いま、企業こそが「地域」に貢献すべき理由|カヤック・柳澤大輔

写真拡大 (全3枚)

カヤックの新たな活動「鎌倉資本主義」の目的は、お金以外の幸福の指標を探すこと。そう前回の記事で語った代表の柳澤。なぜカヤックは「企業」として「幸福の追求」を目指すのか。柳澤の企業観が明らかになる。

企業の特性は「お金を稼ぐこと」ではない

岩佐:気になっているのは、なぜカヤックという一企業が新たな幸福の指標を考えているのか、ということなんです。幸福について探求するなら、利益や市場に左右されない政治家やNPOの方が向いているのではないでしょうか。

柳澤:僕は、企業の特性は「お金を稼ぐこと」ではなく、「数字を追いかけること」だと考えているんです。数字でKPIを設定して報酬を与えるという企業の仕組みがあるから、社員一人一人では不可能な大きな成果を出すことができます。

僕はGDPという指標は適切じゃないと思っていますが、指標を追いかけるというやり方は否定したくないんです。だから正しく幸福を表す指標さえ決めることができれば、それを追いかけるのが得意な企業によって、より幸福な社会が実現すると思っています。

岩佐:企業であるカヤックの活動として取り組む「鎌倉資本主義」ですが、社員たちを巻き込むための工夫は考えておられますか。これまでも地域貢献の取り組みをされていましたが、これはカヤックとは別組織の「カマコン」としてやられていました。

柳澤:社員にもなんらかの指標を示したいですね。これまで所得が上がるとそれに比例して幸福度も上がると言われてきましたが、現代ではこれに違和感をもつ人が増えてきています。

だから、お金以外に幸福度と相関する指標を見つけたいんです。例えば、「何かやりたいことがある状態」と幸福は相関関係がありそうなので、その実感をグラフにするとか。もし、地域活動への参加回数と幸福度に関係があるなら、会社としてお金を出して強制参加させてもいいかもしれません。



いま、「企業」は何をすべきか

岩佐:これはカヤックに限った話ではないですが、いま「企業」は人々の幸福のために何をすべきなのでしょうか。一企業であるグーグルが世界中の情報へのアクセスをコントロールできる現代は、企業の力が国家を超えるほどに強まっているということもできます。

柳澤:大きく分けて2つの選択肢があると思っています。まず、影響力を強めた企業がより手広く社員の面倒をみていく方向。カヤックがいなくても地域と個人が結びつくことはできるかもしれませんが、企業が力を持っているのなら、企業が音頭をとって両者が繋がるのをサポートするのもアリだと思うんです。

もう一つは、システムで数字の部分だけ管理して、残りは個人の自由に任せるというやり方ですね。テレワークやITツールなどによって働き方が自由になったということは、その分企業の力が弱まったと捉えることもできます。個性的な人事制度やIT技術でなるべく自由に働いてもらおうとしているカヤックは、こちらのタイプだとも言えます。

岩佐:企業が従業員の生活まで守るか、逆に自由にするかを選ぶということですね。では、逆に企業にとって地域貢献に力を入れることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

柳澤:これも2種類あると思っていて。一つは新規事業のタネ。カヤックでは市場規模をみてじっくり計画を立てるのではなく、とりあえずチャレンジしてPDCAを回してダメだったら素早く手を引くというやり方で新規事業を始めることが多いです。地域貢献もその一つとして、成功しそうな事業は続けてそうでない事業は閉じるという事業ごとにフラットな目線で評価することもできるでしょう。



一方で、地域事業に力を入れた時点で、すでに社員に住居を斡旋できるなどのメリットが生まれています。一定以上の規模で売上とは違う利益を得ることができれば、続ける価値はありますよね。

岩佐:短期的な利益だけでなく、従業員のモチベーションなども含めた長期的な利益で判断したいということですね。

柳澤:そうですね。とはいえ、まだそこまで具体的な段階ではなく、まずは土壌を作るのが大切だと思っています。お金に代わる幸福の指標を見つけるためには、企業や地域がどんどん協力しなければなりません。地域の人も利用できる「まちの社員食堂」「まちの保育園 鎌倉」にいろんな人が集まってくれれば、それだけ思いがけないコラボや取り組みが生まれやすくなりますよね。

「数字を追いかけること」が得意な企業が地域にコミットすることで、新たな幸福の指標を見つけられる。第3回では、カヤックという組織を超えた柳澤個人の思いが語られる。あえて「経営者」という立場で柳澤が「面白さ」を目指す理由とは──。

岩佐文夫の『次なる資本主義をたずねて』
過去記事はこちら>>