ヤクルト・石川雅規【写真:荒川祐史】

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NPB通算200勝以上は通算24人、なぜ困難になったのか

 NPBの通算最多勝は、金田正一の400勝だ。200勝以上は24人いるが、山本昌が2008年8月4日に200勝を達成してから、大台をクリアした選手はいない。

 NPB通算勝利数5傑は以下の通り。

1金田正一 400勝(1950-1969)
2米田哲也 350勝(1956-1977)
3小山正明 320勝(1953-1973)
4鈴木啓示 317勝(1966-1985)
5別所毅彦 310勝(1942-1960)

 すべて昭和の時代の投手。200勝以上の投手で、平成になって投げていたのは、224勝の工藤公康(1982-2010)、219勝の山本昌(1986-2015)、215勝の村田兆治(1968-1990)、213勝の北別府学(1976-1994)の4人だけだ。なお、日米通算では、野茂英雄(201勝)、黒田博樹(203勝)が達成している。

 昭和の時代、エース級の投手は短い登板間隔で先発していた。先発で連投することさえあった。また、救援も掛け持ちしていた。登板数が多かったので勝利数も多かったのだ。

現役で100勝以上は9投手

 しかし、平成以降はローテーションが確立し、先発投手は1シーズンで28試合前後しか投げなくなった。また、先発、救援の分業も確立し、掛け持ちする投手もいなくなった。

 20勝投手は激減した。それに加え、最近はNPBのトップクラスの投手が100勝前後でMLBに移籍する例が多くなった。このことも“200勝投手絶滅危惧”の大きな要因だ。

 現役で100勝以上している投手は9人。カッコ内は昨年の実績。

1石川雅規(ヤ)156勝(4勝)
2杉内俊哉(巨)142勝(登板なし)
3内海哲也(巨)128勝(2勝)
4和田毅(ソ)126勝(4勝)
5涌井秀章(ロ)123勝(5勝)
6金子千尋(オ)116勝(12勝)
7上原浩治(巨)112勝(MLB)
8岸孝之(楽)111勝(8勝)
9松坂大輔(中)108勝(登板なし、ソフトバンク)

 ヤクルトの石川は現役唯一の150勝投手だが、昨年は4勝。今年1月に38歳を迎え、200勝は厳しいところだ。現役2位の巨人・杉内はあと8勝で過去48人が達成している通算150勝に届くが、2015年を最後に1軍で登板していない。

今季100勝到達の可能性がある投手は…

 他の現役100勝投手の中では、金子千尋が12勝を挙げている。あと3年このペースで投げることができれば150勝が見えてくる。しかしどの投手も200勝には程遠いのが現実だ。

 NPBでは100勝から50勝刻みで連盟表彰しているが、今季、100勝に到達する可能性があるのは以下の7人だ。

能見篤史(神)98勝 残2勝 (6勝)
大竹寛(巨)96勝 残4勝 (4勝)
成瀬善久(ヤ)96勝 残4勝 (0勝)
中田賢一(ソ)95勝 残5勝 (7勝)
館山昌平(ヤ)85勝 残15勝 (0勝)
メッセンジャー(神)84勝 残16勝 (11勝)
吉見一起(中)83勝 残17勝 (3勝)

 メッセンジャーは、MLB傘下出身の外国人投手としては、スタンカ、バッキー(いずれも100勝)に次ぐ3人目の100勝に挑戦する。昨年は故障で8月に離脱したが、フルシーズン投げることができれば十分可能だろう。

 100勝はこれまで134人が達成している。珍しい記録ではないが、現在では100勝投手は貴重だ。今季は何人がテープを切るだろうか。(広尾晃 / Koh Hiroo)