本格的な花粉症シーズンがやって来ました。近年は春に限らず年中、何かしらの花粉に悩まされる人が少なくありません。花粉に加え、ハウスダスト、PM2.5など、私たちを取り巻く空気中にアレルゲンが増加しているのでしょう。

花粉症の薬には第1世代の抗ヒスタミン薬と、抗アレルギー薬といわれる第2世代抗ヒスタミン薬の2つに分かれます。何が違うのでしょうか?

第2世代抗ヒスタミン薬とは?

かゆみは「ヒスタミン」という体内の物質が分泌されることで生じます。第1世代の薬は、ヒスタミンが分泌されて発生したかゆみを抑える作用があります。成分名としてはジフェンヒドラミン塩酸塩、フマル酸クレマスチン、マレイン酸クロルフェニラミンなどが代表的なもの。ジフェンヒドラミン塩酸塩は、かゆみ止めの「レスタミンコーワ」の有効成分です。

そして第2世代の薬は、かゆみを抑えるだけでなく、そもそもヒスタミンを分泌させないように作用する薬です。「第2世代抗ヒスタミン薬」と呼ばれ、その代表的な成分はフェキソフェナジン。花粉症の薬としてよく知られる「アレグラ」の有効成分がこれです。

このように、第2世代は単に第1世代より新しいというだけではなく、そもそもの働きが違います。では、どのように使い分けたらいいのか。

第1世代の薬はすでに出ているかゆみ症状に対して作用するので、比較的早めに効果が出ます。ただし、眠気や口の渇きなどの副作用が出やすい。薬局で処方される際には、「運転は控えてください」と注意されるお薬です。

第2世代の薬は、ヒスタミンが分泌されるのを抑える薬なので、花粉症の症状が出始める前から服用するのが効果的です。また、副作用が少なく、眠気もほとんど出ないのが特徴です(もちろん個人差はあります)。症状が出ている最中でも、副作用の少ない第2世代を飲むという選択はありです。

処方薬と市販薬の「アレグラ」は違うの?

以前は処方薬オンリーだった「アレグラ」ですが、2012年からドラッグストアでも市販されるようになりました。処方薬の「アレグラ」と市販薬の「アレグラ」(商品名は「アレグラFX」)はまったく同じですか?とよく質問されますが、有効成分はまったく同じです。成分量も同じです。

違うのは、用法だけです。市販薬の「アレグラ」はもっぱら花粉やハウスダストによるくしゃみ、鼻水、鼻づまりなど鼻炎性アレルギー症状に適用されます。お薬の箱にもそのように書かれています。

一方、病院で処方される際には、鼻炎性だけでなく、じんましん、皮膚疾患(湿疹、皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎)の症状にも適用されます。つまりモノは同じですが、鼻炎性アレルギー以外の症状については医師の診断が必要な薬だということです。じんましんやアトピーなどの症状が出た場合は、市販の「アレグラ」を安易に飲んではいけないということです。

抗ヒスタミン薬を飲みつづけても花粉症は治らない

ドラッグストアで「アレグラ」が買えるようになりましたが、価格は処方薬の「アレグラ」よりグッと高くなります。定価なら2週間分28錠で2000円ほどです。一方、処方箋で出る「アレグラ」は3割の保険適用で薬代だけでみると2週間分で500円弱です。薬代の他に診察代、調剤料などがかかります。それでも病院に行っている時間がない忙しい人にとって、市販薬は重宝でしょう。

第2世代の抗ヒスタミン薬には「アレグラ」以外にも、「アレジオン」という市販薬があります。有効成分はエピナスチン塩酸塩で、眠気や口の渇きなどが出にくい薬です。大きな違いは服用回数で、「アレグラ」が1日2回に対し、「アレジオン」は1日1回です。

費用面から見れば、病院に行って処方箋をもらい、「アレグラ」のジェネリック(後発医薬品)を処方してもらうのがもっとも低料金で済みます。処方箋に「フェキソフェナジン」と成分名が書かれている場合は、ジェネリックで薬代を安く抑えることができます。

ただし、いずれのお薬でも気をつけてほしいのは、いくら抗ヒスタミン薬を飲んでも花粉症は治らないということです。抗ヒスタミン薬は症状を抑えているに過ぎません。つらい症状を薬の力を借りて鎮めることは有効ですが、それだけではいつまでも薬から逃れられません。

アレルギーであるとわかっていれば、なるべく花粉をシャットアウトする工夫をしたり、アレルゲンに負けないようカラダ作りをするなど、抜本的な対策を取る必要があります。時間がかかることではありますが、この先ずっと花粉症に悩まされるよりいいのではないでしょうか? 

また、市販で手軽に買えることから、慢性的に飲みつづけてしまうことも問題です。どんな薬にも必ず耐性というものがあり、飲みつづけることで効き目は徐々に下がってしまうからです。抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬に限った話ではありません。長期間、飲めば飲むほどに効かなくなります。

アレルギー性鼻炎は悪化させると慢性になるリスクもありますので、つらい鼻炎をがまんする必要はありません。飲み過ぎに留意のうえで、抗ヒスタミン薬をうまく使ってください。

第2世代の抗ヒスタミン薬は眠気が出にくいのが特徴。でも飲みつづけるのは注意!



■賢人のまとめ
花粉症の薬として知られる抗ヒスタミン薬の「アレグラ」や「アレジオン」は、眠気や口の渇きなどの副作用が少ないのが特徴。ドラッグストアでも手軽に買えるようになりましたが、ずっと飲みつづけるのは考えものです。抗ヒスタミン薬をいくら飲みつづけても花粉症は治りません。根本的な改善策を取ることが、花粉症克服の近道です。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)など。