告のセールスチームを全体のセールス部門のなかへ、静かに取り込んでしまった。これは広報担当者が認めている。

このプログラマティック専用のセールスチームが発足したのは、2013年春。セールス部門全体の一部という当初の計画だったが、しばらくして独立したチームとして分離された。ニューヨーク・タイムズのコアセールスチームのメンバーたちは現在、プログラマティック広告に関するトレーニングを受けることになっている。それによって、彼らが提供するどの種類の広告プロダクトも売ることができるようになるためだ。

「プログラマティックは今後も継続して我々のビジネスの重要な一要素であり続ける。プログラマティックの販売は、メインのセールス部門に統合するのに値するほどの重要性を持っている。プログラマティックのセラーと広告主をサポートするためのオペレーションチームを編成する」と、広報担当者はeメールで返答した。

セールスチーム内の摩擦



業界のエグゼクティブのひとりは、ニューヨーク・タイムズにおけるこの再編成の動きは、メディアエージェンシーたちがパブリッシャー側のセールス担当者を統一させようとする動きと呼応していると指摘する。直近のオムニコム(Omnicom)の収支報告によると、広告主たちはエージェンシーのトレーディングデスクではなくメディアエージェンシーを通すようにプログラマティック支出をシフトさせつつある。

WPPが所有しているグループ・エム(GroupM)の[m]プラットフォーム([m]Platform)も同様に、広告主はメディアエージェンシーを通してプログラマティックのバイイングを行えるようになっている。こういった変化の結果、メディアエージェンシーのバイヤーたちは、パブリッシャーにおいて、ひとりのセールス担当者があらゆる種類の広告バイイングを処理することを求めていると、この人物は語った。

広告バイヤーからのこういったプレッシャーが原因で、ニューヨーク・タイムズのプログラマティック専用のセールスチームとダイレクトセールスのチームのあいだで摩擦が生まれたのかもしれない。そしてその場合、ダイレクトセールスのチームの方がより収益をもたらすために、衝突においてはプログラマティック側が譲る形となっていたのだろうと、この人物は推測している。

12月の再編成以降、プログラマティックセールスのスタッフのうち、何人かがニューヨーク・タイムズを去っている。プログラマティック広告のディレクターであったサラ・バドラー氏が、そのひとりだ。彼女は再編成の時点において、プログラマティックセールスチームのもっとも古いスタッフとされていた。バドラー氏は今月、ドットダッシュ(Dotdash)のプログラマティック収益・戦略部門の責任者として就任している。今回、本稿のためのコメントは、彼女からはもらえなかった。

「統合の方向に向かう」



「この業界は統合の方向に向かって動いており、サプライチェーンの透明性にフォーカスしている。バイイングとセリングの両方においてセールスチームを一本化し、提供される価値を最大化しようとすることは理にかなっている」と、アドテク企業メタエックス(MetaX)のグローバル最高収益責任者であるアラーナ・ゴンバート氏は語る。ゴンバート氏はインタラクティブ広告協会(IAB)プログラマティック協議会の元共同議長だ。

ニューヨーク・タイムスの広報担当者はまた、再編成の結果、プログラマティックセールスのチームのうち何人かは希望・早期退職をしたことを伝えてくれたが、具体的な人数については教えてくれなかった。タイムズ社外の情報源によると、プログラマティックのチームの大部分が去り、残ったスタッフは新しく編成されたセールスチームに参加したとのことだ。

プログラマティック部門とダイレクトセールス部門のあいだの軋轢は、プログラマティックがいかにセールスチャンネルとしてパブリッシャーたちにとって、特にニューヨーク・タイムズにとって、重要になったかを示唆している。リサーチ企業のeマーケター(eMarketer)の計算によると、今年アメリカのデジタルディスプレイ広告に広告主たちが費やすであろう391億ドル(約4兆円)のうち、82%はプログラマティック経由となるという。

2017年、ニューヨーク・タイムスは海外における広告ビジネスを増強するためプログラマティックにそのフォーカスを向けた。そしてカスタム広告ユニットの一部もプログラマティック経由で売りはじめたのだ。しかし、プログラマティックセールスを拡大している大手メディア会社は彼らだけではない。Vox Mediaは昨年、自らのハイエンド広告もプログラマティックで売りはじめた。そして、長年プログラマティックを敬遠していたBuzzFeedも折れ、サイト上に自動化されたバナーを導入するようになった。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)