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昨年9月に経営破綻した米玩具販売大手のToys“R”Usが3月15日 (現地時間)に、米国内の全735店を閉店すると発表した。経営不振の原因はオンライン戦略が遅きに失したことだ。オンラインはAmazonと提携。しかし、そのAmazonが玩具販売のライバルでもある。その矛盾のごたつきが長引き、独自のオンライン戦略を講じないまま、Amazonだけではなく、Wal-MartやTargetなど実店舗型からオンライン事業を強化する小売大手にも市場を奪われた。

色んなおもちゃに触りたくて子供が行きたがるから、Amazonで同じ商品を同じ値段で買えてもToys“R”Usにはよく行っていた。子供が友達の誕生会に持っていくプレゼントをぎりぎりに買うこともよくあって、そういう時はToys“R”Usである。そんなリアル店舗の強みを発揮できていたToys“R”Usですら無くなってしまうのは、今の米国の実店舗型小売りの厳しい現状をよく示している。

昨年米国において実店舗型小売りの閉鎖ペースが記録的な水準を超え、今年も閉鎖ラッシュが続いている。その前に閉鎖が相次いだのは2008年〜2009年だったが、その時はリーマンショック後の景気減速の影響だった。昨年はトランプ政権誕生の好影響がまだ景気に反映されていたにも関わらず、実店舗型小売りが次々と経営不振に陥った。その状態が長引く現状は、窮しているというより、破壊されているという様相だ。

アマゾンが取り扱い品目をどんどん増やし、デジタル書籍、音楽、映画・ドラマなどのストリーミング配信などコンテンツサービスも拡大し、様々な領域でリアル店舗の売り上げを奪い、市場での影響力を強めている。では、リアル店舗に未来はないのだろうか。答えは「イエス」であり、「ノー」である。

我が家から車で30分ぐらいの距離にあるモールは、スポーツ用品販売大手Sports Authority (2016年に破産)が撤退した後の大きなスペースを埋められずに店舗スペースを縮小させた。そんなモールの中で元気なのはApple Storeであり、またAmazonが同社のデバイスを体験してもらうためのキオスクを置いている。昨年Amazonが買収を完了させたスーパー大手Whole Foodsも、買収後から継続的にサービスを改善しており、着実に買い物客を増やしている。

Amazonはどこのモールも欲しがる優良テナントであり、リアル店舗を通じた顧客とのつながりを着実に強めている。実店舗型の売り上げをオンラインが奪い、そしてEコマース市場の成長の過半数をAmazonが占めていることに注目が集まっているが、今本当に注目すべきなのはネットに軸足を置く企業によるリアル店舗市場への進出が進んでいることだ。

それらから見えてくるのは、従来の実店舗型小売りが破壊された後に構築される次代のブリック・アンド・モルタルである。眼鏡のWarby Parker、メンズウエアのBonobos、インドアサイクリングスタジオのPeloton、電気自動車のTeslaなどは、リアルなスペースを販売店舗ではなくショールームとして、オンラインのセールスチャンネルを補完している。

販売店舗ではないので、リアルな空間は1ドルの売り上げも生み出さない。しかし、試着や試用、専門家からのアドバイスといったリアルな空間でのサービスが新たな顧客との接点になり、ネットとリアルの両面から顧客のことを深く知り、そして個人ごとにカスタマイズした商品の提案、価格設定やマーケティング、サービス展開につなげる。そうしたリアルな空間の使い方は「ブリック・アンド・モルタル 2.0」と呼ばれ、小売りだけではなく、飲食業、エンターテインメント、金融、オフィススペース、ローカルサービスなど様々な分野に広がっている。

ブリック・アンド・モルタル 2.0では「柔軟性」がキーワードになっている。たとえば、小売りならリアルなスペースに販売用の在庫は置かず (販売はオンライン任せ)、サービスに徹することで、小さなスペースで効果的に顧客をサポートする。常設する必要もない。新製品を発売する時だけキオスクを置いたり、オンラインファイナンスを提供する会社が確定申告の時期だけ直接顧客サポートを行う場所を設けるなど、むしろ短期間の提供の方が主流になる可能性も指摘されており、ブリック・アンド・モルタル 2.0と共に1カ月や1週間または1日単位で柔軟に借りられるマイクロ・リースの成長も予測されている。

大きな駐車場を持つモールや大型量販店は車社会の産物といえる。それがオンライン・ショッピングの成長で人々が出かけるペースが落ちて今のような窮状である。将来、自動運転カーが実用化され、人々が車を持たずに必要な時にオンデマンドで車を呼ぶような社会になったら、巨大な倉庫と駐車場を持つ郊外のショッピング施設は人々のライフスタイルにフィットしなくなるだろう。ショッピングを含め、私たちとリアルな空間の関係は、今日とは全く異なるものになりそうだ。

Sports Authorityが破綻した時もそうだったが、Toys“R”Usも好調な日本のトイザらスは今後も事業を継続する。日米の実店舗型小売りの現状は明暗が分かれる。もちろん日本が「明」なのだが、諸手を挙げて喜べる状況でもない。CD販売からダウンロード販売やストリーミングサービスに移行せず、欧米における音楽の楽しみ方の大きな変化についていけていない音楽産業と同じような停滞のリスクを感じるのも否めない。ブリック・アンド・モルタル 2.0は広い米国よりも限られたスペースを有効に使いたい日本の方がフィットすると思うのだ。