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弁護士資格がないのに、弁護士だと名乗って活動していた疑いで、会社役員の男性(71)が警視庁に逮捕されたと3月7日に報じられた。

TBSなどによると、逮捕された男性は2016年2月、健康食品販売会社の会長(61)に対し、弁護士資格がないのに弁護士と記載した名刺を手渡した疑いなどがある。男性は東京都内の法律事務所内のスペースで、パソコンと机を借りて活動していたといい、「着手金や報酬など400万から500万円をもらった」と話し、容疑を認めているという。

男性はもともと司法試験に合格しており、裁判所の判事を経て弁護士登録をし、弁護士として活動していた時期がある。ただ、自ら弁護士登録を取り消していたという。

弁護士資格がないにもかかわらず、弁護士と同様の法律事務を取り扱うことを「非弁活動」と呼び、弁護士法は禁じている。「非弁」について正木健司弁護士に聞いた。

●非弁活動は弁護士法で禁止

ーー「非弁」とはどのようなものでしょうか

「弁護士または弁護士法人ではない者が、報酬を得る目的で、一般の法律事件に関する法律事務を取り扱ったり、周旋(仲介)したりする行為のことです。弁護士法72条により禁止されています(非弁活動の禁止)。

たとえば、法律上の特別の定めがないのに、報酬を得る目的で、交通事故の示談交渉や、アパートの立ち退き交渉を反復継続して行うことなどです。ただし、保険会社は一定の場合、交通事故の示談交渉ができます」

ーー今回のケースでは、法律事務所に出入りし活動していたようですが、事務所側の責任は問われますか

「弁護士法27条は、弁護士が非弁活動をする者から事件の周旋を受けたり、彼らに自己の名義を利用させたりすることを禁止しています。報道からだけでは、このあたりの要素がわかりませんが、仮に事務所の名義を使わせていたとしたら27条違反になると思います」

ーーもともと弁護士だったのに、自ら登録を消してまで非弁活動をしたというのはあまり聞いたことがありません

「その意味でかなり特殊なケースかもしれません。高齢の元裁判官で、しかも退官後は弁護士登録をしていたとのことであり、あえて弁護士登録を抹消した後に今回活動していたとのことですから、動機として、弁護士会費の負担を免れようとしたのではないかとも思われます」

●非弁を放置すれば、法律秩序を害する

ーーそもそも、なぜ非弁活動が禁止されているのでしょうか

「資格を持たず、何らかの規律にも服しない者が、自己の利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とする行為を放置すれば、当事者や関係者などの利益を損ねかねません。また、法律生活の公正かつ円滑な営みを妨げ、ひいては法律秩序を害することになります。そのために、こうした行為を禁止する必要があるのです」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
正木 健司(まさき・けんじ)弁護士
先物取引、証券取引、デリバティブ取引などの投資被害事件、金融商品取引訴訟を多数取り扱う。名古屋先物証券問題研究会事務局長。先物取引被害全国研究会幹事。全国証券問題研究会幹事。愛知大学法科大学院非常勤講師(消費者法)。愛知県弁護士会消費者委員会投資被害対策チーム長。K&A投資被害弁護団事務局長。
事務所名:弁護士法人名城法律事務所
事務所URL:http://www.meijo-law.jp/