「MEDUCATE」の講師陣

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「パラレルワーク」という言葉を知っているだろうか。複数の仕事を持ち、複数の収入源を持つことを指し、パラレルワークによってより安定し自由な生き方を選ぶ人をパラレルワーカーと呼ぶ。これからの時代の働き方の主流となるだろうといわれている。これを単に「副業のことだろう」とする見解は間違いである。

 パラレルワーカーは、複数の仕事において、それぞれプロフェッショナルとして働き、必要とされる人である。終身雇用も年功序列も、もはや幻想と化すような社会となった今、パラレルワークは、これから重要度が増していくことだろう。

 今回は、医師という安定した職に就きながら、さらにパラレルワーカーとして貪欲に働く細井龍氏に話を聞いた。

●医師、家庭教師派遣運営、投資、タレント

 細井氏は、形成外科医・美容外科医として手術に勤しむかたわら、ハイクラス家庭教師派遣「MEDUCATE」を運営する。医師としても、特定機能病院で最新医療を研鑽しながら患者を救うほか、美容外科医として全国の美容外科を飛び回り患者のために手術に勤しんでいる。医師になった以上、人を救いたいという願いが根底にある。しかし、医療への葛藤もあるという。

「基本的に医療というのは、病気というマイナス状態から健康というプラスマイナス0に戻す仕事。できることならプラスとなる手助けがしたいと考えているのですが、医師としてできることは限界があります。」

 そういった思いを抱える一方で、大学生時代から続けた家庭教師に可能性を感じたという。

「教育は、0から無限大をつくる仕事です。美容医療にも通じますが、私は自分が関わった人の『今の人生』をさらに魅力ある人生にする一翼を担うことができればと思っています」

 そういった思いから始めたMEDUCATEは、大手進学塾を凌ぐ勢いで実績を上げている。現役医師が教育業界に参入することは珍しい。MEDUCATEの教育システムは、医学的な見地に基づいた独自の方法で、ほかの塾が提供する教育とは異なっているという。講師陣には、超難関国立医学部生を揃え、各講師の実際の医学部受験の経験を生かした、他社にない指導を行っている。

「特に将来の夢や目標が定まっていないという人には、ぜひ医学部を勧めたいです。医学部に合格することは決して難しくありません。正しい方法で効率よく勉強すれば合格は可能です。他塾では教えていない“教育の本質”を正しく伝えつつ、成績を上げるために必要なのは単純な学習だけではないということを指導しています。実際に、3年かかりましたが、偏差値35から医学部へ合格した生徒もいます」

 現在、超難関医学部に在籍する300人の講師が、小学生から高校生、浪人生まで幅広い生徒を指導している。今年のMEDUCATEの医学部進学率は76パーセントという実績を出している。多くの生徒から『先生と会って人生が変わりました』と言われた時の感動はなににも変えられないという。

 まさに家庭教師としてもプロといえる細井氏だが、その才能は投資やメディア出演でも発揮され、活躍の場を広げている。

●医師になることだけを目標とせずに医学部へ

 細井氏の思考は実に興味深い。渋谷幕張高校から千葉大学医学部に入学した。医師になることだけを目標としていなかった細井氏は、入学後は社会勉強のために水商売も経験しながら、かけもちして塾講師のアルバイトを始めた。物事を冷静に捉え、考察し、より効率的にするように思考する細井氏は、集団授業、個別指導、家庭教師を経験するなかで、独自の勉強法、計画管理、意識改革のメソッドを確立した。その細井氏流のメソッドは成果を上げ、医学部合格を量産するという周囲も驚く成果を上げた。そして、学生ながら大手個人指導塾でプロ講師として指導を請け負うようになったが、医師となった後は、教えられる人数が限られてしまうこと、現行の塾業界が生徒にとって費用対効果が低いことなどに限界を感じ、状況を是正するためにMEDUCATEを設立し現在に至る。

 細井氏は、医師になる前から感じていた「医師というのは甘えた仕事だ」という気持ちが、医師になった後はもっと強くなったと話す。

「保険医療は7割を国が負担してくれる。世の中に、そんな甘いレールを敷かれたビジネスはありません。自分に医師免許が無くても、誰よりも優秀なビジネスパーソンになれるかどうか。それが自分に課しているタスクなんです。ほとんどの医師が、医師であることにあぐらをかいていると私は感じます。医師は、ある程度裕福な家庭で育ち、周囲も優秀な人間の中で生きて来た人が多い。

 しかし、仮に医師免許がなければ、競争社会の中で社会の藻屑となってしまうような医師はどれくらいいるだろうかと考えると、怖い気さえします。私は、そうは絶対になりたくない。まずはひとつでもふたつでも、しっかりとした社会的に認められるビジネスの実績をつくること。それで初めて言葉に重みが生まれ、人の人生を変えられる存在になると思っています。私は、生きるからには多くの人に影響を与えられる人間になりたいと考えています」

 話を聞くと、細井氏はパラレルワーカーとして私利私欲で動いていないということがよくわかる。細井氏のように自分の能力を社会に還元したいという思いから仕事に向き合っているとするなら、そんな人たちが次の社会の主軸となるのかもしれない。
(文=道明寺美清/ライター)