使わなくなった押し入れなどを貸して小遣い稼ぎができる?(写真:miura/PIXTA)

2017年に政府が「働き方改革」の1つとして副業・兼業の普及促進を打ち出したことから、副業に目が向き始めた昨今。といっても投資、時間が必要な事業にはなかなか踏み切れないのが現実だろう。だとしたら、あるものをちょっと貸すことで副業とまではいかないものの、小遣い稼ぎをしてみるという手はどうだろう。費用や時間をかけずにでき、経験値を重ねることで稼げる副業につなげられる可能性もある。

「シェアリングエコノミー」という言葉を聞いたことがある人は少なくないだろう。個人が所有するモノや場所などをほかの人と共同利用することで生まれる新たな経済を意味し、よく知られているものとしては民泊のAirbnb(エアビーアンドビー)がある。わが家などを使っていない間他人に使ってもらうことで、不動産を有効活用し、利用する人には一般的な旅とは一味違う、暮らす体験をしてもらおうというものだ。

一棟丸ごとから自宅の階段下まで

初期には法的にグレーだと言われはしたものの、比較的気軽に始められ、かなり稼いだ人もいたAirbnbだが、ご存じのように現在では適法でなければ営業はできない。副業として簡単にできるとまでは言えなくなっているのである。

一方、ここ2〜3年でAirbnbほどには稼げないとしても手軽に始められるシェアビジネスが増えている。市場規模も拡大しており、矢野経済研究所によると2014年度の国内シェアリングエコノミー市場規模(サービス提供事業者の売上高ベース)は、前年度比134.7%の232億7600万円に上る。2015年設立のシェアリングエコノミー協会にはスタートしたばかりのベンチャー企業から流通、IT、建設などの一部上場企業までの210社超が参加しており、注目度と勢いがうかがえるというものである。

実際にシェアするものは主に5種類――場所、乗り物、モノ、人・スキル、おカネ――である。そこで、今回はこのうち、場所にスポットをあてて、面白い「ちょい貸し」ビジネスをいくつか紹介したい。

「軒先」は、場所の所有者と借りたい人のマッチングサービスを提供している。扱っているのは、ビルや住宅丸ごと一棟あるいは一室から、自宅ガレージ、階段下のデッドスペース、屋上から軒先、駐車場と「場所」であれば何でもござれだ。期間も自由で、たとえば、利用者は解体予定の建物を貸すこともできる。

こうした「ちょっとした場所」にニーズがあるのか、と疑問に思うかもしれない。が、最近はそれこそちょっとした小商いを始めたいというニーズが高まっている。たとえば、普通にカフェを開業する場合、1000万円超という費用がかかるうえ、廃業率が高くリスキー。また、不動産を借りて出店した場合、立地に難があっても簡単に移動できない。こうした中、キッチンカーを利用して飲食店を「開業」する20〜30代が増えているのである。

このほかにも、マッサージやネイルなどのサロンや各種教室を開きたいというニーズもある。介護や子育て中で、フルタイムでは働けず、自宅も使えないが、それでも週に何回かは働けるという人にとっては、サロンや教室開催は自分のスケジュールで働ける方法の1つだ。

ただ、いずれの場合も問題は場所。軽自動車1台分くらいの場所ならあちこちで空いているのに、不動産会社は扱っていないし、1日、数時間など短期で貸すこともしない。こうした人たちに利用されているのが軒先など「ちょいスペース貸し」なのである。

嵐のコンサートがある日は1日1万〜2万円にも

軒先によると、最近はポップアップストア用途が中心になっているため、駅前や商店街内など人通りが多く、視認性の高い場所のニーズが高いという。だが、比較的駅に近い住宅地や公園その他公共施設の近くであれば、自宅の一部を貸すことも十分可能だ。

軒先では駐車場に特化したサービスも展開している。観光、イベントなどで一定の期間に多くの人出が見込まれる場合、周辺では駐車場不足が発生しがち。近年、アイドルのコンサートに伴った騒動が報道されているが、そうした地域を予測、周辺の一般家庭などの駐車場を利用できるようにする仕組みを展開しているのである。

シェアリングビジネスの多くはニーズに合わせて自分で料金を設定できるが、一定期間のニーズを対象にした場合にはその幅が大きいのが面白いところ。「駐車料金が月額5000円の地域で嵐のコンサートがある日だけは1日1万円、2万円になったり、東京ドーム近くで月に7万〜8万円稼ぐオーナーがいるなど、場所によっては意外な収入になることがあります」と、軒先代表取締役の西浦明子氏は話す。首都圏以外でもイベント会場近くであれば、小遣い以上に稼げることもあるわけだ。

自宅のみならず、実家の使っていない駐車場を貸すという手もある。住宅街では本当にお小遣い程度の収入というが、副次的な効果がある。高齢者の意識が変わるというのだ。

「実家の両親に勧め、駐車場を貸していますが、数千円でも収入になり、かつ自分で価格を変動させられるのが面白いらしく、日々予約を楽しみにしています。最初は一部でも自宅を貸すことに抵抗がありましたが、その意識も薄れてきているようです」(西浦氏)

空き家増の要因のひとつに、わが家を他人に貸すことへの抵抗がある。だが、駐車場や空いた一室を短期的に貸すなど抵抗の少ないところから始めることで、その意識を変えられるとすれば、実家を空き家にしないための一歩として利用するのも悪い話ではない。

会議室がない会社は少なくない

球場やお寺、映画館など従来にない場所を扱うことで話題になった「スペースマーケット」など、軒先登場以来、場を貸すビジネスは多種登場しているが、ビジネスパーソンであれば本業で借りるのはもちろん、貸す場合にも役立ちそうなのが会議室に特化した「スペイシー」だ。

貸し会議室自体は以前からある。代表的なのは、2005年の創業から右肩上がりで売り上げを伸ばしており、2017年3月に東証マザーズに上場した「ティーケーピー」だろう。

一方、スペイシーが手がけているのは大手貸し会議室運営会社とは異なる、日常使いの小規模な個室。広いオフィスを借りている時に人員を削減し空間を無駄にしたり、コンパクトなオフィスに移転後打ち合わせスペースがないという経験から、同社を2013年に創業した内田圭祐氏は、「起業したての会社は会議室がないことが多く、全体で見ても2割くらいの会社でスペースが足りていない。そこにニーズがあると判断した」と語る。

実際、利用の約8割はビジネスで、商談、面接、研修や電話会議、作業スペースとして使われている。残り1割は英会話、ヨガなどの個人レッスン、そして残りが個人の集まりに利用されているという。春先には採用、研修が多く、特に利用が増える。


喫茶店を使う程度の料金で周囲を気にせずに済む個室を使えるのはメリット。打ち合わせなどに集中できる(写真:スペイシー)

現在掲載されている3300物件の9割5分が首都圏に集中。ターミナル駅やオフィス街など駅に近い物件を所有している人なら使っていない時間に貸してもいいかもしれない。ほかの貸し会議室に比べ、1時間1000円程度と安価な料金設定が多いものの、それでも1日5時間、平日20日間稼働すれば10万円になる。住宅として貸すより高収益と、わざわざ、ワンルームマンションを借り、転貸の許諾を得て貸している人もおり、新手の比較的安価に始められる不動産投資の一種としても考えられる。

筆者が個人的に可能性を感じているのは個人間でモノを預かる物置シェア、「モノオク」だ。押し入れ半間、段ボール1箱分など極小のスペースでも貸せ、ほかの場所をシェアするビジネスに比べ、立地に左右されないのが大きなポイントだ。


阿部氏が個人的に空いているスペースにモノを置かせて欲しいと頼まれたことから生まれた。ほんのわずかなスペースでもモノさえ置ければ成り立つ(写真:モノオク)

会議室や店舗などの場合、利用状況は駅前、商店街、オフィス街など人通りの多さ、足回りの利便性などに左右される。しかし、いつもは使わない品を預ける先として考えた場合には、自宅に近い住宅街のほうが便利である。家自体が広く、モノを置くスペースがふんだんにある地域では難しいだろうが、都市近郊であれば、どこでも成り立つ可能性がある。実家の空いている一室、空き家利用も十分にありうるわけだ。

ただ、都心部以外での現在の利用料金は1畳月額数千円程度で、本当に小遣い程度。その分、トランクルームに対しての競争力はあり、トランクルームが成り立っている地域であればかなりのニーズがあるのではないだろうか。

乗らなくなった車をシェア

最後に1つ、場所ではないが、個人間の車のシェアを紹介したい。これも各種出ているが、ごく普通の国産車オーナーであれば「シェアのり」がオススメだ。「小さな子どもがいるからと購入したものの、乗らなくなって車庫に入れたままという方がシェアする例が目立ちます。利用者は家族のいない若い人が中心。レンタカーより、半額から8掛けくらいで利用できます」とシェアのり代表の田平誠人氏。使わないクルマでお父さんの小遣いを稼ぐという感じだ。

ところで、活用とは別に面白いのは個人間カーシェアと自動車会社の協働である。カーシェアが進むとクルマを買う人が減る。自動車会社としては面白くないのではと思いきや、彼らはその先を睨んでいる。

自動運転が可能になれば、クルマは人の移動はもちろん、物流、サービスのインフラになりうる。移動に関しては新しい公共交通が生まれると言ってもいい。それを誰が所有するか。これまでの公共交通は法人が所有していたが、クルマでいいなら個人でも所有が可能になる。車保有、シェアが投資として儲かる可能性が出てくるわけだ。

実際にはあと何年かかるか分からないが、クルマ以外にも今後の社会の変化にはシェアリングエコノミーの考え方が影響することは間違いない。収入源を1カ所に依存することの危険性も今後高まる可能性もある。その意味からも、シェアビジネスにかかわってみることは必ず、お小遣い以上の経験になるはずである。