ターナー社(Turner)のブリーチャー・レポート(Bleacher Report)は「ゲーム・オブ・ゾーンズ(Game of Zones)」という人気のアニメシリーズコンテンツを抱えている。人気のテレビシリーズである「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」風の世界観で、NBAのスターたちをアニメキャラクターとして描いたものだ。直近のシーズンではなんと各種プラットフォーム上において、合計で4000万回の動画再生回数を稼いだ。AT&Tという大きな広告スポンサーもついた。そんななか、ブリーチャー・レポートはゲーム・オブ・ゾーンズや彼らが有する異なるブランドを利用したマネタイズ方法がほかにもないか探っている。

ブリーチャー・レポートの最高収益責任者かつ、最高マーケティング責任者であるハワード・ミットマン氏によると、彼らはコマースとコンテンツ・ライセンシング専用のチームのために人材を雇っている最中であるという。すでにコマースビジネスのトップとしてエグゼクティブを採用したとのことだ。

「我々の競合他社のなかにはベンチャーキャピタルによってサポートされているものがいるが、彼らが持ち得ないチャンスを持てることが、ターナー社によって所有されていることの素晴らしいメリットのひとつだ。そのため、我々は規模縮小するどころか成長している。新規採用の人材は、eコマースとライセンシングのために作った秘密の独立チームに起用されている」と、ミットマン氏は言う。

コマースへの参入



「ゲーム・オブ・ゾーンズ」に加えて、ブリーチャー・レポートはNFL版のアニメシリーズである「グリディロンハイツ(Gridiron Heights)」を持っている。またFacebook Watch(ウォッチ)のために開発した、NFLのマーション・リンチ選手を主役にしたドキュメンタリー・シリーズ「ノースクリプト(No Script)」もある。彼らの「ハウス・オブ・ハイライツ(House of Highlights)」のインスタグラム(Instagram)アカウントは、NBAのスターであるレブロン・ジェームズ選手や人気ラッパーのドレークからもフォローされる大ヒットコンテンツとなっている。2018年にはさらにメディアブランドを増やす予定だという。こういったブランド群のなかに、人々が買いたいと思うようなマーチャンダイズやプロダクトの可能性を見出しているわけだ。

NBAのカルメロ・アンソニー選手がフードをかぶって練習しているインターネット上のミーム(ネタ画像)がある。ブリーチャー・レポートは昨年、このカルメロのミームを題材にしたファッションブランドを作り、小規模な実験を行った。1着60ドル(約6400円)で売られたフード付きトレーナーは、数時間のうちに売り切れたと、ミットマン氏は語る。アメリカでは2月が「ブラック・ヒストリー・マンス(黒人歴史月間)」として黒人の歴史を称える時期になっているが、ブリーチャー・レポートは昨年、アーティストを雇い、このブラック・ヒストリー・マンスを記念したNBAチームのロゴをデザインして発表した。デザインには、ベッド・スタイ・ロッカーズやシカゴ・ディフェンダーズなどがフィーチャーされた。このロゴがアパレルやほかのプロダクトにも使われることは想像できると、ミットマン氏は語った。

「これは我々がターナー社との関係で持っている素晴らしいアドバンテージだ。ケーブルテレビネットワークであるアダルトスイム(Adult Swim)が、人気アニメシリーズ『フリック・アンド・モーティ(Rick & Morty)』で行ったことと同じだ。番組がとにかく好きで、番組に対する思い入れをあらゆる形で表明したいと思っている視聴者層が確実に存在している。Facebook上でたまたま見つけたブランドのファッションプロダクトを思いつきで買おうとする人はいない。こういったことが我々のフォーカスとなっている」と、ブリーチャー・レポートのプレジデントであるローリー・ブラウン氏は語る。

番組のライセンシング



Facebook Watchといったほかの配信プラットフォームや、ブリーチャー・レポート自身のプラットフォームのための映像コンテンツを作るためのB/Rエンターテイメント部門を、同社は2年前に設立した。部門のトップはニール・パンサラン氏だ。現時点でチームは、「ゲーム・オブ・ゾーンズ」「グリディロンハイツ」、そして「ノースクリプト」といったコンテンツにフォーカスを置いている。「ノースクリプト」はFacebookに「何百万ドル(何億円)」という金額でライセンス契約をしていると言われている。2018年は、上記3つを含む5つのエンターテイメントプロジェクトが目玉となると、ブラウン氏は言った。

ブラウン氏は次のように言う。「ライセンスビジネスを行うこと、また映像コンテンツ制作にさらに深く飛び込んでいくこと。この2点については賢く判断していかなくてはならない。この分野では成功を収めることができる。実際、多くのエンターテイメント企業が長年にわたり成功を収めてきた。しかし、いま我々が行っているのは、歴史の浅いメディア企業が伝統的なハリウッドブランドと競争するということだ。そのため、我々は慎重になろうとしている」。

Facebookは先日、ニュースフィードにおけるメディア企業によるコンテンツの優先度を下げると発表した。それ以降パブリッシャーたちにとって、収益を多様化させること、そしてプラットフォームへの依存度を下げることの重要性が急上昇している。ブリーチャー・レポートがeコマースとコンテンツライセンシング分野への進出を決定したのは、Facebookの発表よりも前のことだ。しかし、「デジタルメディア企業たちは収益モデルを多様化させなければいけない」という自覚のもとでの判断なのは確かだ。

ブラウン氏によると、2017年にブリーチャー・レポートは前年比で20%の収益成長を見せたという。具体的な数字は開かされなかったが、同社は黒字だったとのことだ。広報担当者によると、(クライアントのための)ブランデッド動画やスポンサーシップなどを含む、ソーシャルメディア上の広告売上は直接収益のうち3分の1を占めたという。

パブリッシャーの多くはFacebookのアルゴリズムが変更されたことで、そこにおける広告収益に大きな減少が見られるのではないかと心配している。しかし、ブリーチャー・レポートのエグゼクティブたちは、Facebookの依存度が高いパブリッシャーと比べると、それほど心配していないという。ミットマン氏によると、ブリーチャー・レポートにとってFacebookは、トラフィックの12%にしか過ぎないという。そのうえで、Facebookのアルゴリズムがユーザがコメントやシェアをするような投稿を優先的に表示するとしても、ブリーチャー・レポートのコンテンツはすでに高いエンゲージメントを示しており、新しいアルゴリズムは優位に働くだろう。コメントやシェアといった「インタラクション数」は12月で1億2000万を記録している。これはESPNの5500万、BuzzFeedの3500万と比べても、かなり大きい(数字はFacebook所有のソーシャル測定企業クラウドタングル[CrowdTangle]によるもの)。

ミットマン氏は、さらに次のように言う。「現時点で人々が多く消費しているものの、新しいアルゴリズムのもとでリスクに晒されているものは『ベーシックフィード(basic feed)』と呼ばれているものだ。これらはフィード上で見られてはいるものの、わざわざユーザーが探したりはしない。エンゲージメントが低く、シェアされる傾向も低い。ただスペースを埋めているだけだ。自分たちが作るコンテンツが人々のあいだで深い反響を生むこと、これに我々は集中している。それが絶対に必要だと考えているのだ」。

アプリに対する投資



ターナー社がブリーチャー・レポートに1億ドル(約100億円)の投資をするようになって3年目に入った。オーディエンスを拡大すること、またブリーチャー・レポートのアプリからの収益を伸ばすことはこの3年間、ずっと同社にとっての目標となってきた。アプリの月間アクティブユーザー数は現在950万人にものぼる。アプリは同社の収益の3分の1を占めていると、ミットマン氏は言う。

ターナー社は今春スポーツ関連のストリーミングサービスをローンチする予定だ。これはブリーチャー・レポートにとっても大きな変化をもたらすだろう。計画では、ブリーチャー・レポートはこのサービスの玄関口として機能する。サイトとアプリからストリーミングサービスとつながるようになる。このストリーミングサービスの名称はまだ決まっていないが、ターナー社内ではブリーチャー・レポートがブランディングの一部としてフィーチャーされるだろうと推測されている。

ハウス・オブ・ハイライツがインスタグラムで大きく成功したことを受けて、ブリーチャー・レポートはまた、そのアカウント専用の独立した収益目標を設定しメディアビジネスを構築しようとしている。この取り組みを率いているのはブリーチャー・レポートのソーシャル部門バイスプレジデントであるダグ・バーンスタイン氏とハウス・オブ・ハイライツのクリエーターであるオマール・ラージャ氏だ。それを最高経営責任者のデイブ・フィノキオ氏、最高執行責任者のアレックス・バルガス氏、前述のブラウン氏、ミットマン氏といった役員が監督している。加えて、ハウス・オブ・ハイライツを増強するために新規採用の人材も加えてチーム編成しているところだ。

ブラウン氏は言う。「多様化し、(ビジネスが)守られていることを確実にする必要がある。ブリーチャー・レポートのブランド成長を維持することが重要だ。ハウス・オブ・ハイライツというビジネスのなかに新しいビジネスを構築すること、ほかのそれぞれのブランドの成長を見ながら投資を行うことが重要となるだろう。我々のアプリはスポーツファンにとってのホームベースとなるポテンシャルを持っている。そこでユーザたちがよりアクティブになり、お互いと交流をすること、それがまた我々にとっての優先事項となるだろう」。

Sahil Patel(原文 / 訳:塚本 紺)