上司にはNGの言動とは?(写真:liza5450 / iStock)

もうすぐ新年度。学生生活を終えて、社会人として働き始める方は期待と不安で胸がいっぱいの時期かもしれません。
入社するとまず受けるのが新人研修。そこでは「名刺の渡し方」など一般的なビジネスマナーが伝授されますが、実際の職場では「正しい」と言われているマナーだけでは立ち行かなくなる場面がしばしばあります。
本稿では、マナーやスキルより先に最低限知っておきたい仕事のルールについて、企業コンサルタントや手土産コンシェルジュとして活動する平原由紀子氏の「入社1年目女子 仕事のルール」から抜粋してお届けします。

上司が間違っている場合、指摘して良いのか

上司は、おそらく働き始めて初めて出会う目上の存在。どう接したらいいか、迷うこともあるでしょう。今回は上司との付き合い方を考えていきたいと思います。まず、上司も人間ですから、いつでも完璧なわけではありません。間違うこともあります。ですが、間違った時に「それは違います」と指摘すると、関係がこじれて、スムーズに仕事が進まなくなることもあるので注意が必要です。ここで、実際に先輩がしてしまった失敗談をもとに、少し考えてみましょう。

上司に「先日お送りしたメールの件いかがでしょうか」と確認したところ「そんなメールはもらってない」と。「送りました!」と伝えると同時に、前に送ったメールを探して再送したら上司が不機嫌になってしまった。(商社、管理職40 代)

確かに送ったのに、「メールを受け取ってない」と言われたら、すぐに送ったメールを再送したくなる気持ち、よくわかります。ここで、上司の立場になって考えてみましょう。上司はそんな態度を見て、どう感じるでしょうか?

メールの確認を忘れていたのは、上司の責任です。でも、前に送ったメールを再送されたら、まるで揚げ足をとられたかのように感じても不思議ではありません。そもそも、上司には毎日山のような数のメールが送られてくるので、どうしても見過ごしてしまうメールが出てきます。それなのに「送りましたよ」とばかりに証拠を突きつけられても、上司が嫌な気持ちになるだけです。自分の正当性を主張したところで、何の得にもならないのです。

こういう時は、「お送りしてなかったでしょうか、いまから送ります」とメールを送り直せばいいのです。もしかしたら「ごめん。前に送ってもらっていたかもしれないね」と、上司が気づいてくれることもあるかもしれません。いずれにしても、メールの返事を確認する、という仕事の目的はスムーズに達成できるでしょう。仕事を進めるためには、その場で責任を追及して、わざわざ不機嫌な気持ちにさせる必要はないのです。

このように、「上司を立てる」ことも、仕事を進めるコツのひとつ。「上司を立てる」と言うと、「ゴマスリ?」と思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。上司に気持ちよく仕事をしてもらうということなのです。それに、上司を立てることによって、信頼関係が生まれやすくなります。仕事も一気にやりやすくなるのです。困った時は相談に乗ってくれるでしょうし、仕事を任せてくれるようにもなるでしょう。加えてあなたの評価も高まり、自分がやりたい仕事ができる可能性も高まります。相談しやすく、自分を認めてくれる上司がいるのはとても心強いことなのです。

「上司を立てなきゃ」と思うと少し面倒な気持ちになるかもしれません。急にやろうと思っても不自然になるだけです。まずは日常の一つひとつのやり取りを、意識してみてください。ポイントは、上司の気持ちを想像すること。上司に限ったことではなく、誰でも相手の気持ちを想像できる人は、自然と周りに応援されるようになりますよ。

上司が求める「ホウレンソウ」とは?

入社すると報告、連絡、相談、「ホウレンソウ」は社会人の基本だと言われます。ホウレンソウは上司と部下の信頼関係を築きあげる大事なものですが、どのレベルで伝えればよいのか、最初はわかりにくいかもしれません。ここで実際にあった失敗談をご紹介します。

トラブルが起こった時に、最初から相談すると「自分で考えなさい」と怒られ、伝えるタイミングを逃し事が大きくなると「早く言いなさい」と言われ、タイミングと解決案をあわせて報告することが必要だと実感しました。(広告代理店、40 代)

上司によっては「細かいことをいちいち言わなくていい」という人もいれば、「すべて報告するように」という人もいるでしょう。上司のタイプを見極めないといけないので、慣れないうちは少し面倒かもしれません。

ですが、絶対に忘れてはいけないホウレンソウもあります。上司に伝えるのが遅くなってしまったせいで、会社が損害を出してしまったなんてことも珍しくないからです。何を、どのタイミングで伝えればいいか、迷うこともあると思いますが、最初のうちは、マメにホウレンソウをすることをおすすめします。どれが大事なことで、どれが言わなくてよいことかを判断できないうちは、「気がついたことは、とりあえずすべて上司に伝えておく」といいでしょう。

あらたまって上司に話すというよりも、普段のコミュニケーションがとても大事です。雑談の中で「そういえば、こういうことがありました」と、取引先の状況を話しておけるとスムーズですね。気になったことがあったけれど、すぐには話せない時は、メールを送っておくといいでしょう。

なかなか話す時間がなければ、たまには上司をランチに誘うのもいいかもしれません。情報が共有できるので、「知らなかった」「聞いていない」ということがなくなります。それに、上司とのコミュニケーションは、ミス・トラブルを防ぐのにも役に立ちます。取引先のことを何も話さないでいると、上司は「問題はないんだな」と思うものです。

問題が勃発した時に急に状況を伝えても、経緯をつかむのに時間がかかって、すぐに対応できないかもしれません。内容によっては、「どうしてもっと前に相談してくれなかったのか?」と思うこともあるでしょう。いずれにしても、問題が起きてしまったら、上司に伝えても、解決のしようがないこともあります。ですが、早めに知っておいてもらうことで、問題が起こること自体を防げるかもしれないのです。

ホウレンソウというコミュニケーションを積み重ねていくと、信頼関係も生まれてきます。報告を受けることで、「きちんと仕事を進めている」とわかるからです。すると、少しずつ「あれはどうなっているの?」と聞かれなくなるでしょう。「安心して仕事を任せられる」と思ってもらえるようになるのです。上司から声をかけてもらうのを待つのではなく、こちらから声をかけるのがポイント。仕事がしやすい環境は、自分でつくっていきましょう。

仕事をしていると、どんなに気をつけていてもトラブルは起こります。聞き間違いや勘違い、納期に間に合わないなど、本当にさまざまなことがあります。トラブルは予期せぬ時に起こるものです。トラブルは起きないようにすることも大事ですが、なかなか防ぎきれないのが現実。一方で、起きてしまった時に「どう対応するか」で、結果は大きく変わります。以下の失敗例を見てみましょう。

トラブルが起きた時、上司に知られずに自分で何とかしようと隠してしまいました。ですが上司が出てこないとどうにもならなくなってしまい、取引先にも上司にも迷惑をかけてしまいました。(メーカー、管理職40 代)

「すぐに上司に報告する」のが正しい対処法ですが、中には、「トラブルがバレると怒られるから、上司にバレないように何とか自分で画策してみる」という方もいるかもしれません。そうしたくなる気持ちはわかりますが、自分で責任をとれないうちはまずは上司に報告することが大事。とは言え、上司は忙しいので、いつも座席にいるとは限りません。そういう時は、どうしたらいいでしょうか。

何としてでも上司に報告、が鉄則

先に結論を言うと、何とかして報告するようにします。もしかしたら、取引先の方からすぐに上司に連絡がいく可能性もあります。そうした時に、トラブルの内容が上司に伝わっていないと、「どうして知らないのか」と取引先をさらに怒らせてしまうかもしれません。

たとえ会議中であってもメモを渡す、外出中であれば携帯電話に連絡する、留守番電話になってしまったら概要を知らせて折り返しの連絡を依頼するなど、考えられるすべての方法を使って、上司に伝えるようにします。もちろん、周りの先輩や同僚にも伝えて、協力してもらいましょう。


一番よくないのは、悩んだまま放置してしまうこと。それでは解決できるものも、できなくなってしまいます。トラブル対応は、時間との勝負だと覚えておきましょう。そして、これは上司に報告をし相談したうえでのことですが、できればすぐに取引先に出向くことをおすすめします。

こういう時、中途半端な状況で取引先に出向くのは怖いので、「上司の都合を確認したうえで後日一緒に行く」「問題の解決策を持って行く」という判断をしがちです。でも、現実には「上司が出張で時間が合わない」「解決するのに時間がかかる」などの理由で時間だけがどんどん経過してしまうことも。そうすると、謝罪やトラブルの挽回のチャンスを逃して関係が壊れてしまい、取引自体がなくなってしまうこともあるのです。

相手が怒っているのならなおさら、まずは経過説明をしてお詫びをするのが先決です。たとえ解決に時間がかかる場合でも、謝罪の気持ちを伝えることならばできるはずです。本当に大事なのはあなたの熱意や誠意。それがなければ解決しません。

「怒られるのは嫌だ、怖い」と逃げ出したくなる気持ちはわかりますが、ひるまずに向き合っていくことが大事。トラブルを乗り越えると、取引先との関係が深まります。そして、そんなあなたの仕事ぶりを見て、上司からの信頼も高まるのです。