テレビのネットワーク局とプロバイダーは、従来型のコンテンツベースの広告と、デジタル時代のオーディエンスターゲティングの融合を進めている。そんな彼らに、YouTubeが挑戦状を叩きつけた。

YouTubeは1年前から、ブランドに掲載広告のターゲティングを認めている。これは、検索履歴などGoogleが集めたYouTubeの外での人々の行動履歴の匿名化された情報に基づくものだ。そして今回、同社は検索ベースのターゲティングのオプションを広告商品「Google Preferred(グーグル・プリファード)」に組み込んだ。このプログラムは、YouTubeで人気の高いチャンネル上位5%のなかから選ばれた、カテゴリー別のラインナップにブランドの広告を掲載するというものだ。

新たなターゲティング機能が追加されたことで、たとえばGoogle Preferredの音楽チャンネルのラインナップを購入したブランドは、こうしたチャンネルを視聴するユーザーに広告を提示できるだけでなく、家電製品を検索した人たちにも提示できるようになる。

「5年前に我々がGoogle Preferredをスタートしたとき、広告主はコンテンツというレンズを通してYouTube全体をもう少し簡単に見渡して、テレビと同じように広告枠を買いたいと考えていた」と、Googleのエージェンシー・メディアソリューション担当バイスプレジデント、タラ・ウォルパート=レビー氏はいう。「オーディエンスの関心全体をカバーして、最適なメッセージを最適な相手に、もっとも魅力的なコンテンツとともに提示することが、ようやく実現できるようになった」。

周辺関係者の反応



「Googleは自らの検索や地図や数々のアプリのなかから最高のデータを取り出し、それをテレビ風のサービス、つまりGoogle Preferredに利用している。賢いやり方だ」と、グループ・エム(GroupM)の最高デジタル投資責任者、スーザン・シーコファー氏はいう。グループ・エムのクライアントは毎年Google Preferredへの投資を増やしていて、とりわけ若い視聴者をターゲットにするクライアントにその傾向が顕著だと、彼女はいう。

オーディエンスのターゲティング機能を備えたテレビ型の広告商品を導入することで、YouTubeはライバルのテレビ局に対して先手を打った。テレビ局の方も、自らの広告市場シェアに食い込んできている、GoogleやYouTubeのようなデジタルメディア企業に勝つために、テレビとオーディエンスターゲティングを融合させたいと考えているのだ。また、YouTubeの動きには、先日Google Preferredに似た広告商品の提供を開始したFacebookに対する牽制の意味もありそうだ。

先月、テック業界ニュースサイトのRecode(リコード)が主催したコードメディア(Code Media)カンファレンスで、21世紀フォックス(21 Century Fox)のプレジデント、ピーター・ライス氏は、「すべてのテレビ局がインターネットに移行すれば、テレビ広告はデジタル広告と同じようにターゲティングできるようになる」と述べた。彼は続けて、そうなれば放送局は広告市場でデジタルメディア企業に奪われた「シェアを取り戻せる」とした。

テレビ広告との競争



シーコファー氏は、融通のきくテレビ広告が登場することに期待を寄せるものの、それがデジタル広告の売上を奪うことはないと考えている。「デジタルの勢いを削ぐことはないだろうが、テレビの広告収入減少を食い止める助けにはなるはずだ」。

YouTubeが、将来実現するであろうターゲティング可能なテレビ広告を脅かしたかどうかはわからない。だが同社は、人々の関心を金に変えられるのはテレビ広告だけという定説を覆そうとしているようだ。

ウォルパート=レビー氏は、YouTubeの依頼でイプソス(Ipsos)が行なった調査の結果を引用し、オンライン動画広告に関心をもつ米国人はテレビ広告の3倍にのぼり、またYouTube広告に関心をもつユーザーは、ほかのソーシャルメディアの2倍だと述べる。

ブランドセーフティ問題



YouTubeは広告ターゲティングの改善を試みているが、ユーザーが視聴する動画の内容については依然として問題が山積みだ。1年前、YouTubeは問題のあるコンテンツに広告を提示したことで批判を浴び、多くの有名ブランドが広告出稿を停止した。

このボイコット騒動のあと、YouTubeはコンテンツに神経をとがらせる広告主のために、よりマイルドなプラットフォームへと変わる方法を模索してきた。ブランドセーフティ問題が噴出してから約1年が経過した今年1月、同社はGoogle Preferredのチャンネルへの広告掲載にあたっては事前にすべての動画を人の目でチェックすると発表。またインテグラルアドサイエンス(Integral Ad Science)などの企業と提携し、ブランドにとって安全な動画にのみ広告が掲載されていることを第三者による審査で証明する試みを開始した。

「(YouTube広告出稿を取りやめた)ブランドの多くはすでに戻ってきているか、こうした取り組みを評価して再開を検討している」と、ウォルパート=レビー氏はいう。

グループ・エムのクライアントにもYouTube広告出稿を停止したところが何社かあったが、ほとんどは再開していると、シーコファー氏はいう。グループ・エムも、ブランドセーフティのための独自の取り組みとして、動画分析会社オープンスレート(OpenSlate)と提携し、YouTubeのどの動画にクライアントの広告が表示されるかをチェックしている。

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)